敷地選定について
購入中古住宅の建替について
基本計画について
外部スペースについて
建物と道路との関係について
外観について
駐車・駐輪スペースについて
玄関アプローチについて
玄関ポーチについて
玄関について
玄関物置について
玄関ホールについて
便所について
居間について
食堂について
食堂・台所について
子供部屋について
寝室について
クローゼットについて
浴室について
洗面脱衣室について
洗濯室について
洗濯物千場について
縁側について
布団千場について
西陽対策・通風について
雨戸について
春から秋にかけての海風陸風について
発注(見積依頼)について
見積金額について
施工時期について
床下エアコンについて
太陽光発電について
▼ 敷地選定について ▼
これから敷地を求めるのであれば、いくつか注意しなければいけないことがあります。決められた敷地内で建物をどのように計画していくのかは、設計者の能力が問われます。有能な設計者であれば周辺環境を読み解き、隣地及び道路との位置関係によりそれぞれの場所にふさわしいスペースを配置し、また陽当たり・通風等の自然環境も含めて快適な生活環境を提案してくれるでしょう。有能な設計者かどうかは、実際建てられた住宅で生活体験をさせていただき、住宅の建築主に話を聞けばわかります。
敷地購入前に確認しなければいけないことがあります。それは都市計画法で定められた用途地域、建築基準法による建物制限、取合う道路、下水道の有無、境界を接する隣地状況(建物内容・隣人のお人柄)、近隣の商店・病院・学校・公共交通機関、そして地盤です。一般の方でも調査することは可能だと思いますが、できれば敷地選定の段階で専門家のアドバイスが受けられるのであればそのメリットは大きいと思います。
上記の各種要件以外にも家族の生活を考えた時にどの程度の床面積が必要なのか、また建物とは別に外部空間としてアプローチ、駐車場、駐輪場、サービスヤード、植栽の庭等、どの程度敷地面積があれば良いのかを知っておくことは、求める敷地より明確に提示できることになります。
▼ 購入中古住宅の建替について ▼
今まで、建築主が中古住宅を購入し、既存建物を解体して新たに建てるケースが数件ありました。ほとんどの場合は、施工者にお願いする業務の中に既存建物の解体撤去処分を含めています。
現在(2018年)施工が進んでいる現場では、建築主の方が中古住宅付きの土地を不動産屋さんを通して購入され、不動産屋さんから解体業者を紹介され、既存建物を解体した後に私の事務所に設計依頼の話がありました。
私がはじめて敷地を見に行った時に、地表面にコンクリートガラ、FRP等の廃材が目につきました。建築主の方に、解体をお願いした業者にきちんと処理するように伝えてください。また地中に本来解体撤去しなければならない建築廃材が残っている可能性がありますとお話しました。
その後、残材は片付けられましたとお聞きしましたが、工事が始まり基礎施工のために40cmほど掘ったところ、地中からコンクリートガラ・排水パイプ・そして浄化槽の一部と思われるFRPの破片などがでてきました。建築主からの再度の依頼にもかかわらず、解体業者は表面に残っていた残材だけを処理したようです。
既存住宅の建替えの場合、その解体工事も含めて私の方で監理するようにしています。監理の目的として解体作業を通して地中に廃材などが残っていないかを確認します。
もう一つ、解体に設計者が関わるメリットがあります。それは解体費用を新築工事見積の中に組み込んで、数社から見積りを提出していただきます。結果、適正な費用負担で済んでしまうということです。
事例として宮崎市内で取組んだ中古住宅の解体費用について2件を紹介します。
【 2012年 木造平屋 解体(床面積90.28㎡ 27.3坪)税別 】
A社 702,000円
B社 835,000円
C社 780,000円
D社 800,000円
E社 700,000円
F社 700,000円
G社 538,700円
【 2017年 木造平屋 解体(床面積107.39㎡ 32.4坪)税別 】
