Communications9 (2017-2019) - hisashi fujita

81. 家族の時間――是枝裕和作品における「分人」的モチーフ

國立臺灣大學藝術史研究所主催・國際學術工作研討會 「近代・神話・共同體:臺灣與日本」 (日本側:伊藤徹先生(京都工芸繊維大学)・平子友長先生(一橋大学)・澤田美恵子先生(京都工芸繊維大学)、台湾側:黃蘭翔先生(台湾大学)・曾光宗先生他とともに)(2017年2月17日(金)@台湾新竹県豐郷徐氏家廟会議室)(口頭発表⑥、2016-2017年度)

近代が「個人」(individuals)を中心に編成されてきた時代であるとすれば、ネット文化などを特徴とする現代は「分人」(dividuals)を中心に再編成されつつあるのではないか。そのような再編成のさなかにあって、愛・性・家族もまた変容を被らざるをえない。現代日本映画を代表する映画監督の一人である是枝裕和は頻繁に「家族」をテーマとして取り上げているが、彼の眼差しはまさにこの近代から現代への主体性の変容に向けられているのではないか。

本発表では、是枝初の連続テレビドラマ作品《ゴーイング マイ ホーム》(2012年)をはじめとして、《後の日》(2010年)、《奇跡》(2011年)、《海街diary》(2015年)の幾つかのシーンをごく簡潔に分析することを通して、過激さや過剰さのない一見穏やかな彼の作品全般が実は「分人性」の描写に満ちていることを論じた。是枝が描く、綺麗ごとだけではなく、鬱陶しいこともあるけれど、愛おしいところもある家族の物語の数々。そこには近代家族の限界と、現代家族の可能性が描かれているのではないか。それは、「分人」概念を通して、そして「時間」の観点から眺めるとき、より鮮明に表れてくるものではないか。

82. 家族の時間――是枝裕和の近年の作品における「分人」的モチーフ (報告

シンポジウム「ネット文化のなかの台湾と日本――オリジナリティー再考」

(日本側:伊藤徹先生・澤田美恵子先生・平芳幸浩先生(ともに京都工芸繊維大学)・青山太郎先生(名古屋文理大学)・若林雅哉先生(関西大学)、台湾側:張文薫先生・呂佳蓉先生・廖勇超先生(台湾大学)他とともに)

(2017年7月23日(日)@京都工芸繊維大学60周年記念館1階大ホール)(口頭発表①、2017-2018年度)

近代が「個人」(individuals)を中心に編成されてきた時代であるとすれば、ネット文化などを特徴とする現代は「分人」(dividuals)を中心に再編成されつつあるのではないか。そのような再編成のさなかにあって、愛・性・家族――近代的主体とそのオリジナリティの核を生産する基盤と見なされてきたもの――もまた変容を被らざるをえない。現代日本映画を代表する映画監督の一人である是枝裕和は頻繁に「家族」をテーマとして取り上げているが、彼の眼差しはまさにこの近代から現代への主体性の変容に向けられているのではないか。

本発表では、是枝自身がキャリアの中で重要な展開を遂げた作品と位置付ける《歩いても歩いても》(2008年)の幾つかのシーンを具体的に分析することで、過激さや過剰さのない一見穏やかな彼の作品が(とりわけ近年の作品が)実は「分人性」の描写に満ちていることを論じた。是枝が描く、綺麗ごとだけではなく、鬱陶しいこともあるけれど、愛おしいところもある家族の物語の数々。そこには近代家族の限界と、現代家族の可能性が描かれているのではないか。それは、「分人」概念を通して、そして「時間」の観点から眺めるとき、より鮮明に表れてくるものではないか。

83. 西洋哲学の起源と愛・性・家族の未来――プラトン『饗宴』を読み直す

「考える」ことを楽しむ哲学入門講座2017 入門講座①トーク「結婚に愛は必要か?」(13:30-15:00)+哲学カフェ(15:15-16:30)

(宮野真生子先生(福岡大学)とともに)

(2017年11月12日(日)@石川県西田幾多郎記念哲学館・哲学ホール→展望ラウンジ)(口頭発表②、2017-2018年度)

84. レチフ的ユートピアにおける結婚――『南半球の発見』を中心に (報告

ワークショップ「変愛のフランス文学」(相野毅先生(佐賀大学)・村上舞先生(西南学院大学)とともに)(2017年12月9日(土)@西南学院大学)(口頭発表③、2017-2018年度)

85. Le Nouveau Monde amoureux et l’avenir du mariage : Fourier avec Bergson et Deleuze(『愛の新世界』と結婚の未来――フーリエ、ベルクソン、ドゥルーズ)

Colloque « Fourier ! Fourier ! Deux journées avec Charles Fourier », Le mardi 27 mars 2018, 10h-16h20 et le mercredi 28 mars 2018, 10h-17h10, Salle de conférence de la Bibliothèque de l’Université Hitotsubashi, Kunitachi, Tokyo, Japon.

