読書は時空を越えることができます。
合ったことがない歴史上の人物と出合い,見たことがない未来や宇宙,深海を見ることができます。
また,体験したことがない冒険や恋愛も経験できるのです。
1冊の本との出合いが人生を変えることもあります。人生観を広げ,深めることができます。
そんな本との出合いのきっかけをつくるために,このページ「こんな本と出合ってきた」をつくりました。
この中の1冊が,あなたにとって素晴らしい出合いになることを願っています。
大阪大学総長の鷲田さん,神戸女学院大学の内田さん,本願寺派住職の釈さん。大阪市長の平松さんが教育についての座談会を本にしたものです。結論から言えば,この本はとても面白く,多くの情報を得ることができました。久々の最高評価本です。教育について,4人の方が違ったアプローチで迫りながらも,現在の教育をなんとかしなければという思いが伝わってくる内容です。読みながら,マーカーを入れていきました。大いに参考になりました。
その一部分を以下に紹介します。
〈以下引用〉
鷲田「何を教えたが問題ではなくって,たたずまいを教えた,スタイルを伝えたってことなんですよね。それでいいと思うんですよ。」
内田「教師というのはすごい打率が低いわけで。1割もいかない,8分5厘とか,それぐらいの打率なんですよ。でもに,それでいいと思うんです。「教育力」があれば打率8割とか9割になって,教えた生徒がみんな賢くなるなんて,そんなことがあるはずがないんですよ。」
平松「1割もないけれども,それが将来どっかで大きい花を開いて,その何分何厘かのもとにいろんなものが結集してくるというような,そんな社会を目指さんとあかんわけでしょ。」
〈引用終わり〉
(2011年4月)
太平洋戦争末期に,このような特攻隊があったとは知りませんでした。
伏龍隊という,海に潜って敵の上陸艇を海中から棒機雷で突くという作戦部隊です。
敵の艇は爆破できますが,もちろん海中の兵士も木っ端みじんとなります。
この本は,その部隊に配属された若い兵士が訓練を通して,死ぬことへを覚悟する過程を描いています。
戦争小説ですが,敵との戦いは描かれていません。
それよりもところどころに笑いもあります。
しかし,本当の戦争もこういった部分はあったと思います。
戦争という特殊な時代を生きた若者の姿を現代感覚で描いています。
今までとはひと味違った戦争小説です。 (2011年4月)
分かりやすく説明するための44のルールが,具体例を挙げながら書かれています。
この44個のルール中で参考になるなと思ったものは,5つ程度でした。
1つは,接続詞の「が」,テーマ出しの「は」は使わない。
2つは,主語と述語は近くに置く。
3つは,動きを表す名詞は動詞に変換する。
4つは,具体的な動作を表さない動詞は使わない。
5つは,英語はなるべく日本語にする。
初心者にとっては,もっと参考になるルールも多いと思います。
私は,野口芳宏先生から話術を学んだこともあり,この本から得られたルールは少なくなったのだと思います。
しかし,5つめの英語はなるべく日本語にすることは,その通りだと思います。トップダウンで現場に降りてくる政策やキャンペーンなど,本当に英語(カタカナ)が多いです。例えば,キャリア教育,マネジメント,PDCAサイクル,グランドデザインなど挙げればきりがありません。英語やカタカナにすれば,一言で済むからいいと思っているのでしょうか。それとも,単にかっこよく見えるからでしょうか,日本語だと堅苦しく捉えられてしまうからでしょうか,いずれにしても,もっとわかりやすい日本語でお願いしたいものです。鈴木孝夫さんも言っていたように,「言葉を大切にしない国は滅びるのです。」 (2011年4月)
重松清さんも子供や学校を扱った小説をよく書かれます。
私も重松さんの本はいつも注目していて,よく読んできました。
石田さんがこの本で描いた学校は,さわやかさがとても印象に残りました。
その理由は,主人公である教師,中道良太が実に清々しいからだと思います。
嫌みがありません。どことなく,テレビドラマ「スクール」の校長だった江口洋介さんに近いものがあります。
日曜日の夜は,明日から学校が始まるためどことなく気が重くなることもありましたが,あのドラマを観ると学校に行きたくなりました。
この本も読後,学校っていいな,教師っていいなと思いました。
そんな,元気をくれた1冊でした。全国の先生たちに日々の仕事で疲れたら,この本を読んで欲しいと思います。 (2011年5月)
絵本「100万回生きたねこ」の作家である,佐野洋子さんの自伝小説です。
