○土地開発公社とは?
土地開発公社は、昭和47年に公布された「公有地拡大の推進に関する法律」に基づき、市が出資して設立される法人です。
当時は土地の値段が上がり続けており、道路など公共施設を作ろうと思っても、土地が値上がりしてなかなか土地が確保できないという状況にありました。
市が土地を買うためには、原則として市がすぐに使うことが必要だったり、議会の議決が必要だったりするので、取得しようと時間をかけているうちにさらに土地が上がるなどということがあり、公共用地をどう確保するかが課題となっていました。
そのような中、議会の議決を経ずに「機動的に」土地を買える土地開発公社が設立されていったとのことです。土地開発公社が買った土地は、後年市が開発公社が土地を買うために借入をした利子を含めた値段で買い上げるということになっていました。
土地の値段が金利を超えて上昇しているときは問題が明らかにならなかったのですが、やがて地価は減少に転じました。
地価が下がっているときは待てばより安く土地が取得できたのですが、地価の下支えや景気対策の意図があってか、「積極的に土地を買うように」との国からのお達しがあり、下がるとわかっている土地をあちこちの自治体で大量に抱え込むようになってしまったとのこと。
これにより本来の目的をはずれた無計画な土地の先行取得が行われてしまったと指摘されています。
(参考:自治体財政の会計学 新世社)
結局土地はさらに下がり、無計画に取得した土地は何年も塩漬けになっています。2007年度末で60%(金額ベース)以上の土地が10年以上塩漬けになっています。(総務省資料)
土地の取得は銀行からの借入で行っていますが、土地開発公社に対しては市が債務保証をしているため、市の隠れた借金になっています。また公共施設へ使うあてのない土地は民間売却することとになりますが、そうすると含み損が明らかになり、その分は市が補てんしなければならず、売るに売れなくなり、その間にさらに地価が下がるという悪循環に陥っています。
90年代に唯一財政再建団体であった福岡県の赤池町は土地開発公社の赤字を清算したことが、財政再建団体に転落した直接的な原因でした。
○平成21年度の決算の状況
(1)どれぐらい土地を持っているのか。
平成20年度末現在、公社が所有している土地は約48563㎡。昨年よりやや増加。
簿価は約101.67億円です。㎡当たりにすると20.93万円、坪当たりでは69.21万円です。
面積のトップ3は
①西平山区画整理用地(複数個所合計) 約19,300㎡
②日野市立第21小学校用地 約7,500㎡
③程久保緑地用地及び美術館用地 約7,100㎡
簿価(要するに買った価格)のトップ3は
①西平山(上記①と同じ) 約54.3億円
②万願寺第二区画整理用地 約10.4億円
③程久保緑地(上記③と同じ)約7.3億円 です。
(2)どれぐらい売買したのか
土地開発公社の役割は公共用地を買収し、市に売却することです。
買った土地は百草地区の緑地用地 1,485㎡を約2670万円。 (約1.8万円/㎡、約5.9万円/坪)
市に売却した土地は
七つ塚公園用地373㎡を約6880万円で。
民間に処分した土地(特定土地というらしい、法律用語かどうか不明)
豊田南区画整理内用地 約280㎡を合計66660万円で。ちなみに取得価格とまったく同じ。
東豊田区画整理区域内土地約1056㎡を合計2億1458万円で。これも取得価格とまったく同じ
(3)経費は?
管理経費が574万円(前年+130万円)。
内訳は賃貸に出している土地がらみの税金が460万円
(昨年+130万円)
増加の理由は平成21年度の評価替えによるもの?
除草代84万円、駐車場管理費18万円。
支払利息が1億1495万円で、これが経費のほとんどを占めています。
この利息と同額の補助金が日野市から払われています。
一般会計の決算書では、他の分類に入らない
「諸支出金」の「公営企業費」に分類されています。
(4)収入はある?
資材置き場や駐車場として貸しているため
年間1200万円ほどの収入があります。(昨年+100万円)
(5)借金は?