国際シンポジウム「シャルル・フーリエ研究集会」(福島知己先生(一橋大学)主催、Thomas Bouchet(ブルゴーニュ大学)、大塚昇三(北海道武蔵女子短期大学)、篠原洋治(慶応義塾大学)、Florent Perrier(レンヌ大学)、中村恭子(日本画家)、阿部日奈子(詩人)、塩塚秀一郎(京都大学)の各先生とともに)

(2018年3月28日(水)@一橋大学西キャンパス附属図書館会議室)(口頭発表④、2017-2018年度)

86. L'immatérialisme de Macherey(マシュレの非唯物論)

Demi-Journée d'études : Flaubert, Spinoza, Bergson - Littérature et philosophie dans la France du XIXe siècle, organisé par Norioki Sugaya (Université Rikkyo), avec Juliette Azoulai (Université Paris-Est Marne-la-Vallée) et Atsushi Yamazaki (université Chukyo).

公開シンポジウム「フローベール、スピノザ、ベルクソン――19世紀フランス文学と哲学」(菅谷憲興先生(立教大学)主催、ジュリエット・アズレ(パリ東大学マルヌ=ラ=ヴァレ校)、山崎敦(中京大学)の各先生とともに)(2018年5月12日(土)@立教大学池袋キャンパス11号館A301教室)(口頭発表①、2018-2019年度)

87. 性的モノ化をバケモノ化する

第12回文芸共和国の会:市民参加型シンポジウム「生が、性が、モノモノしい」(菅 実花(アーティスト/東京藝術大学)、関根麻里恵(ラブドール研究/学習院大学)、猪口智広(科学論・動物論/東京大学)、ファシリテーター: 逆卷しとね (学術運動家/独立研究者))

(2018年12月1日(日)12:00~18:00 @鹿児島大学法文学部1号館102号室 )(口頭発表②、2018-2019年度)

「あの人をモノにする」とき、人はモノに化ける。愛と性、情動と経済の関係をどう考えるべきか。マルクスは『資本論』第一部草稿において、明らかに「物象化」を批判的に考察しており、例えば皮革や靴型などの生産手段が靴職人を「使用する」という事例において、モノは或る種の主体性・能動性を帯びる。「モノ(Sache)と人(Person)とのこのような転倒(Verkehrung)、したがってその資本主義的性格」を精確に見て取っている。だが、モノと人格の転倒が問題なのではなく、それが「資本主義的性格」、つまり「所有」のパラダイムのうちで行なわれていることに問題があるのだとしたら?

「人のモノ化」というマルクスの問題系を、「脱=所有」のパラダイムにおいて最も前進させたのは、フランスの特異な文学者・思想家ピエール・クロソウスキーの小説『歓待の掟』および思想的エッセイ『生きた貨幣』である。「生きた貨幣」とは端的に言えば、労働の支払いとして使用権を差し出された人間の身体である。「それは、情欲の源泉である生きた対象を、飼育の次元に、種馬飼育場の次元に貶めることだ」、人間の身体や情愛を経済的尺度で評価することは許されない(動物の身体や情愛ならば許されるのだろうか?)という異論もあろう。だが、情欲の対象たるアイドルやスターの視聴覚的美点の数々を、いやもっと一般的に私たち労働者の生産能力を――「人材開発」「ヒューマン・リソース」という言葉が一般化して久しい――、収益性や維持費の観点から、数量的に表現しているのは、現代社会を支える当の産業主義そのものではないのか。死んだ貨幣に対置された「生きた貨幣は逆に、習慣の中に根を下ろし、経済的諸規範の中で制度化された金本位制の、その金の役割に取って代わる力を持つだろう。ただし、その新しい習慣は、交換行為の数々とその意味を、深く変えずにはいないだろうが」。そのとき、「人間の尊厳は手つかずのまま残されており、金銭はその価値のすべてを維持している」。これはバケモノ的なことだろうか?

 当日は以上の議論をより詳細に詰めることになるかもしれないし、別の著者たちを扱うことになるかもしれない。というのも、「脱=所有」「共有」の方向へ進もうとする新たな読解は、意識・主体・個人・人格といった哲学の主要概念の捉え方も変更せずにはおかないからである。その意味では、未だに愛・性・家族の領域において本格的に扱われたとは言えない哲学者たち、例えば現代フランス哲学者ジルベール・シモンドン――鹿児島大学の近藤和敬が訳者の一人となって、主著『個体化の哲学』の翻訳(法政大学出版局、2018年)が刊行されたばかりである――や、『理由と人格――非人格性の倫理へ』という大著(勁草書房、1998年)を刊行したアメリカの哲学者デレク・パーフィットが当日取り上げられたとしても大きな驚きはないだろう。 

88. 「やる気を引き出す」とはどういうことか? FDを問う~批判と問題提起~  報告

福山市立大学FD研修会(2019年2月28日(木)14:50~16:20 @福山市立大学・中講義室 )(口頭発表③、2018-2019年度)

89. ベルクソン伝説の講義を語る

アンリ・ベルクソン『時間観念の歴史』刊行記念トークイベント第一弾「ベルクソン伝説の講義を語る」(平井靖史さん(福岡大学)とともに)

(2019年08月02日(金)19:30~21:00 @本のあるところajiro)(その他①、2019-2020年度)


90. ベルクソン的人格概念の再検討――リキエ『ベルクソンの考古学』から出発して

PBJ-DI分析系分科会(2019年08月03日(土)15:00~19:00 @福岡大学2号館4階24J教室)(口頭発表①、2019-2020年度)