A社 790,535円
B社 920,000円
C社 1,080,000円
D社 1,222,000円
E社 721,700円
F社 721,700円
上記の例の通り、見積業者により金額は違います。どの金額が正解ということはありません。前提として見積りをお願いしている建設会社(又は工務店)は、いずれも今までに私の事務所で実績のあるところですので、安い金額だからいい加減な仕事をするところではありません。同じ仕事でもこれだけの差があります。
▼ 基本計画について ▼
以前取組んだ住宅で古い家(解体)で使っていた欄間を新居のどこかに使って欲しいとだけ要望された建築主がいます。なくなったご主人は大工さんでした。他に要望らしき物は何もありませんでした。ただし基本計画の段階で、私がそれまでに取組んだ住宅を数件見ていただき、打合せではたくさんのことをお聞きし、その中でどのような生活空間が望ましいのかを提案していきました。結果完成した家にたいへん満足していただきました。要望のあった欄間は台所流し正面の対面カウンター上に取付け日常的に目に入るようにしました。
また家づくりに関する様々なことを調べてから打ち合わせに臨まれる方もいらっしゃいます。各種仕上材、隠れてしまう断熱材、省エネルギーに関する各種施工方法について、ネット等で詳しく調べ疑問点をだされる方もいらっしゃいます。我家のことですから熱心に取組まれることも当然だと思います。モデル住宅をベースとした規格住宅を作られるわけではなく、自分たち家族のこれからの生活を十分に楽しめる住宅とするためですので、設計者として、今までの経験、そして過去の情報そして新たな取組みを参考にしながら建築主家族のための住まいを提案していきます。
多くの建築主の方はたくさんの要望を持っています。ただし予算には限度があります。基本計画の段階では、各種要望を整理し順番を付けていくことになります。本当に必要なものなのか、実際はさほど必要でないものか、また将来予算が準備できた時に取組めるものなのか打ち合わせ時に確認します。
▼ 外部スペースについて ▼
基本計画の時に、敷地全体をどのようにゾーンニングすれば良いのか。敷地にある程度のゆとりがある場合は、建物以外を5つのゾーンで考えます。道路から玄関までのアプローチゾーン、駐車・駐輪場ゾーン、遊べる庭ゾーン、眺める庭ゾーン、そして外部物置等のサービスヤードのゾーンです。これらは敷地の広さ、接する道路との関係によりいくつかのゾーンをまとめて計画することもあります。
▼ 建物と道路との関係について ▼
一般論ではありませんが、経験上、敷地は東・南・西に接道してることが望ましいと考えます。
▼ 外観について ▼
▼ 駐車・駐輪スペースについて ▼
地方都市では一家に3台のスペースを準備することが多くなりました。家族用として2台、来客用に1台と計3台のスペースが必要となることがあります。また雨期の長い宮崎で考慮したいことの一つに、車の乗降時に雨に濡れずに建物と行き来ができるようにすることです。また駐車スペースには近接して洗車用の水栓を準備しておくことも必要です。
自転車置き場もしっかりと計画しておく必要があります。可能であれば玄関ポーチ近くに道路やアプローチから見えにくく、雨に濡れずに防犯上も安心しておける場所が確保できればと思います。
▼ 玄関アプローチについて ▼
道路から玄関までのアプローチの演出はその家の雰囲気づくりに大切なことです。舗装、植栽、門扉の必要性の検討、車の乗降り等検討したい項目がたくさんあります。朝のお出かけ時、そして特に夕方の帰宅時に温かい我が家を感じながら玄関までアプローチできればと思います。
▼ 玄関ポーチについて ▼
玄関外には雨の時に濡れずに傘をさすことができるスペースが欲しい、できれば玄関扉の鍵の開け閉め時に手荷物が置ける場所があればと思います。物の置ける場所をベンチと兼用で作ることもあります。子供が小さければ友達とのおしゃべりの場所となることもあります。玄関扉は可能であれば引き戸とし玄関の場所によっては網戸との組合せも考えられます。
▼ 玄関について ▼
