ここから社会保険関係の特別会計の解説です。
国民健康保険をはじめとする社会保険の仕組みは非常に難しいですが、なるべく多くの方に理解いただきたいと思い、仕組みから解き明かしています。
若干説明が長くなるかもしれませんがご容赦ください。
図1は国民健康保険の骨格の部分です。
国民健康保険の自己負担以外の財源は”基本的には”加入者が支払う健康保険税(①)と市からの一般会計からの繰入金(②)、及び国や都からの負担金(③)となっています。国保の納付率は現年度分で約90%(滞納率は10%)ですが、滞納による不足分は市の一般会計から穴埋めされます。
医療機関へは、特別会計から直接支払うのではなく、国民保険連合会を通じて支払われます。(④と⑤)
金額はそれぞれ、平成21年度の①~④の数字は以下。
①32.58億円 (加入者一人当たり年7.1万円)
②16.39億円 (加入者一人当たり年3.57万円)
③国2.27億円、都7.21億円
④は105.86億円 (加入者一人当たり23万円)
通常の医療機関への診療の他に出産一時金や、葬祭費、結核予防法や精神医療給付金などもありますが、大半は医療費(そのうち約104億円)です。
明らかに①~③の合計は④に足りません。
図2の説明です。
国民健康保険の加入者には、自営業者や健保組合がない企業の社員のほかに、健保組合の退職者も含まれます。
退職者に関する部分については、健保組合等が負担することとなっており、各健保組合から社会保険診療報酬支払基金を通じ、市の特別会計に支払われています。(⑥)
⑥は平成21年度は7.39億円。
なお、退職者は保険料として3.03億円を支払い、医療給付(⑥)として7.58億円の給付を受けています。
あれっ。3億円弱余るよ? たぶん後で紹介する介護保険の負担分に回っているのではないかと思われますが、原因はよくつかめてません。
次に前期高齢者(65~74歳)の医療費については、前期高齢者の割合が多い医療保険(国民医療保険)と少ないところ(健保組合など企業の健康保険)の負担を調整するため、前期高齢者の割合が少ない組合から一定の方法で計算したお金を徴収して、社会保険診療報酬支払基金を通じて、前期高齢者の割合が多い保険に支払うこととなっています。
矢印は市の特別会計からも出ていますが、受け取る金額の方が圧倒的に多くなっています。(⑦)
⑦は平成21年度で42.77億円、市民の保険税の負担の総額よりも多くなっています。
図3の説明に入ります。
国民健康保険組合は医療保険の支払をしているだけではなく、後期高齢者医療保険(⑨)や介護保険に対する負担金(⑩)も支払っています。
これらの負担金は社会保険診療報酬支払基金を通じて、各市町村の介護保険や各都道府県の後期高齢者の広域連合に支払われます。
なお、介護保険や後期高齢者の負担金は企業の健保組合なども支払っています。
平成21年度は⑨が19.94億円、⑩が7.15億円です。
この他共同事業とのお金のやりとりがあります。高額医療費など市町村単位で見ると負担のばらつきが大きく、財政運営に支障をきたす恐れがあるものについて、各市町村の特別会計からお金を拠出して運営するものです。
高額医療費については国や都からの補助があるようです。(⑧)
平成21年度で⑧の歳入が14.93億円、歳出が15.55億円となっています。
それでは高額医療がそれだけあるのかといえば、高額医療は退職者で739件7900万、一般で16万件、9.2億円。
実際は保険財政共同安定化事業の出入りが多くなっています。
これは何かというと、高額医療ほど高額ではないものにつき、都道府県内で負担の調整を図るもののようです。
まあ、プチ高額医療ということかな。
ということで、市町村の国民健康保険は保険料だけでなく、税金と健保組合からの負担で支えられている一方、介護保険と後期高齢者医療の財政(必ずしも自分の市のではない)を支えていて、それが社会保険診療報酬支払基金を通じて複雑に絡み合っていることがわかります。
図1 国民健康保険関連の流れ 基本
図2 国民健康保険の流れ 退職・前期高齢者
図3 国民健康保険の流れ 国保からの負担