短期で借入(毎年借り換え)で、残高が104.97億円。昨年比-2.4億円
三菱UFJ銀行と さわやか信用金庫、多摩信用金庫から。
(6)土地の時価は?
残念ながらわかりません。
(7)なぜか
雑損失が1.286億円。 内容は不明。
○平成元年以後の土地開発公社の状況の推移
平成が始まったばかりの平成元年の3月末(昭和63年度末)は56.1億円分の土地を持っていました。
平成に入ってから土地開発公社は
元年 23,634㎡
2年 21,679㎡
3年 43,422㎡
4年 30,371㎡
と大量に土地を取得する一方
平成2年には15,854㎡、3年は17,998㎡ と処分も進んでいました。
しかし、平成4年から地価が下落に転じたのに合わせるように、平成4年は851㎡のみの処分となっています。
大量取得により平成4年度末には土地開発公社の土地の残高は258億円とわずか4年で4.6倍、200億円も増えました。
所有土地のピークはおそらく平成7年度末ごろで、119,070㎡、このころになると取得土地面積は5000㎡前後となり、処分する土地の方が徐々に増えていきます。
また土地の残高に利子が加わっていたのですが、平成10年に切り離されています。
地価が上がっていたころは、利子を含んでも土地を先に買った方が得だったため、土地開発公社が買った土地を市が買うときは利子の他経費も上乗せして買ってもよかったのですが、土地が下がってくると利子を上乗せした金額では現在の地価との乖離がひどくなってしまうためと思われます。
それでは利子の分はどうするか?というと結局のところ「経費」として市から利子分の補てんを受けることとなります。
これにより土地の残高は平成9年度末の307億円から翌年には242億円に減っています。土地売却分もありますが、そのほとんどは今まで支払った金利と思われます。
図1 土地開発公社の土地の簿価と借金の推移
平成11年度からは取得はさらにへり、処分が徐々にすすんだので、平成15年には85,333㎡、残高176億円まで減ります。
平成13年度からは民間への売却もされています。
平成13年度を見ると、市に対しては2.82億円で買った土地を2.84億円で売却、4.34億円で買った土地を4.38億円で売却となってなり、損が出ていないですが、民間に対しては6.67億円で買った土地を3.98億円で売却しています。 おそらく市に売却した土地も民間に売った場合はかなりの損が出ていたと見られ、結果として市が高い土地を買ってしまっているといえるかと思います。
また平成9年度までは個別の土地の契約年月日がリスト化されていたのですが、平成10年度から「○○区画整理事業用地」とまとめられてしまったため、詳細がわからなくなっています。
ちなみに平成9年度を見ると、一番古い土地として昭和49年度に取得した日野第21小学校用地があり、実はこれは平成20年度になっても市に取得されずに残っています。取得後5年以上経つ土地を全国オンブズマンは「塩漬け土地」と命名していますが、その問題を明らかにするためにも、土地取得時期がわかる明細を決算書にはつけてほしいものです。
さて、土地の処分はさらに進み、平成16年度には7.2万㎡、平成17年度には5.7万㎡、平成20年度には4.7万㎡まで減少。残高も約100億円程度までに減っています。
○土地開発公社と土地区画整理事業
土地開発公社の所有している土地のうち面積では約2/3、金額では約80%が土地区画整理事業区域内の公共施設のための用地です。
土地開発公社と区画整理事業は深い関係にあるのです。
区画整理区域内の公共施設とは、区画整理内の道路や公園のことです。 区画整理事業では公共施設は従前の宅地を少しずつ削って生み出すということになっていますが、実際には生み出しきれないので、あらかじめ公共施設用地を市が買っておかなければならなくなっています。
区画整理事業以外の土地、例えば小学校用地とか○○会館用地のようなものは、その施設に対する市の予算がつき次第取得できるものです。しかし、区画整理事業は、既にある住宅や道路を少しずつ動かしながら事業を進めていかなければならないもの。
関係のある住民一人ひとりの同意のもとに進めていくため、一般に時間がかかります。つまり、区画整理事業に関する土地は事業が進まない限り、なかなか処分が進まないということになります。
平成18年度日野市財政白書より