ストーリーは,呆けてしまった母親の人生と自分の人生を重ねあせて進んでいきます。
子供の頃から母親を憎んでいた洋子さんですが,呆けた母親と接するうちに,母親の愛情に気づいていきます。
そして,ラストへ。
きれいな言葉で自分の文を着飾らせず,本音の言葉が印象的でした。
最後の10ページで涙が出てきました。
自分の父親と重なって見えたのかもしれません。
昨年,亡くなった父親の愛情に気づかないまま,遠く離れてしまいました。
50歳を間近に控えた今,父親の生き方や考え方を理解しようと思い始めています。
久々の最高評価本となりました。
きっと映画化されることでしょう。 (2011年5月)
この本の副題は,校長先生たちからの心を揺さぶるメッセージです。
2011年は,我々日本人にとって,忘れることができない年になりました。東日本大震災が起こったからです。
この年行われた全国の卒業式では,おそらくこの話題が取り上げられたことでしょう。
特に震災の中心部だった岩手県や宮城県,福島県では特別なメッセージが校長先生から伝えられたと思います。
この本では,校長先生から,未来の日本を築く子供たちへ告げられた熱いメッセージが11本掲載されています。どれも私の心に響いた理由は,本音で語られているからです。
特に響いたのは,立教新座中学・高等学校の渡辺憲司校長先生の話です。
「巣立ちゆく立教の若き健児よ。日本復興の先兵となれ。」
この言葉に背中を押された生徒も多かったはずです。言葉のチカラというものを再認識しました。 (2011年5月)
喜多川さんの本は,以前「手紙屋」を読んで以来,久しぶりとなります。
喜多川さんの本は幸せな生き方について,とても分かり易くしかもドラマチィックに書かれています。
この本も,ファンタジー的な物語ですが,とても示唆に富んでいます。
例えば,第一の賢者はこう言います。
〈引用始まり〉
「とにかく行動を起こすのだ。よいか,それによって何が返ってくるのかを気にして,怖がる必要も,また期待する必要もない。手に入れたときは嬉しかろう。また,期待はずれっだったら辛かろう。しかし,大いなる力が絶対に必要なものをお前に分けてくれているのだという事実を忘れてはならない。」
〈引用終わり〉
生徒にも語ることができそうな話もありますので,ちょっとアレンジして語ってみようかと思います。(2011年6月)
教育界では,10歳というのが学びの臨界期という認識が広く知れ渡っていました。
つまり,学力を身につけさせるためには,10歳までが勝負であるということです。
この10歳という時期を心理学的に迫ったのが,この本です。
特に参考になったのは,道徳性の変化という章です。
9歳・10歳の時期の子どもについて,次のようにまとめてありました。
〈引用始まり〉
自分以外の人の立場に立てるようになり,第三者や集団,社会といった視点も理解できるようになります。また,公平や権威といった概念の背景にある意味について悟るようになり,具体的な能力や貢献度といったことを重視しますが,みんなのために考えてくれる人といった公についての理解も深まってきます。
〈引用終わり〉
子どもの道徳性の発達段階をしっかりと理解しておけば,それに対する効果的に道徳授業ができるのではないでしょうか。
中学校教師にも是非,読んでもらいたい1冊です。(2011年6月)
おおよそ,新聞の社説は堅苦しくて気合いを入れて読むものだと思っています。
読んだからと言って,心に残るものでもありません。
社説は,その新聞の顔だという話も聞いたことがあります。
しかし,この本に載っている社説は,どれも心に響くものばかりです。
その理由は,水谷さんの眼差しがとても優しいからです。
まだまだ,この世の中捨てたものではありません。
是非,多くの人にこの本を読んでほしいと思います。オススメの1冊です。 (2021年7月)
もともとは幼児教育での大切なことを1日1つ伝えてくれる日めくりです。
しかし,読んでみると幼児教育に留まらず中学生にも十分使えるメッセージもあります。
例えば,
〈引用始まり〉
●「いただきます」「ごちそうさま」
■食を通じて宇宙とつながる
手を合わせて言う動作,自分と食事に関わる全ての事柄がつながり合わさることを意味します。
親指にはご先祖様・お父さんなどと言う意味があるので,親指を見て言うことで,周りの方への感謝の心が育まれます。
食べ物への感謝の気持ちと共に,人とのつながり,世界とのつながり,宇宙とのつながりの中で自分が生きていることを感謝出来るのです。
●目を見て「あいさつ」してるかな?
