2012-7-31 新規論文:イサザの隠れた集団の歴史

Post date: Jul 31, 2012 5:05:28 AM

大学院生の田畑諒一さんとの論文が出版された.

Tabata, R. and K. Watanabe. In press. Hidden mitochondrial DNA divergence in the Lake Biwa endemic goby Gymnogobius isaza: implications for its evolutionary history. Environ. Biol. Fish. DOI: 10.1007/s10641-012-0062-x (2012)

琵琶湖固有種を代表する魚の一つイサザは,生態,適応,また系統的起源について,比較的よく研究された種といえる.

本論文は,多数のサンプルを遺伝分析することにより,イサザにおいて,かつて2つの遺伝的に分化した集団が融合したと推察される歴史情報を検出し,それらをもとに,イサザの歴史を再構築しようとしたもの.過去の論文と同様に,イサザの系列の起源が現琵琶湖(約40万年前)の起源をはるかに遡ること(約300万年前),さらに,推定された2つの集団の分化は数十万年前に遡り,おそらく融合した集団として,数万年前に現琵琶湖内で個体数を増大させたことなどを新しい分岐年代推定法により推定.

一方,琵琶湖周辺の淡水型ウキゴリはというと,周辺の太平洋側のウキゴリとほとんど遺伝的な分化はなく,比較的歴史の浅い淡水適応だと推察された.