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「強く、重く、でも悲しみを背負った声」
声の鋼鉄に、内面の激情がこもっている。ヘルデン・バリトンは、まさにそんな存在。
ドイツ語で「英雄的バリトン」(Helden=英雄、Bariton=バリトン)を意味し、主にドイツ語圏のオペラ、特にワーグナー作品において活躍する。
声質はバス・バリトンに近く、厚みのある低音域と突き抜けるような高音域を兼ね備える。
鋼のように力強く重厚な声は、どれほど大編成のオーケストラであっても決して埋もれない。
硬質で英雄的な響きには張り詰めた緊張感があり、聴く者に戦士のような威厳と、内に抱える葛藤を感じさせる。
一般的なバリトンよりも低音から高音まで幅広い音域をカバーし、力強さと高音の伸びやかさを両立させる高い技術が求められる。
そのため声の芯が太く、長時間にわたる激しい歌唱にも耐えるだけの持久力が必要とされる。
ヘルデン・バリトンが演じるのは、神や英雄、呪われた者といった、精神的にも肉体的にも圧倒的な存在感をもつキャラクターが多い。
彼らは単なる“強さ”だけでなく、威厳、悲劇性、そして内面に秘めた深い苦悩までも表現することが求められる。
ワーグナー作品において、命を削って戦うような男たちの声には、まさにこの声種でしか描けないドラマがある。
代表的な役例
ヴォータン(ニーベルングの指環)
さまよえるオランダ人(オランダ人)
タンホイザー(ヴォルフラム)
パルジファル(アムフォルタス)