200字作文

儀式や行事の後に作文を書かせる教師が多いようです。

例えば,入学式の直後,「中学生になって」とか「中学校でがんばりたいこと」とかのタイトルで原稿用紙(400字詰め)に書かせます。作文の書き方について十分な指導もしないで書かせます。とにかく書かせます。書けない生徒は放課後残って書かせます。これでは,「作文地獄」です。

「200字作文」は,とても書きやすい作文です。生徒も楽しんで書きます。生徒の本音を見ることができます。是非,試してみてください。

0 「200字作文とは」

〈200字作文とは何か〉

この実践は,群馬県の元小学校教師である深澤久先生から学びました。

この作文を書くルールが5つあります。
①マスを空けずにびっしりと書く。
②改行はしない。
③国語辞書を使ってできるだけ漢字で書く。
④200字でおさめる。
⑤日付,タイトル,名前は200字の枠外に書く。

この作文を行う目的は,書く力と要約力を身につけさせることです。
従来ならば,「中学生になって」とか「中学生になって頑張りたいこと」などといったタイトルが多いと思います。
しかし,今回は「私はこんな人になって中学校を卒業したい」というタイトルで,200字作文を書かせました。自分のゴール地点を意識させたいと考えたからです。
いくつかの制約がありましたが,生徒たちは一生懸命に書いていました。

とてもしっかりとした内容で素晴らしい作文です。また,200字にぴったりと収まるようにできています。
書いてみるとわかりますが,これがなかなか難しいのです。書き始めはいいのですが,後半から字数を調整して書かなければいけません。漢字に直したり,読点を入れたり外したりして200字に収めるのです。

1年生全員が,しっかりとした目標を持って,中学校3年間を有意義に過ごしてほしいと思います。

1 題名「こんな人になって卒業したい」(2022年4月9日)第1学年

私は,今の生徒会のみなさんのような生徒になって卒業したいです。こう思い始めたきっかけは,私たちが入学してからの行事の進行や物事に取りかかる姿勢を実際に見た際に,時間を守ったり,前に立ち進行をしっかりと行ったりなど当たり前の事をしていたからです。しかし,それに加えて相手を思った行動をしていた所が素晴らしいと思いました。私は,学校に外で誰も見ていない所でも気を配り行動できる生徒として卒業したいです。

〇ぼくは人に必要とされる生徒になって卒業したいと思いました。中学校生活でいろいろな行事や交流をかわすっ買いがたくさんあると思います。その中で人のために行動したりすることで相手から期待されて次から必要とされる存在となるとぼくは思います。他にも勉強や部活などで困っている人を助けたり地域の人にあいさつをしっかりと行って交流を深めたり,いろいろな方法があるのでこれから実行していこうと思います。

〇私は仲間と共に成長して卒業したいです。一番のゴールは卒業式。1番のハードルは高校受検。これからは113人の仲間と成長していかないとクリアできないと思っています。一人での113歩より113人での1歩を大切にしていきたいです。自分のことばかりでなく,113人と協力し助け合って3年間仲間と過ごしていきたいです。私は仲間を大切にし,みんなでゴールを目指せるような生徒になって卒業したいです。

2 題名「卒業式前夜の気持ち」(2021年4月13日)第3学年

先週,3年生全員に「卒業式前夜の気持ち」というタイトルで200字作文を書かせました。中学校のゴールを意識させて,卒業式までの1日1日を大切に過ごして欲しいと考えたからです。106名分の作文をすべて読みましたが,真剣に考えたことがうかがえる作文が多かったです。

そのいくつかを紹介します。

〇明日は卒業式。中学校三年間,いろんな出来事があった。新しい友達が出来たり,部活できつい練習をしたり,先輩として後輩にお手本を見せたり,初めての受験で緊張したりなどたくさんの経験をした。この三年間で学んだことを次の高校でも生かしていけるように頑張ろう。そして,たくさんお世話になった両親や友達,先生に感謝しながら明日,H中学校を卒業したい。

〇中学校を明日卒業する。中学校で過ごした三年間は,あっという間で,自分が明日卒業するという実感があまりない。この三年間で思い出はたくさん出来た。楽しいことばかりではなかったが,それも含めて良い思い出だ。仲の良い友達も増え,そんな友達と明日離れるのはすごく悲しい。でも,これからは友達と離れて次の生活をしなければならない。だから,夢に向かってこれからも頑張っていこうと思う。

〇明日は卒業式だ。明日で最後のH中学校。また,同じ友達や仲間と集まることは,これで最後となるだろう。少しさみしい気持ちもある。でも,うれしい気持ちもある。明日はどんな式になるのだろう。この三年間,たくさんの思い出があった。良い思い出もあれば,いやな思いでもある。今思うと良い思い出だったなあとあらためて感じる。明日は自分が立派な大人になるための大事な式だ。堂々と胸を張って歩きたい。