冬場のことを考慮し、玄関を風除室とする工夫ができればと考えます。一段上がった玄関ホールとの間に建具を設置することがあります。建具はできれば通常は表に出さず壁内に引込み、必要に応じて引き出す仕様とします。玄関には下足入れを設け天板を飾り棚とすることがあります。
▼ 玄関物置について ▼
玄関から直接下足のまま使える物置を提案しています。床上に持込みにくい物は結構あります。石油ストーブを使っている家では灯油を入れるポリタンク、長靴、傘、アウトドアー用品(バーベキューセット・テント・マット・釣り道具・等)、スポーツ用品(バット・サッカーボール・スケートボード・ゴルフバック・等)家族の楽しみはそれぞれです。楽しみに合わせて収納方法を考えます。
▼ 玄関ホールについて ▼
家をでる時に全身を鏡に映してから出かけるように玄関又は玄関ホールに大きな鏡を付けることを提案しています。真壁納まりで内法高さが2mの場合には0.79m×1.94mの大きさとなります。また鏡を設置することで部屋自体に広がりを感じることになります。
郵便及び新聞をどこで受け取るのか、毎日のことですからなるべく利便性を考慮します。玄関とホールにまたがるように下足入れを設置する場合は、内部の棚板の一部を郵便・新聞受け専用棚とすることが良くあります。できれば玄関床に下りずに取り出すことが良いと考えます。
▼ 便所について ▼
便器を家の中に複数個設置することが多くなりました。4人家族でも朝の排便時間は同じとなりがちです。2カ所設置する場合は1カ所を来客者への対応も兼ねて玄関近く、またはお客さんをむかえる部屋近くに設置します。2つめは腰掛便器を洗面脱衣室内に露出で設置することを提案しています。ただし排便に対する考え方は人それぞれですので、すべての家でそうしているわけではありません。
洗面脱衣室内設置は小さいお子さんのいる家族、そして介護が必要となった人のいる家族ではたいへん重宝されます。排便スペース内の仕上には臭いの吸着効果のあるシラスの壁を提案しています。特に小便器設置の場合はアンモニア臭が強くなりがちですので有効な仕上と考えています。またシラス壁は予算がある場合は室内全体で使用することが多々あります。
▼ 食堂について ▼
日常の食事場所は台所との関係により決めることになります。食堂に作り付けのカウンター又はテーブルを設置することが多くなりました。そしてその廻りにはカウンター収納を設け、食器類だけではなく、家庭内の様々な物を収納できるようにしています。
カウンターやテーブルが食事の場所だけではなく、子供のお絵描きや宿題の場所だったり、家計簿をつけたり、家によっては広いテーブルで食後仕事の場所であったりします。そのために周囲の近くに各種備品(筆記用用具・常備薬・等)、各種ファイル、電話,ファックス、そしてネット環境に対応できるアウトレット、プリンターまで設置することもあります。建築主の奥様で仕事を持たれている方が多いため、食堂テーブル及びその周辺の充実は必要項目となっています。
▼ 食堂・台所について ▼
食事の準備そして後片付けをどのようにするのか、家族によって違っています。住宅設計に取組みはじめた30年ほど前、建築主の奥様より言われたことが私のその後の家づくりに大きな影響を与えました。当時その建築主家族は平家の貸家に住んでいました。台所と食堂は同じ部屋でキッチン流しは北側の壁にある一般的な作りとなっており、部屋中央に食事用テーブルが置いてありました。
その南側には6畳の和室があり、そこには座卓があり家族全員での食事はその座卓で行われていました。奥様から言われたことは「柴さん壁側の流しに向かって作業するので、うしろの部屋で家族が座卓を囲みお話していても背中越しでは家族の話に加わりにくく、いつも小さなラジオを流し前に置き聞いています」ということです。
キッチン前にたつ時間は家族の団欒の時間と重なることが多いと思います。その家では流し前に立ちながら家族と話ができ、食事も可能なカウンター付きの対面式流しを提案しました。また対面式にするためには若干の工夫が必要となります。せっかく対面するのであれば流し前に立つ人と対面カウンターに座る人との目線の高さを同じとしました。