■「あいさつ」は人とのつながり・結びつき
目を見ることは相手を認め,信頼関係を結ぶ第1歩になります。朝一番の「おはよう」は,1日の清々しいスタートがきれますよ。
沢山の「あいさつ」を探して声を出してみましょう!きっと,新しいつながりや,お友達とい出会えますよ。
〈引用終わり〉
この他にもたくさん,中学生に語る時の大きなヒントをもらいまいした。(2021年7月)
被爆県である長崎県では,ほとんどの学校が8月9日を登校日としています。
原爆投下の日だからです。
私が子供の頃もこの日,登校し暑い体育館の中で校長先生の話を聞き,11時2分のサイレントに合わせて黙祷をしていまいした。
教師になってからは,生徒会担当として,この日に合わせて生徒会役員と一緒に平和集会の準備をしたこともあります。
校長先生の話や同じような資料を読むだけの平和学習を何とか変えたいと思っていたからです。
ちなみに,その頃やったことは,
・生徒会役員と一緒に長崎の平和公園へ行き,訪れていた外国人に平和についてのメッセージを書いてもらう。
・長崎の浦上にある原爆病院に行き,被爆者にインタビューをする。
・千羽鶴を折って,平和公園に供えることもしていましたが,折るだけではなく,折る前に裏の白い部分に平和に関する自分のメッセージを書かせる。
・修学旅行の学年全体の取り組みとして,平和に関する詩をつくり,それを生徒一人に1文字ずつ陶板に書き,釜で焼成してもらいました。その陶板を鹿児島の知覧にある平和記念館に供えることもしました。その際,国語科の先生に指導してもらい,その詩を館内で学年全員で大きな声で群読をしました。
最近の平和学習に対して,どことなく受け身的な印象を持っています。
そうではなく,平和のために自分が何ができるのか,能動的な平和学習が大切だと思っています。そのためには,教師自身が偏った戦争観を持つのではなくいろいろな本を読み世界に通用する誇りある日本人として生徒を育てていくべきだと思います。
その参考になった本がこの本です。8月9日を迎える前に一人でも多くの教師に読んでもらいたい1冊です。(2021年7月)
ついに吉田松陰先生が斬首されてしまいました。
このマンガでは,この後どうなったかを詳しく書いてあるので,とても勉強になります。
この後,桂小五郎や伊藤俊輔(のちの博文)たちが遺骸を引き取りにいくのですが,殺された松陰先生は全裸だったため,身体をしっかりと拭き清め,小五郎たちの服を着せたそうです。
斬られた首と胴体をつなぐことは許されなかったため,自分の首を自分でかかえるようなポーズで納められたそうです。
墓も罪人にはつくれないため,遺骸を埋めた上に自然石を置くだけの粗末なものだったそうです。吉田松陰先生が生きていれば,日本の歴史は大きく変わっただろうと言われています。
最後に即興でつくった詩が載せてありました。
吾今為国死(われいまくにのためにしす)
死不負君親(ししてくんしにそむかず)
悠々天地事(ゆうゆうてんちのこと)
鑑照在神明(かんしょうみょうじんにあり)
私は,今国のために死んでいきます。
これまでの私の行為は天子,良心にそむいていない。
悠久な天地の間で行われる行為は,すべて神のみが知っていることである。
私の忠誠も神のみぞ知ることである。吉田松陰先生,享年三十歳。早すぎる死でした。
(2021年8月)
昨日から,お盆休みに入っています。
午前中は,法事のために出かけ,午後は,妻に頼まれて換気扇の油汚れを徹底的に掃除し,夕方は破れた網戸の修理をしました。
その合間をぬって,この本を読破しました。
いつもながら,門田さんの取材力には驚かされます。
この本は,アメリカで生まれ日系二世でありながら学徒出陣し,特攻隊として亡くなった松藤大治(まつふじおおじ)さんの23年間の人生の記録です。
国籍はアメリカである松藤さんが,どうして母国を敵として特攻したのかを綿密な取材を元に描いてあります。
生前,松藤さんはこう語っていました。
「日本は戦争に負ける。でも,俺は日本の後輩のために死ぬんだ」
また,松藤さんの戦友である大之木英男さんは,生き残っておられ,次のように話されています。
「私たちは,たまたま1945年というあの時に軍人であり,若者でした。それは運命であり,国や家族を守るという使命や責任から,逃れようとは思いませんでした。松藤も同じだったと思います。私は,戦友たちの死を無意味だったとか,可哀想だったとか,そういうことは言って欲しくないんです。ただ,ご苦労さん,よくやった,とだけ言ってやって欲しいです」