読み進めていくうちに,私も明日が卒業式のような気持になってしまいました。また,生徒と一緒に卒業というゴールに向かって頑張ろうという気持ちになりました。

3 200字作文の実際(第1学年) 題名「こんな人になって卒業したい」

4 題名「仲間ぢから」を感じた瞬間

 体育大会のあとで,3年生全員に200字作文を書かせました。題名は「仲間ぢからを感じた瞬間」です。
どんな作文を書くか楽しみでしたが,こんなことを書いてくれました。一部を紹介します。

・ダンスを踊り終えて退場門から出てみんなで泣きました。とっても達成感がありました。新しいダンスを一から考えてくれたSありがとう。
・中学校生活最後の体育大会をこのA中学校で過ごすことができてとてもよかったと思っています。何も知らない僕に一からいろんなことをたくさんの人から教えてもらいました。色別リレーなど大事な種目に出させてもらってとてもうれしかったです。
・初めてで中々うまくいかないなと思っていた時に,他のダンス実行委員のみんながサポートしてくれて一緒に指示を出してくれた時と,その指示を聞いてすばやく動いてくれた1・2・3年の女子を見て,「仲間ぢから」をとても感じました。本当にみんながいなかったら当日あんなに素晴らしい演技はできなかったと思うので,仲間の大切さが分かりました。
・みんなが一つの方向に向かっているみたいで,やっぱり仲間の力ってすごいなと思った。残り少ない行事も仲間のちからで乗り越えたい。
・組体操は一人ひとりが考え力を合わせなければ成功しないと思います。そして失敗するしケガをする人が出ます。それを成功させる事ができたのは仲間ぢからのおかげだと思いました。
・応援合戦の時,泣きそうだった。これまで大変だったけどみんなと楽しくやってきたことが今日で終わってしまうと思うと胸がいっぱいになった。この体育大会が最高の思い出です。
・一番楽しい最高な体育大会でした。これから卒業式へ同じ目標に向かう仲間として団結力を生かして,みんなで進んでいけるようにがんばります。
・学級対抗リレーでは,みんなが声をかけあい励ましあう姿が見られたことが,とても仲間ぢからを感じた瞬間でした。

因みに,この年度の第3学年キーワードは「仲間ぢから」でした。

5 題名「良き敗者」と「悪い敗者」

 市中学校体育大会が終わって考えこと

  市中学校体育大会が終わり,今までの自分を見つめさせるために 200 字作文を書かせ ました。書く内容は,先週発行した学年通心に書いた「良き敗者」と「悪い敗者」につ いて考えたことです。作文の中からいくつかを紹介します。 

・中体会で学んだいろんなことをこれからも生かしていけたらいいなと思います 。そし て「良き敗者」となり自分を高めます。 

・結果は負けたけど「良き敗者」になれたと思う。一つのものを仲間と協力して成功さ せる大切さと感動をバスケをプレーした仲間から教わった。 

・負けても言い訳をせずに自分の原因を見つけ強くな っていきたいです。 

・どんなに点差があっても誰ひとりとしてあきらめませんでした。みんなが声を出して バッターを応援し,野手は投手に声をかけてみんなで戦いぬいたことでとれた1点だ と思います。この中体会であきらめないことを学んだと思います。 

・学年通心を読んで自分を見つめ直すことができました。負けた原因は自分にあると思 う気持ちの方が何倍も強いです。後悔ばかりを残してひきずるのではなく,将来につ ながる何かに変えていきたいと思った。 

・学年通心を見て負けた分だけ強くなれると書いてあり,負けは恥じることではないと 教わりました。 

・負けて悔しいけど後悔しているけど,この経験を次に生かすのが本当の強さ。前を向 いて明日への第一歩を踏み出したいです。

・2年生になると全く勝てずに悩んでいました。でも今回の中体会に至るまでに負けて きたあの経験のおかげで相手に向かっていく姿勢に気づけた。最後は第一シードの人 と接戦をすることができた。そして「良き敗者」となれた。 

6 題名「〇〇さんに(   )賞」

 平成27(2015)年の市中学校体育大会直後に1年生に書かせました。初めての市中学校体育大会でレギュラーとしてベンチとして一般応援として,それぞれの生徒ががんばっていました。試合ですから,勝ち負けがあります。1年生は,それをどのように見たのか,どのように感じたのかを書かせました。

〇僕は男子男子バスケ部の2年生にがんばったで賞を贈ります。相手が3年中心のチームなのに果敢に攻めていく姿がかっこよかったです。目標のベスト8に行けたのがとてもすごいなと思いました。G中には負けてしまったけど点差が離れてもあきらめずにプレイを続けたのでとても感動しました。僕も,相手が点数をリードしていてもあきらめずに最後まで粘って勝てるように頑張ります。

〇ぼくは,山中さんへ笑顔満天アイデア賞を渡したいです。なぜなら,いつもみんなが笑顔でられるような楽しい話をしてくれます。だから,社会の時もとても楽しいです。山中さんと出会って約2か月。最初は怖いという印象だったけど,今はとても面白いという印象が強いです。いつも面白いアイデアでみんなを笑顔にさせてくれる山中さんに,笑顔満天アイデア賞を渡したいです。これからもたくさんの人を笑顔にさせてください。