その後、このスタイルで数件提案しています。私の自宅もこの対面カウンター付きの台所としています。ただし大人数での食事や家族の誕生日等は隣接する居間でテーブルを囲みます。
食堂・台所で一番多く実現しているスタイルはキッチンと食事用テーブルを一直線状とするものです。この場合はテーブルの大きさが比較的自由にできます。通常4人家族の場合0.9m×1.8mとすることが多いようです。来客時の対応も含めて0.9m×2.1mで片側3名ゆっくりと座れる大きさとすることもあります。
▼ 子供部屋について ▼
子供の場所をどのように考えるのか、大きなテーマとなることがあります。建築主夫妻自身の経験によりそのスタイルはまちまちとなります。子供それぞれに4.5畳、6畳、8畳の部屋と収納をと要望され計画することもあります。また子供部屋としてではなく必要となるスペースだけを計画することも多々あります。
子供が本当に自分自身のスペースを必要とする期間はどのくらいなのでしょうか。もちろん各家族の事情で違ってくるのは当然ですが、一般的に子供が小さいうちは親と一緒に寝ることが多く、高校・大学となると自宅を離れることも考えられます。
私の家を作る時にはこのことを意識しました。子供と一緒にいれる期間は以外に短いのではないか、大学が県外となれば17年間となります。そうであれば日常生活の中で、子供と過ごす時間をなるべく長くしたいと考えました。そのため子供にとって居心地の良い場所は子供部屋という独立した環境ではなく、家族で過ごす食堂・居間を快適な場所とし、子供部屋は3人一緒としそのスペースは全部で5畳の広さとしました。
その中には3人分の机と本棚を作り付け、2人分のベットをロフト形式で作りました。他1人の寝る場所は子供達の年齢差による対応としました。長男が大学進学のため県外に出るまでは、3人目の長女は私達夫婦の寝室(和室)で一緒に過ごしたのです。
二男は中学校卒業後に寄宿舎生活となりましたので、その間長女は子供部屋を一人で使うことになりました。現在すでに3人とも社会人となり、2人は自宅を出て生活しています。
建築主との打合せで実現した子供部屋で比較的多いスタイルは、1人2.5〜3畳の大きさにロフト状のベットを作り付け、その下に広めのカウンターと普段着をかけられるハンガーパイプを設置しする方式です。子供2人の場合は真ん中に建具を立て、必要に応じて開閉できるようにしています。この場合平面的には狭くなりますので、断面での開放感を考慮し、可能であればベットの高さでの通風・採光ができるように窓の位置を工夫することもあります。
▼ 寝室について ▼
畳等の床に直接布団を敷くのか、ベットを使うのかで部屋の大きさは変わってきます。また寝室から使えるクローゼットを設置するのか、別に部屋としてのクローゼットを設けるのかによっても寝室の計画は変わってきます。
他の部屋にも共通することなのですが、空調機に頼らずに夏場の夜を過ごしたければ、窓の位置等にも工夫が必要となります。宮崎県沿岸は春から秋にかけて通常は陸風海風が吹きます。昼間は海から陸へ、夜になると陸から海へ風が吹きます。この風を寝室内に、なおかつ寝ている場所(高さ)に取り込むと気持ち良く過ごすことができます。
また寝室を計画する時に、確認しておいた方が良いことがあります。通常夫婦の寝室は1カ所としますが、2カ所の必要性は無いかということです。若い夫妻の場合は無いと思いますが、熟年期に家づくりをされるご夫婦には思い切って確認してはと思います。
▼ クローゼットについて ▼
一般的には寝室から直接入るか、近くにウォークインクローゼットとして設けることが多いですが、収納場所を普段着と礼服などを含む季節物とに分けて計画することもあります。その場合、季節物の場所は洋服の入れ替えがしやすい場所としますが、普段着の場合は家族の生活スタイルによって、脱衣室内、玄関ホール近く、寝室内とその場所は変わってきます。また婚礼箪笥等をお持ちの場合は、その収納場所を計画段階に決めています。