彼らが命をかけて守ってくれたこの国のことをどれだけ考えているのでしょうか。受け継いだこの命を大切にしているのでしょうか。もし,戦死した人たちが,今の日本の様子を見たら何と言うでしょう。
胸を張って,「皆さんの死は無駄でありません」と言えるでしょうか。
そんなことを考えた,素晴らしい本でした。(2021年8月)
以前から,曽野さんの教育についての発言に注目してきました。
その発言が,この1冊にまとめられています。刺激的な本音がたくさん書かれています。
子供は基本的にみんないい子だと考えている人は,この本に抵抗を感じるでしょう。
しかし,私は,曽野さんの意見に賛成です。例えば,次のような発言です。
〈引用始まり〉
・子供たちは,死とは何か,人は死ぬとどうなるか,という現実に少しも深く係わることなく,死を他人事として済まして大きくなる。
・今の親や先輩や教師は,いったい何をやって来たのだろう。彼らは子供からよく思われることだけを念願して,鍛えもせず,怒りもしなかった。
・親は子供が生まれた瞬間から,刻々と別離へ向かって歩き出す用意をしなければならない。親が子供にしてやれる大きな事業の一つは,いつか別れることを上手にやってのけることなのである。
・戦後の教育は個性の形成,自由を行使する権利だけを教えた。教育は自発的にしたいことだけしかさせてはならない,と今でも信じて疑わない人がいる。
〈引用終わり〉
きれいごとではない言葉が響きました。
曽野さんは,日本という国や子供たちの将来を心配されています。だから,ここまで本音で語っておられるのだと思います。(2021年8月)
ちょっと前から,塾や予備校の先生の授業に興味を持ち,一度でいいから,その授業を見たいと思っています。
予備校の授業で,涙を流す生徒がいることに驚いたからです。
この本の著者も,代々木ゼミナールの英語講師です。
いわゆるカリスマ講師だそうです。
さて,そんな理由から学校の図書室にあったので,何気なくページをめくっていたら,生徒に語りたい言葉がいくつかありました。ここでちょっと紹介します。
〈引用始まり〉
・make a differenceは,違いをつくるという意味ではなく,重要という意味。ほかとの違いがあることが「重要」なのだ。
・潜水艦が沈没した場所を突き止める推論させる時,設計者,操縦者,地理に詳しい人などの各専門家を集め,彼らの専門分野からそれぞれに推論させる。合同で議論することはない。合同議論することではなくて,一人ひとりが他から分離され,孤立した形で推論させる。彼らの考えすべてを材料にして,総合的に判断する。そうすれば,沈没した位置がかなりの精度で特定できる。どんなに些細なことでも「いびつなもの」でも,自分だけの自信もかけらを寄せ集めたものが問題解決の鍵となる。
〈引用終わり〉
西谷さんも,この本の中で書かれていますが,授業というのは,自分の人生を語ることであり,生徒に影響を与えることなのです。
これは,我々公立学校の教師にも同じことが言えるのではないかと思います。(2021年8月)
最近,鈴木孝夫さんの本を読みたくて,ネットで探して購入しています。
古本なので,とても安い価格で買えるものもありますが,貴重な本は,定価の2倍以上の値段がついています。
この本も(初版は平成3年6月),ネットで90円でした。
送料を加えても定価より安いのです。
この本は,ことばを中心に,歴史,教育,国際化,国家,生き方について独特な視点で論じてあります。
とても面白く,説得力があるのです。
例えば,
〈引用始まり〉
・日本の漢字語の多くは意味論的透明性を持っているというのです。
・英語はたしかに必要なんだけれど,英米人も苦労して聞いたり,彼らが努力しなきゃわからないような英語でもいいんです。
・日本だけが逆の国際化をやっているのである。つまり,自分を捨てることが国際化だと思っている。
・強く固い自己完結性に裏打ちされたアイデンティティを未だに持っていない日本人が,このように急激な,そして開かれた国際化の過程で無定見に行動すれば,アイデンティティの崩壊ないしは拡散という好ましくない事態になるのではないかということである。
