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Ellens Gesang III(エレンの歌 第3番) D.839
「III」はローマ数字で「3番目」を意味し、ドイツ語では「drei(ドライ)」と読む。
タイトルの意味は「エレンの歌 第3番」
作曲年:1825年(シューベルト28歳)
作品番号:D.839
詩の出典:ウォルター・スコット作『湖上の美人(The Lady of the Lake)』のドイツ語訳
Ellens Gesang III(エレンの歌 第3番)」は、シューベルト作曲のドイツ語歌曲。
通称「アヴェ・マリア」として知られるが、実際はカトリックの祈祷文「アヴェ・マリア」ではなく、スコットの叙事詩『湖上の美人(The Lady of the Lake)』に登場するEllen(エレン)が歌う場面をもとにした作品。
後年、この旋律にラテン語の祈祷文「アヴェ・マリア」が当てはめられたことで、現在の広く知られる形になった。
この叙事詩は1810年にウォルター・スコット(Sir Walter Scott)によって書かれたもので、スコットランドのハイランド地方を舞台にしたロマン主義的な物語。
物語は6つの章(歌)で構成されていて、それぞれに詩的な描写や登場人物の感情が豊かに表現されている
「アヴェ・マリア」として知られる場面は、第3歌 “The Gathering” の中に出てくる。
【状況】
Ellen(エレン)は、父親とともに政治的陰謀に巻き込まれ、敵から逃れて湖畔の隠れ家に避難している。
このとき彼女の母も合流し、疲れた心を癒そうとするなかで、エレンは静かに聖母マリアに祈りを捧げる。
【祈りの内容】
エレンの祈りは、困難や苦しみの中でマリア様の慈悲と守りを求めるもの。
詩は、しとやかで敬虔(けいけん)なトーンで始まり、まるで湖畔の静けさと心の内の祈りが重なるような描写。
当時、シューベルトの音楽はウィーンではまだそれほど広く認知されておらず、出版や収入面で苦労してた。そんな中、彼のパトロンであり親しい友人でもあった歌手ヴェルナー(Baron Franz von Schönstein)のために、スコットの物語詩『湖上の美人』を題材とした連作歌曲(全7曲)を作曲。
実際には、スコット原作の詩のこの場面には「アヴェ・マリア」という言葉は登場しない。
しかし後にフランツ・シューベルトが、アダム・シュトルクによるドイツ語訳に基づいて曲をつけた際、その第3曲が
「Ave Maria! Jungfrau mild!」(アヴェ・マリア、優しき乙女よ)
というフレーズで始まっていた。
この冒頭の印象的な詩が広く親しまれ、やがてこの曲全体が通称として「アヴェ・マリア」と呼ばれるようになった。
のちにラテン語の「アヴェ・マリア」の祈祷文を当てはめた編曲が広まり、宗教音楽風の作品として結婚式や葬儀などで広く歌われるようになった。
本来の意図とは異なる形で親しまれ、「シューベルトのアヴェ・マリア」として誤解込みで世界中に知られる名曲となった。
📝 1. 原曲はラテン語じゃない
シューベルトが作曲した《Ellens Gesang III(エレンの歌 第3番)》の詩は、英語の叙事詩『湖上の美人』のドイツ語訳で、ラテン語の祈祷文《アヴェ・マリア》とは無関係。
🎵 2. 冒頭の「Ave Maria…」が有名すぎた
曲の出だしがあまりにも荘厳で美しく、「アヴェ・マリア」と繰り返すフレーズが祈りのように響く。
その印象から、本来の詩を無視してラテン語の《アヴェ・マリア》の祈祷文を乗せて歌うアレンジが一般化していった。
💒 3. 利用される場が“宗教儀式”っぽい
結婚式、葬儀、クリスマスミサ、追悼式など──
宗教的な場でよく使われる=宗教音楽だと誤解されやすい。実際は「宗教っぽく聴こえる歌曲」
つまり、「シューベルトのアヴェ・マリア」は…
本当は芸術歌曲(リート)
でも、宗教音楽風に使われて有名になった
現代では“なんちゃって宗教音楽”として親しまれている