各市ともに関係がある国民健康保険や介護保険。これらへの一般会計からの繰出金がどの市でも大きな負担となっていますが、その仕組みは複雑でなかなか全体像がみえなくなっています。
ここでは以前紹介した記事をまとめて、その仕組みを明らかにしていきます。
わかりやすさのために、適宜言葉を加えており、投稿した時点とは多少文言が変わっている部分もあります。
1.国民健康保険の仕組み(骨格) <2009年9月17日投稿>
明らかにこれではわからないので、解説。ただし、いろいろなところからの情報を総合しているので、間違いがあったら教えてください。
(クリックすると大きくなります。)
まずは、国民健康保険の骨格の部分を取り上げました。
国民健康保険の自己負担以外の財源は基本的には、加入者が支払う健康保険税と市の一般会計からの繰入金、国や都の負担金からなります。(①~③)
国保の納付率は約90%(現年度分)ですが、滞納により不足した部分は、市の一般会計からの繰入金により穴埋めがされます。
国民健康保険の加入者が受けた診療に対し、病院などのお金が払われますが、医療機関に対しては特別会計から直接払うのではなく、国民保険連合会を通じて支払われます。(④~⑤)
日野市ではそれぞれの金額は平成19年度で①が約29億、②が約19億、③は国約28億、都約8億。
④及び⑤は101億。 ①~③の合計と合いませんが、その理由は次回以降に紹介する各項目があるためです。
なお、決算書では
①は国民健康保険税(一般被保険者と退職被保険者がある。)
②は繰入金のうち一般会計繰入金
③は国庫支出金及び都支出金
④は保険給付費 を見れば金額がわかります。⑤は決算書には出ません。
2.国民健康保険の仕組み(退職・前期高齢) <2009年9月18日投稿>
前回の続きです。
国民健康保険の加入者には、自営業者や健保組合がない企業の社員のほかに、退職者も含まれます。
退職者に関する部分については、サラリーマンなどが加入する健保組合などが負担することとなっており、各健保組合から社会保険診療報酬支払基金を通して、国民健康保険特別会計に支払われます。⑥
決算書では歳入項目の療養給付費等交付金がこれにあたります。
前期高齢者(65~74歳)の医療費については、前期高齢者の割合が多いところ(国民健康保険)と少ないところ(企業の健保組合など)の負担を調整するため、前期高齢者の割合が少ない組合から一定のお金を徴収して、前期高齢者の割合が多い保険者(主に国民健康保険)に支払うこととなっています。
市の特別会計からも負担金が出ていますが、受け取る金額の方がはるかに多くなります。⑦
決算書では歳入項目の前期高齢者交付金、歳出項目の前期高齢者納付金等がこれにあたります。
3.国民健康保険の仕組み(国保からの負担) <2009年9月19日投稿>
さらに続きです。
国民健康保険組合は保険の支払だけをしているわけではありません。
後期高齢者医療保険や介護保険に関する負担金も支払っています。(⑨と⑩)
これらの負担金は社会保険診療報酬支払基金を通じて、各市町村の介護保険や各都道府県の後期高齢者の広域連合に支払われます。なお、介護保険や後期高齢者の負担金は国民健康保険以外の健康保険組合も支払っています。
決算書でいうと、
⑨は後期高齢者支援金等(歳出)
⑩は介護納付金(歳出) の項目がこれに該当します。
この他共同事業とのお金のやり取りがあります。高額医療費など、一市町村では負担が大きくなる恐れのあるものについて、各市町村の特別会計からお金を拠出して運営するものです。高額医療費については、国や都からの補助が入っているようです。(⑧)
決算書でいうと
歳入の共同事業交付金、歳出の共同事業拠出金
がこれにあたります。
<参考にしたHP>
厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/index.html
社会保険診療報酬支払基金http://www.ssk.or.jp/sikumi/index.html
など。
さて、これを動画で説明するとなると・・・・。時間をかければ説明できますが、短時間ではほぼ無理。
図ももっと単純化が必要。限られた時間では
①仕組みが複雑だということ
②国保の加入者以外もつながっていること
③市の税金もかなり投入されていること
④滞納すると市の負担が増えること
ぐらいが伝わればよいのではないかと思っています
4.介護保険の仕組み<2009年9月28日投稿>
国民健康保険に続き、介護保険です。
(クリックすると大きくなります。)
数字は平成20年度決算による金額です。
①は1号保険者(65歳以上)の保険料です。
決算書では「保険料」の項目になります。
②は2号保険者(40~64歳)の保険料です。一旦社会保険診療報酬支払基金(以下「基金」と省略)を経由します。
③は一般会計からの繰入金。決算書では「一般会計繰入金」の項目になります。
④は国や都からの補助、決算書では「国庫支出金」及び「都支出金」
⑤は保険給付費の支払です。介護事業者に直接ではなく、国民保険連合会の介護保険勘定を通して支払われます。