▼ 浴室について ▼
浴室を1階とするのか2階とするのかで作り方が変わることが多いです。1階の場合は在来工法により床・腰壁を大きめのタイルとし、壁・天井は桧板を張り、合わせて外に坪庭を設け浴槽に浸かりながら庭を楽しめるようにすることが多いです。
2階に浴槽を設ける場合は漏水の懸念からユニットバスとするか、ハーフユニットバスを使い壁天井を桧板とすることもあります。いずれにせよ浴槽内の換気は換気扇だけに頼るのではなく2方向に通風窓を設置することができる建物の角に設置することが多いです。夏場、浴槽に浸かりながら首から上を自然の風が通り抜けていくのは大変気持ちの良いものです。
▼ 洗面脱衣について ▼
洗面と脱衣を兼用とした洗面脱衣室として作ることが比較的多いです。大きめの洗面器を桧のカウンターに埋め込んだ洗面台とし正面には壁一面の鏡、小壁に照明器具を設置し、洗面カウンター近辺に歯磨・化粧用品などが置ける棚を設置します。カウンター上にはヘアードライヤー用のコンセントも必要となります。
収納としてはフェイスタオルや家族全員の下着を個別に収納できるスライドバスケットを設置し、他にバスタオル、足拭きマット、石鹸、シャンプー類、入浴剤、髭剃りの各買置き用品等が置ける棚を設置します。また家によっては収納一部を長物置き場として掃除機、箒、短めの室内用脚立等を収納する家庭もあります。
また腰掛便器を洗面脱衣室内の一部に設置することも多くなりました。お風呂に入る前に子供がおしっこをしたり、介護の必要な人がいる家庭では、脱衣室内の便器は私の経験でも大変便利だと思います。一家に2個の便器が必要な場合は便所を2ヶ所も受けるのではなく便器をオープンで洗面脱衣室に置くのは一案だと思います。
▼ 洗濯室について ▼
洗濯機は通常脱衣室に置くことが多く、お風呂に入る前に洗濯機へ直接汚れ物を入れているのではと思います。ここ数年、夫婦共に働かれている家族への対応として、洗濯室を別に設けることがあります。
室内には洗濯機を置き、その横に運動靴、雑巾等の汚れ物が洗える多目的流しを設置することも提案しています。そして部屋の一部を洗濯物干し場とし、その機能を持たせるために広い天窓を設け、壁には2方向に窓を設け室内を風が通るようにしています。
プラン上可能であれば洗濯室と外部のベランダ・テラスが直接繋がるようにも提案しています。内部の仕上げは調湿・臭いの吸着効果の高いシラス壁とすることも合わせて提案しています。
▼ 洗濯物干場について ▼
近頃、乾燥機能付き自動洗濯機の普及により洗濯物を干さない家庭もあるようですが、千場を室内または室外に設置することは多々あります。建築主夫妻共働かれているケースで、日中の突然の雨にも対応できるようにと望まれる方は多いです。
可能であれば日光・通風を考慮し室内に設けていますが、1・2階のベランダの一部を千場専用スペースとすることもあります。その時には外部から干してある洗濯物が直接見えないように面格子などにて対応しています。洗濯室同様に千場として設ける場合も近くに多目的流しの設置を提案しています。
▼ 縁側について ▼
日本家屋と呼ばれる住宅には全てではありませんが縁側があります。通常和室の続き間の南にあり、壁のない柱と屋根、そして建具は雨戸だけの場合もありますが、ガラス戸との組み合わせが一般的です。梅雨時には半屋外空間として、雨に濡れずに過ごせ、夏場は深い軒先きとの組み合わせにより日陰の場所として、冬になるとガラス戸を閉め高度の低くなった太陽からの日差しを受ける陽だまりとして快適な空間となります。
近年、縁側を作ることはそう多くはありませんが、和室との組み合わせだけではなく居間との組み合わせとして提案することがあります。その場合は、台風時の対応とサンルームとしての使用を考慮し雨戸にひと工夫しています。
▼ 布団干場について ▼