〈引用終わり〉
これからもしばらくは,鈴木先生の本を探して読みあさろうと思います。(2021年8月)
宇宙ものが好きでいろいろな本を読んできました。
と言ってもSFは全く読んでいません。
読むのは宇宙もののノンフィクションです。
例えば立花隆さんの「宇宙からの帰還」とかジム・ラベルさんの「アポロ13」とか松井孝典さんの「宇宙誌」などです。
さて,今回読破した本は,ソ連とアメリカの宇宙開発競争を描いたノンフィクションです。
歴史的に宇宙開発は2国間の熾烈な競争となっていますが,実は2人の科学者の競争だったのです。
ソ連のコロリョフとアメリカのフォン・ブラウンという科学者です。
この2人の人生を描いたものですが,とても感動しました。
新書とは思えないほどのドラマチックな展開です。映画化してもおかしくないほどです。
この本の最後の部分を紹介します。なかなか感動する終わり方です。
〈引用始まり〉
一九七七年六月一六日,ヴェルナー・フォン・ブラウンは,アレキサンドリア病院の一室でその炎の生涯を閉じた。享年六五歳。宇宙への早すぎる旅立ちであった。」
〈引用終わり〉
(2011年10月)
今日は,自宅でゆっくりと過ごしました。
こんなにゆっくりしたのは,何ヶ月ぶりでしょうか。
先週は腰の痛みがありましたので,今日はソファに寝そべって読書をしました。
読書の波が去っていて,ほとんど読んでいませんでしたが,やっと読破しました。
重松清さんの新刊です。
テーマは,「いじめ」です。
小説の中の小説という形をとり,いじめで苦しむ子供たち,子供をなくした親の救いを描いています。
重松作品に登場した人物も出てくる不思議な世界です。
最後まで,この世界にすんなりと入り込むことができませんでした。
しかし,重松さんのメッセージは次の部分だと思います。
〈引用はじまり〉
「生きてほしい…ずっと,ずっと,生きていほしい…夢なんかなくても,優しくなくても,正義の味方なんかじゃなくてもいいから,生きていれば…明日,夢が見つかるかもしれないし,明日,自分が自分であるという誇りが持てるかもしれない。それでいいんだよ」
「生きるっていうのは,なにかを信じていられるっていうことなんだよ」
〈引用終わり〉
この本の中で「想像力」という言葉がよく出てきます。
想像力とは,生きる力であると思います。
想像力とは,苦しいことを我慢できる力だと思います。
想像力とは,未来を変える力だと思います。
重松さんは,こう書いています。
「大切なのは,想像力です。信じることも想像力です。」と(2011年11月)
弁護士は語りで勝負というところがあります。
テレビドラマの「リーガルハイ」の弁護士みたいなおしゃべりはいないまでも,この本には語りのうまさの弁護士が紹介されています。
例えば,大阪空港訴訟の木村保男弁護の語りです。
その一部を紹介しましょう。
〈引用始まり〉
「地元の人々は騒音とは言わない。爆音,激音,轟音,痛音。口々に訴える。表現は異なっても,その音が頭からおおいかぶさり,おそいかかり,のしかかり,おさえつけ,耳をろうし,身体をすくませ,腹の底をえぐり,頭をなぐりつけ。心臓をしめつけ,動悸を早め,精神を異常にする狂気の音であることは変わりない。(中略)人々は言葉を奪われて沈黙する。やがて,沈黙は憤りに変わる。人々は相語らい,励まし合って,市役所,県庁にその苦しみを訴え,空港,運輸省にその怒りを投げつけた。」
〈引用終わり〉
この文を読んだだけでも,被害者の苦しみが伝わってきます。まさに語りのプロです。
この他,阿部定事件や足利事件を担当した弁護士たちの熱い語りが紹介されています。
下手な小説よりも面白い1冊です。(2011年11月)
この本は,東日本大震災の救助や支援活動で活躍した自衛隊の姿を描いたルポです
。自衛隊については,賛否両論あります。もし自衛隊がなかったら,こういった大災害の時に,誰が救助してくれるのでしょうか。彼らの姿こそ,滅私奉公という言葉がふさわしく感じます。自衛官の中には,家族の安否がわからないまま,救助に向かった人もいました。また,命令がなくても自らすすんで現地に行くという自衛官が大勢いたそうです。この本の中から1つのエピソードを紹介します。
〈引用はじまり〉
(気仙沼・大島で)
「もうすぐ卒業式があるのですが,まともにはできそうもありません」
