2015-04-12 托卵三部作の3本めが出版されました

Post date: Apr 12, 2015 3:56:26 AM

元院生の山根さんの托卵三部作の3本目が出版されました!

Yamane, H., Y. Nagata and K. Watanabe. 2015. Exploitation of the eggs of nest associates by the host fish Pseudobagrus nudiceps. Ichthyol. Res. DOI: 10.1007/s10228-015-0467-6.

山根・長田・渡辺(2015)「ギギは繁殖巣に托卵された卵を餌として有効に利用する」Ichthyological Research,オンライン.

ムギツクはギギの巣に托卵し、ギギ雄による子の保護を利用しますが、営巣後期に托卵されるムギツク卵はほとんどすべて、孵化したギギの子に食べられ、托卵数が多いほど、ギギの子は長く、大きくなるまで巣にとどまり、おそらくその後の生存に有利な形で巣立っているというものです。さらに、ギギの雄親も営巣後期にはムギツク卵を食べることがわかり、子育てのコストを補償している可能性があります。

卵の捕食はもちろん、営巣後期での托卵は他の宿主(オヤニラミやドンコ)ではほとんど見られません。これはギギの卵がムギツク卵と異なる場所(底面vs.天井)に産着されるためだと推測されますが、さらにギギがわざと営巣後期の托卵を促す解発シグナルを発している可能性を示唆し、今後の研究課題です。

少し公表まで時間がかかりましたが、学校の先生をしながら、粘り強く、受理に至りました。また今回も編集委員、2名の査読者には大変建設的で良いコメントをたくさんいただきました。深謝。

別刷(PDF)、お気兼ねなくリクエストください。

関連論文

1. Yamane H., Watanabe K. and Nagata Y. In press. Flexibility of reproductive tactics and their consequences in the brood parasitic fish Pungtungia herzi (Teleostei: Cyprinidae). J. Fish Biol., 75: 563-574. Doi:10.1111/j.1095-8649.2009.02306.x (2009)

ムギツクの非托卵型産卵、その出現状況と低い孵化率を報告し、それらから逆に托卵の意義を論じた。

2. Yamane, H., K. Watanabe and Y. Nagata. 2013. Diversity in interspecific interactions between a nest-associating species, Pungtungia herzi, and multiple host species. Environ. Biol. Fish., 96: 573-584. DOI: 10.1007/s10641-012-0047-9 (2012)

ドンコとギギに対するムギツクの托卵戦術と両宿主種の対抗戦術を、托卵数とそれぞれの卵生残率の定量化をもとに記載。その違いの由来を考察。ギギ稚魚によるムギツク卵・仔魚の捕食を報告。