⑥は国民健康保険からの負担。これは「基金」に一回プールされて、全国の介護保険特別会計に分配されるので、日野市の負担は6.4億円ですが、その金額が回ってくるわけではありません。
⑦は各種健保からの負担? もしかしたら②と一緒なのかも。
「基金」から支払われる金額は、一括して決算書では支払基金交付金の項目になっています。
介護保険の仕組みとしては、①が1/6、②⑥が1/3、③が1/8、④が3/8(国1/4、都1/8)の割合で負担することになっているそうです。
実際の割合が微妙に違う理由はよくわかりません。
5.後期高齢者医療特別会計の仕組み<2009年10月1日投稿>
介護保険に続いて後期高齢者医療です。
後期高齢者医療は東京都後期高齢者医療広域連合により運営されています。
各市町村の特別会計から広域連合へ負担金が支払われます。③
特別会計の歳入としては、保険料12.2億円(①)、市の一般会計からの繰入10.6億円(②)があります。
市の決算書からはここまでしかわからないので、ここからは広域連合のHPから分析。
昨年度の広域連合から医療機関への支払は7,687億円(⑥)。
その原資としては、各市区町村の特別会計から総計1645億円、国と都からあわせて2624億円(④)、基金から3559億円(⑤)となっています。その基金の元をたどっていくと国民健康保険とその他の健保等から拠出された資金となります。
ちなみに、日野市の負担は21.8億円、仮に1645億円に対する日野市の負担の割合が、日野市民に関わる割合と想定した金額が青文字の金額です。
日野市民分の後期高齢者の医療費101.9億円、それに対する国や都の補助が34.8億円、他の国民健康保険や健保等からの負担が47.2億円。と推計されます。
なお、平成19年度の老人保健特別会計からの医療費支払が99.7億円なので、上記の医療費の金額はほぼ日野市民の医療費にリンクしていると思われます。
6.老人保健特別会計の仕組み<2009年10月3日投稿>
平成20年度から後期高齢者医療特別会計がスタートしていますが、平成19年度までは老人保健特別会計でした。清算の関係で平成20年度にも項目は入っていますが。
基本的な構造は、後期高齢者の仕組みと似ています。
老人保健特別会計を広域連合に置き換えると、
・国や都から補助をもらっていること
・国保やその他の健保組合から基金を通して補助をもらっていること
は同じ。
違うのは、市の補助が直接ではなく一旦市の特別会計を通して広域連合にお金が出ていること、また市民からも市の特別会計に保険料が支払われていること。
ちなみに市からの負担は、後期高齢医療特別会計に対して10.6億円なので、結果として負担が増えています。本来は市民からの負担もあるし、制度的に±0ぐらいのはずだったのですが。
ここらへんの仕組みは複雑でよく理解しきっていません。
7.健保組合の負担<2009年10月4日投稿>
さて前回まで国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療とその前身である老人保健の特別会計に関わるお金の流れを紐解きました。
そのたびに出てくる、健保等というサラリーマンや公務員が入る健康保険に関わるお金の流れを説明します。
前回までは国民健康保険を主体としていたので、まとめて「健保等」となっていますが、大きくは3つのまとまりがあります。健康保険の適用事務所で働く社員が入る「健康保険組合」。社会保険庁が運営していた政府管掌健康保険から変わった「全国健康保険協会」(いわゆる協会けんぽ)、これは中小企業等の従業員や家族が入るもの。そして国家公務員や地方公務員、私学の教職員などの「各種共済」です。これらの対象者はあわせて約7650万人(家族を含めて)となります。
下の図は全国レベルでのお金の出入り。単位は兆円(!)です。
国から約6000億円の負担がありますが、これは健康保険協会に対するものです。
さて、日野市民のうちこれらの制度の対象となっている人数は、国民健康保険の対象者を除いて約13万人となります。仮に全国の健保等の加入者数と単純に比例すると考えると、下記の緑色の数字が日野市民負担と計算される数字になります。単位は億円。
日野市の個人市民税が約130億円ですが、その2.5倍の保険料を支払っている計算になります。確かに実感としても合っている気がします。
そのうち、約53%が本人と家族の医療費。1/6弱が後期高齢者分の負担(日野市の高齢者ではなく、全国にある基準で分けられる)、1/8強が前期高齢者分の負担(これも全国へ)、後は介護保険料の分が支払基金を通じて介護保険のため、退職医療の分が国民健康保険の(この2つは日野市の特別会計に?)ために負担されています。
この仕組みをどう評価するかは人それぞれと思いますが、まずこれを把握している人はあまりいないのではと思いました。
会社員が払っている保険金で退職者を含めた自らの医療費のために使っているのは概ね6割で残りの4割は、それ以外の医療保険や介護保険を維持するために使われているのです。
ということは、国民健康特別会計や介護保険の財政の状況は決して他人事でないことがわかりますし、事実これまでの制度改革は国民健康保険の苦しいところをいかに、他に押し付けるか(言葉は悪いが)を目的としていたともいえます。