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月が静かに川面を照らし、神殿の巫女たちが祈りの準備をしている。明日はエジプト軍の進軍。人々は戦の行方を案じている。
夜の神殿前。巫女たちが女神イシスに祈りを捧げている。婚礼を翌日に控えたアムネリスが現れる。ラダメスとの永遠の契りを祈願するためにイシスの神殿を訪れた。また、彼女は明日の戦いに出陣するラダメスに会うため、この場に来たのだった。
アイーダが注意深く辺りを見回してると、物陰から父・アモナズロが現れる。
「娘よ、今こそ祖国を救う時だ」
アモナズロは、アイーダの恋を利用し、ラダメスからエジプト軍の進軍経路を聞き出せと言う。アイーダは拒みながらも葛藤する。
そこへラダメスが現れる。戦の前夜、彼はアイーダと共に自由に生きる夢を語る。だが、アイーダは試すように問う。
「本当に私と逃げたいのなら、敵がどこから来るか教えて」
ラダメスは、何も疑わずに「ナパタの道を通る」と答えてしまう。
ラダメスがふと漏らしてしまった「ナパタ峡谷」の名。
その言葉を聞いたアモナズロの目が光った。彼は前へ進み出て、口元に笑みを浮かべながら叫んだ。
「ナパタ峡谷か!そこに我が軍勢を導こう…」
ラダメスの顔色が変わる。
「なぜその言葉に反応を…?誰だ、お前は……!?」
アモナズロは堂々と名乗りを上げた。
「アイーダの父にして、エチオピアの王だ」
一瞬、世界が止まったかのようだった。
「お前が……アモナズロ……王だったのか……!?
神々よ!私は……なんということを口にしたのだ……!」
動揺に満ちたラダメスは、現実を否定するように呻く。
「違う!そんなはずはない!これは夢だ……迷いごとだ……!」
アイーダが慌ててラダメスに寄り添う。
「ああ、違います!落ち着いて……どうか、私の言葉を信じて……」
アモナズロは説得を試みる。
「お前にアイーダの愛があるなら…
その心に従えばよいのだ」
アイーダも真剣な眼差しで訴える。
「どうか、私の愛を信じてください」
アモナズロはさらに言葉を重ねる。
「我が王座を、お前に捧げようというのだ」
しかし、ラダメスは深い自己嫌悪に沈む。
「私は……名誉を失った……!
あなたのために、祖国を裏切ってしまったのだ!!」
アイーダが懸命に止めようとする。
「いいえ、そんなことない……!お願い、落ち着いて!」
アモナズロはそれを否定する。
「いいや、お前に罪はない。
それは運命の意志だったのじゃ」
だがラダメスは叫ぶ。
「名誉を失った……!!」
アイーダの声も、アモナズロの声も、届かない。
アモナズロはついに決断する。
「よいか、ナイルの向こうでは我らの忠実な兵たちが待っておる。
そこでは、お前の心の願い、愛が叶うだろう。
来なされ……来なされ……来なされ……!」
アモナズロはラダメスを連れて行こうとする。
そこへ突然、神殿の中からアムネリスと祭司長ランフィス、そして衛兵たちが現れる。
アムネリスはラダメスを指さし、声を張り上げた。
「裏切り者!!」
アイーダも息を呑む。
(私の恋敵が現れた…!)
アモナズロは短剣を抜き、アムネリスに向かって突進した。
「わが企てを破るとは…死ねッ!!」
だが、ラダメスがとっさに割って入る。
「やめろ!分別のない行いはやめてくれ!」
間一髪、アムネリスは救われた。
アモナズロは悔しさに顔を歪めた。
「チッ……忌々しい!」
ランフィスが即座に叫ぶ。
「衛兵たちよ、ここだ!捕らえよ!」
ラダメスはアイーダとアモナズロに向かって
「急いで!逃げろ!今すぐだ!」
アモナズロはアイーダの手を引き、闇の中へ姿を消す。
「来い、娘よ!」
ランフィスの声が響き渡る。
「追え!逃すな!!」
だがその時、ラダメスは剣を捨て、一歩前に出た。
「……祭司長、私はあなたのもとにこの身を預けましょう」
彼は、自らの過ちを認め、逃げることなく、静かに司祭たちの前に跪いた。
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