群司令は島民がこぼした一言が気になっていた。
「そうだ!」と思いついたのは,「艦上卒業式」。ひそかに準備が進められ,迎えた当日,隊員手作りの「祝!卒業」と書かれたリボンと垂れ幕が掲げられた。誰が命じるわけでもないが,隊員が夜遅くまで作業したに違いない。お腹がペコペコだった子供たちは,用意されたカレーライスを大喜びで平らげた。「6杯が最高記録」と聞いて,7杯も食べた男の子,船酔いしながら無理して食べた子もいた。久しぶりに艦内に笑い声がこだました。悲しみを乗り越えて,成長していく子供たち。くじけそうになったら,艦上で撮った卒業写真を見てほしい。そんな思いで隊員たちは子供たちを見送った。
〈引用終わり〉
(2011年11月)
日垣さんらしい,きっぱりと言い切る文体に気持ちよさを感じました。
なるほどと思える部分が数多くありました。
例えば,付箋の使い方,速読の方法,本選びの方法などです。わかりやすくポイントがついていますから,そこだけ読んでも参考になります。
本選びのポイントを次のように書かれています。
・ネットの「うまい店ランキング」より,同僚の「ランチ情報」のほうが役に立つ。
・ページをめくると,七つの海を越えるがごとき冒険がある。
特に頷いたのは,読書感想文に関する内容です。
〈引用はじまり〉
うすうす感じている方も多いでしょうが,読書感想文を小中学生に書かせるというのは,正気の沙汰ではありません。プロだって面白くないことを,小中学生に強制的にやらせるのは,本を嫌いにさせるための意地悪い技術だとすら思います。学生時代,読書感想文の課題がでるたびに「あらすじ」を書いていたという人は,私の見込みではクラスの八割近くにのぼるのではないでしょうか。
〈引用終わり〉
巻末には,日垣さんが薦める100冊が掲載されていましたので,いくつかを選んで読んでみようと思います。(2011年11月)
今年も,何とか100冊を読破することができました。
市内に転勤してきたため,学校の図書室で新刊が借りることができたことや公的な図書館を利用しやすくなったこともあり,例年になく早いペースで読むことができました。
さて,記念すべき100冊目は,科学の本となりました。
以前から,幽霊や超能力やUFOなどにとても興味がありました。
そこから派生したのが,ニセ科学です。科学的な見せかけだけで金もうけをしている輩がいます。それにダマされる人も多いようです。
血液型占い,マイナスイオン,水からの伝言,ゲーム脳などです。
いかにも科学的ですよとうたっている点が,いやらしいですね。
この本で一番,興味を持ったのが,付録に書かれている「放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち」です。この章は,細胞分子生物学が専門の片瀬久美子さんです。
3.11以降,広がったデマのパターンとその分析を示しています。
例えば,「耳なしうさぎ」や「金魚椿」などです。
確かな根拠がないにも関わらず,不安を増長させ,そこに付け込み金をかせぐ輩がいるのです。
その1つの原因として,国民に科学的な知識が乏しいことがあると書かれています。
少なくとも,我々教師は科学的な根拠がないものを生徒に教えることがないように心がけたいものです。 (2011年12月)
私は,将棋についてまったく知りませんが,この本を読んで棋界の壮絶さを知りました。
この本は,重い腎臓病と闘いながら夢である名人を目指した村山聖(さとし)さんの29歳の生涯を描いたノンフィクションです。日垣隆さんの本で紹介されていましたので,読んでみました。結果,こんなにも凄い棋士がいたことに驚きました。この本に出会えたことに感謝します。久々の★5つ本です。次の最後の文章を読み終わると村山聖さんの写真を見直しました。胸がとてもあつくなりました。合掌
〈引用はじまり〉
村山は夢を目指した。将棋は村山にすべてを与えてくれた。村山の心にはいつも将棋盤があり,その上には果てしない青空が広がっていた。目の前にせまりくる死を見つめながら,村山はその短い人生の最後の最後まで少しも諦めずに,少しもひるむことなくはばたきつづけた。幼い日,一人きりで眠れない夜をすごした病院の固いベッドの上で,息を潜めながら見つけ出した何ものにもかえられない翼。名人への翼を。
〈引用終わり〉
(2011年12月)