一時期アパート暮らしを経験したことがあります。その時にとても便利なことがありました。それは部屋の外がベランダとなっており布団がすぐに干せることです。子供がまだ小さかった頃ですので、冬場の布団干しと合わせてその便利さを強く意識しました。ベランダがあれば手すりでの対応ができますが、ベランダが設置できない場合でも窓際の工夫にて千場を確保できます。日常生活において自然の恵みをどれだけ住まいに取り入れることができるのか、十分に検討してはと考えます。
▼ 西陽対策・通風について ▼
春から秋にかけて、特に夏は西陽が強くなり遮る対策が必要です。冬になると西側に窓があると午後からの陽射しが夕方まで入り室内が暖められます。また宮崎県の南北に長い沿岸地域は春から秋にかけて東西方向の風が吹きます、いわゆる海風陸風です。昼間は海からの東風が、夜になると陸からの西風が吹くのです。年々暑くなる夏の季節に、この東西方向の風を利用しない手はありません。
四季を通して西陽と通風の両方に対応はできる工夫があります。それはガラリ雨戸の設置です。それも角度調整機能付きのものがありますので、陽射しを遮りながら採光の調整も可能です。西側には大きな掃き出し窓を付けることはあまりなく腰窓(引き違い窓)をこのガラリ雨戸とのセットで付けることが多々あります。西陽対策と通風確保の両方に対応できます。
▼ 雨戸について ▼
1993年の台風13号は薩摩半島南部に上陸し宮崎県南西部から県北に進み、県内外とも甚大な被害をもたらしました。統計上戦後の伊勢湾台風にほぼ匹敵したと言われています。
この台風による各種災害の中で住宅の雨戸仕様で被害が違ったとの話を聞きました。雨戸には大きく分けると3つの種類があります。まず1つ目は断熱材が芯に入ったもので「断熱雨戸」と呼ばれているもの、そして2つ目は鋼板一枚を加工した普通の雨戸で仮に「防犯雨戸」と呼ぶことにします。これは学生時代、東京八王子での下宿時代に夜銭湯に行くため住宅街を歩くと雨戸が閉められており、街灯が無いところでは「暗闇の住宅街」として夜の東京のイメージとして今でも記憶に残っています。下宿のおばさんにこのことを聞くと防犯のためだと教えてくれました。3つ目が「西陽対策について」で紹介した「ガラリ雨戸」です。
台風13号による被害の中で屋根瓦が飛んできて「防犯雨戸」は内部のガラス戸も含めて突きやぶり、「断熱雨戸」は芯の断熱材そして両側の鋼板のおかげで瓦は雨戸に突き刺さりそこで止まり、ガラス戸までの影響はなかったとの話を聞いたことがあります。全ての家であてはまることではないかもしれないが、「防犯雨戸」が外部からの力に対してより強いことは明らかです。
宮崎県内での台風による風向きは多くの場合、北東から強まり、東風、そして南東の風までは強風となり、南風になる頃には少し弱まり、強い西風が吹くことは少ない。冬場の季節風としての西風はありますが台風ほどの強さではありません。
以上のことから、強風の影響を受ける東・南の窓には「断熱雨戸」を提案しています。自然の猛威は近年その強さを増しているようで、冬場の寒さもますます厳しくなるのではと思われます。近年雨戸の無い住宅が多くなっていますが、限られた予算の中での雨戸設置は優先順位の高いところにすることを提案します。
▼ 春から秋にかけての海風陸風について ▼
「西陽対策・通風について」の項目でも紹介しましたが、宮崎県沿岸は初夏から秋にかけて、日常的に海風陸風が吹きます。もちろん台風などの影響がある場合は例外となります。
気象庁の2017年7月20日のデーターを見ると、夜10時から翌朝9時までほぼ北西よりの風で、1.2〜3.6m/sとなっており、午前10時から夜8時まではほぼ東よりの風で、1.6〜4.4m/sとなっています。1ヶ月後の8月20日のデーターを見てもほぼ同じ状況となっています。
この風の変化を生活の中にどのように取り入れることができるのか、プランを立てる時にいつも考えます。蒸し暑い夜、わずかな風でも枕元を通り抜けると気持ちよく眠ることができます。
昼間気温が上がる中、海からの風を居間・食堂・台所に入れることで空調機に頼る時間が短くなります。設計した住宅によってはエアコンを設置していないお宅もあります。機械による冷気ではなく、温度が高くても自然の風を体で感じることができれば、涼しさ感じます。
