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まだ夜明け前のセビリアの街。広場の左手にはバルトロの家があり、その家のバルコニーには小さな鎧戸がある。フィオレッロはランタンを手に、さまざまな楽器の奏者たちを引き連れて舞台に現れた。やがて、マントに身を包んだ伯爵も静かに姿を現す。
広場に響くのは、フィオレッロと合唱団の静かな声。楽器の音に乗せて、アルマヴィーヴァ伯爵は慎重に歌う。まだ街は眠りの中で、誰の邪魔もなく、彼の思いはただ一人の女性――ロジーナに向けられていた。
伯爵は空を見上げ、夜明けを告げる朝焼けに思いを馳せながら、フィオレッロに問いかける。「あの人は、もう目覚めたのか?」
しかし、フィオレッロは首を振る。夜はまだ明けたばかりだという。伯爵の胸には期待と焦燥が入り混じる。街の静けさの中で、伯爵はひそかに準備を整え、ロジーナに会える日を待つことを決意する。
首にギターをかけたフィガロが登場。セビリアの何でも屋である彼は、街中の人々を相手に日夜忙しく働く。その生活は慌ただしいが、彼にとっては喜びの連続だった。理髪師であり、カツラ職人であり、外科医であり、薬屋であり――彼の手にかかれば、街の人々の望みはすべて叶う。
そんなフィガロの目に、伯爵の姿が飛び込む。二人は互いに気づき、すぐに理解する。伯爵は、ロジーナに会うためにここに来たのだ。しかし、彼女に自分の身分を知られず、静かに愛を告げたいと考えている。
ロジーナは広場を見渡しながら、まだ思い人が現れないことに焦る。彼女は紙片を取り出し、伝えたい思いをしたためていたが、うっかり落としてしまう。それを拾った伯爵は、フィガロと共に計画を練る。
彼女の後見人である老いぼれバルトロは疑り深く、金と権力を狙う人物。伯爵は彼に悟られず、ロジーナと結ばれるためには知恵を絞らねばならない。
フィガロはすぐに妙案をひらめく。伯爵は兵士に変装し、街の連隊の宿泊命令書を使ってバルトロの家に入り込むのだ。この計画で、伯爵はロジーナに近づき、愛を伝えるチャンスを得られる。
やがて朝が来る。リンドーロ(伯爵)はギターを手に、ロジーナに向けて愛の歌を奏でる。彼の歌声はバルコニーの奥にいる彼女の心に届き、互いの気持ちが交錯する瞬間が訪れる。
しかし、突然ロジーナの窓は閉ざされ、伯爵の胸には焦燥が広がる。フィガロは冷静に助言し、伯爵のために知恵を働かせる。
二人の心は、愛と情熱で満たされていく。伯爵は、金貨を用意したフィガロの計略に心から感謝しつつ、ロジーナと結ばれる未来を夢見るのだった。
ロジーナはドン・バルトロの家の自室で、手に手紙を握りしめていた。心の中には、リンドーロ(伯爵)の声が響き、すでに深い想いで満ちていた。「あの人は、必ず私のものになる」と決意を新たにするロジーナ。しかし、後見人の厳しい監視をくぐり抜けるには、知恵を働かせるしかない。表向きは従順でおしとやかに振る舞うが、もし触れようものなら、百の罠を仕掛ける覚悟もあった。
そんな中、機知に富んだ若き理髪師フィガロが現れる。ロジーナの退屈な日々を笑いに変え、そっと彼女の心をほぐしてくれる。だが、後見人バルトロの足音が迫り、二人は再会を先送りにせざるを得なかった。
バルトロは相変わらず怒鳴り声を上げ、家中を混乱させる。ロジーナに会った理髪師のことを知りたくてたまらない。従者のベルタやアンブロージョも、彼の勢いに押されてうまく答えられない。そんな騒ぎの中、バルトロの友人ドン・バジーリオが訪れ、アルマヴィーヴァ伯爵の存在を密かに告げる。ロジーナの愛をめぐる陰謀が少しずつ動き始める瞬間だった。
伯爵は大胆な計画をもって現れる。騎兵の姿に扮し、バルトロの注意を引きつける間に、ロジーナへ手紙を渡す作戦を実行。巧みに罠を仕掛け、バルトロの目の前で二人の愛を交わす証をやり取りすることに成功する。ロジーナの愛は報われ、心は安堵で満たされる。
しかし、バルトロは諦めず、手紙や便箋の数を数えては激怒する。「一体何を企んどるのや!」と怒り心頭。しかし、ロジーナは冷静で、巧みに事態をやり過ごす。バルトロが手を出そうとするたび、二人の愛は一歩ずつ進んでいった。
騒ぎの最中、伯爵とロジーナ、フィガロは一致団結してバルトロを翻弄する。ついには町中にまで響き渡る騒動に発展し、警察が駆けつけるほどだった。しかし、伯爵は自らの権威と許可証を示し、堂々と家に留まる権利を主張する。バルトロは怒りを抑えきれず、杖で脅すが、伯爵は動じず、戦いの構えを崩さない。
ついに、ロジーナと伯爵は互いに心を確かめ合い、百の障害を越えて愛を結ぶことに成功する。フィガロや従者たちの協力もあって、バルトロの執拗な干渉も無力化される。家の中は騒然としながらも、愛と知恵が勝利する瞬間を迎えるのだった。
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