2014-2-6 新しい論文出版:社会構造が生態系構造を変える

Post date: Feb 6, 2014 2:29:08 AM

神戸大・佐藤さんとの共同研究がいよいよ組版され,公表された.

Sato, T. and K. Watanabe. In press. Do stage-specific functional responses of consumers dampen the effects of subsidies on trophic cascades in streams? J. Anim. Ecol. DOI: 10.1111/1365-2656.12192 (2013)

「齢によって異なる消費者の機能の反応は,川の栄養カスケードに対する系外資源流入の効果を抑制するか?」

一般に栄養カスケード(玉突き効果)などを評価するための多栄養段階の実験的研究では,1つの栄養段階の構成を均一化することが多い(例えば,アマゴの体サイズを揃える).しかし野外個体群では当然異なる齢やサイズの個体が社会的関係を持って群集の中に存在している.

そこでこの研究では,2段階の体サイズのアマゴを実験に用い,ハリガネムシの宿主操作を想定した3つの系外資源流入量に関する条件のもとで,栄養カスケードの程度がどのように変わるかを定量化し,そのメカニズムをアマゴの行動解析によって明らかにしたというもの.

結果は,サイズによって機能の反応が異なることや社会的相互作用の結果,系外資源流入が栄養カスケードを弱めるという効果は,通常レベルの資源流入条件では抑制されることがわかった.生態系の構成要素である個体群内の社会構造の効果を無視してはならない,という結論.さすがにハリガネムシ効果的にドバっと資源流入がある場合には,栄養カスケードは弱まる.

佐藤・渡辺(2004:魚類学雑誌)以来10年後の成果として,この研究の実現に貢献した皆さんに感謝.特に調査地の和歌山研究林,グリーンハウスの提供者,土方要員,この分野の先駆者である故中野繁氏ほか...