▼ 発注(見積依頼)について ▼
見積をお願いする施工者は建築主が推薦する業者、そして私からは柴設計による設計監理で実績のある施工者を数社推薦します。建築主推薦の業者がある場合は、事前にその施工者が作った住宅、または現場を見せていただくようにしています。また私の方から推薦する業者に対しては、設計の段階でなるべく早い時期に、見積依頼が可能かどうかの確認をしています。仕事を多く抱えている状態で見積をしていただくと当然見積金額が高くなります。実績のある施工者は年々増えていますので、多い時には10社近くに見積をお願いすることもあります。
▼ 見積金額について ▼
概算工事金額が2,500万円ほどの住宅の見積を5社ほどにお願いすると、提出される見積金額には数百万円の差が出てくることはよくあります。2017年に発注しました概算工事金額3,300万円の住宅では、提出された見積金額は3,100万円から4,700万円までの開きがありました。
3,100万円で提出した業者は施工時期について条件が付いていましたが、見積金額の差が1,600万円ありました。この差には様々な要因が考えられますが、基本見積をお願いする図面には、使用する部材の材種・大きさ・程度、各種住設機器に関しては明確にその仕様・品番が記入されています。それでもこれだけの差が出てくる場合もあります。
▼ 施工時期について ▼
年間を通して住宅建設は行われていますが、自然乾燥木材を使用する場合、望ましい施工時期はいつになるのか、建築主との打合せの中で必ず説明する項目です。
諸塚村では自然乾燥を目的とした葉枯らし材を確保するために、木の成長が遅くなる初冬に倒され一冬枝を付けた状態で放置されます。翌年の3月はじめに倒された杉の枝を落とし所定の長さに切られ山から下されます。この乾燥時期に建築主家族と一緒に山に行き葉枯らし現場を森林組合の方に案内していただきます。
加工場に持ち込まれた木材は、皮を剥ぎ、材径により柱、梁材として加工されます。加工された木材は製品倉庫で乾燥を促進するために隙間を開けての桟積乾燥が行われます。
山で倒されてからほぼ一年後に棟上げが行われることが多いです。棟上げ後、冬場の乾燥時期に造作工事を行い春に完成することになります。
この工程であれば、梅雨時期、台風の季節を避けることができ柱・梁などの構造材を雨に濡らすことはありません。ただし年度末完成となりますので公共工事と現場が重なり見積金額にその影響が出てきます。
見積金額を少しでもお安くすることを前提とする場合は、公共工事が終わる年度始めの工事スタートが考えられます。その場合は、梅雨に入る前までに屋根工事を終わらせることが前提となります。
▼ 床下エアコンについて ▼
床下エアコンについて意見をもとめられましたのでお答えしました。私も以前から興味を持っていますが、まだ採用したことはありません。
システムとしは良いものだと思っていますが、懸念事項として、
・床下の断熱施工が前提となるため、シロアリへの対応、施工費用のアップ
・床下の換気について、冬の暖房時は同時に除湿されるが、夏場は除湿のみの使用となると不経済、かと言って冷房・除湿では効率が良くない。
・コストにより一般の壁掛けエアコン使用とするとメーカー保障がない。
などと、建築主との十分な打合せを行う必要があります。
参考資料として「建築知識2018年4月号に記載があります。
▼ 太陽光発電について ▼
今(2018年3月)までに、新築で2件、新築後1件、設置の実績があります。太陽光発電設置の話は毎回打合せで出てきます。設置が前提となれば施工しています。ただ気になることがあり、今まで積極的にこちらから勧めていないのが実情です。
それは屋根面への設置方法です。メーカーによる保障はありますが、屋根面を傷めず、台風時の対応も十分な対策が行われるのであれば、もう少し私自身も積極的に取組むことになるのですが、現在、初期の設置住宅でのトラブルのためか、色々な取付方法が提案されてきています。屋根のメンテナンスに関わることですので慎重に検討する必要があります。