こんな作文を読むとうれしくなります,教師って本当に素敵な仕事だと思います。

7 題名「野外宿泊活動は(  )点のできだった」

 1年生での最大の学年行事である野外宿泊活動の振り返りをさせるために200字作文を書かせました。

 今回の題名は「野活は(  )点の出来だった」です。みんなしっかりと書いていて,自分と仲間の行動を見つめたことが分かりました。


〇「野活での個人の出来は100点でした。なぜかというと炊さんの後,自分たちの班の片づけが終わって他の班が時間がかかりそうだったので,洗い物を手伝ったり,ゴミがたくさんあったのでゴミを回収して,ゴミ箱に持っていったりして,少しでも誰かが喜ぶようにがんばりました。2日目には,みんなが1日目のことを改善しようとがんばっていたので,自分も少しでもいいことをして,みんなで成功だねと言えるようにしたからです。」


〇「この2日間で,私は誰とでも協力すること,周りの状況を見て自分から行動することの大切さを知りました。飯ごう炊さんでは,失敗もあったけれど,翌日の沢登りではみんなでゴールすることができて,とても嬉しかったです。私が評価で80点にした理由は,仲間が困っていても助けずに遊んでいる人が数人いたので,仲間と成長できたのは全員ではないと感じたからです。これからの行事でも,もっと仲間と成長し最高の思い出を作ります。」


 自分や仲間の行動を点数化することで,しっかりと見つめることができます。これを単なる感想文にしていまうと社交辞令的な言葉を書く生徒が増えてきます。題名を工夫することで,生徒の意欲も高まるのです。行事のあとは,この題名で書かせると面白いです。

 例えば,

「体育大会は(  )点のできだった」

     

「修学旅行は(  )点のできだった」

    

「合唱コンクールは(  )点のできだった」

 などです。

8 題名「来年4月の私」

 3年生最初の200字作文のタイトルを「来年4月の私」としました。
 普通だったら,
 「最高学年になっての決意」とか
 「今年頑張りたいこと」とか
 「私の目標」などというタイトルで書かせることが多いと思います。
 そういったありきたりのタイトルでは,ありきたりの作文しか書かなくなってしまいます。
 生徒が書きたくなるタイトルを提示すれば,真剣に考え,書く意欲も高まるはずです。
 作文のタイトルなんか,どうでもいいと考える教師もいるでしょう。
 しかし,生徒を良い方向へと育てたいと考える教師であれば,こういった細かい点にもこだわるものです。
 さて,その作文を読んでみました。
 2つ紹介します。

3年2組 女子
今,来年の四月を考えると,高校に入学し,これからどういうことが待っているのかと不安や希望を持っている頃だと思う。高校に入学というのも,ただ何となく高校に入って何となく過ごすだけでは面白くない。その高校で何を学んだかでどんな人生を送れるかは,「今」にかかっていると思う。これもしておけばよかった,あれもしておけばよかったと来年の四月に後悔しないように「今」のこの時間をどう過ごすかしっかりと考えて過ごしたい。

3年2組 男子
来年の四月の私は,高校に進学しソフトボールを続けていると思います。来年は,高校に入学し新しい勉強が始まり新しい出会いがあればいいなあと思います。そのためには,一日一日の授業や友達と過ごす時間を大切にしなければならないと思います。先生がおっしゃった事をきとんと聞く,そういう事を続けていくことも成長するために必要だと思います。今,自分が出来ることを一生懸命にやり,来年は立派な高校生になりたいです。

9 題名「修学旅行の目標は(  )%達成できた」

先日無事に終わった修学旅行の学年目標は,

「一致団結〜仲間ぢからを発揮して,忘れられない最高の思い出に〜」でした。

この目標がどれぐらい達成できたか200字作文で書かせました。

与えた題名は「目標は( )%達成できた」です。

生徒一人ひとりが,3日間を振返り達成度を書いていました。その作文からいくつかを紹介します。

○私は修学旅行を通して目標は100%達成できたと思います。理由は3年生みんなの「仲間ぢから」を思う気持ちが行く前に比べるととても強くなっているからです。例えば,行く前までは朝の教室に入っても友達どうしでの「おはよう」の声はあまりありませんでした。しかし修学旅行後の教室は「おはよう」という声が朝からとんでいました。みんなが仲間を思う気持ちが100%になった今だからこそ200%以上の力を発揮して金賞をとりたいと思います。

○私は,学年目標の一致団結は1日目,あまり感じませんでしたが2日3日とどんどん目標に近づいていったと思います。自分の目標であった皆がもう1回行きたいと思っているので達成できたと思います。あと1%は帰ってきてから次につなげてこそ100%になると思うからです。なので,修学旅行にできたことを次に生かしていけるようにしたいと私は思いました。 

10 題名「仲間ぢからを感じた時」(2021年5月記)

 体育大会後に,「仲間ぢからを感じた時」という題名で200字作文を書かせました。その中から,この作文を紹介します。

「私が仲間ぢからを感じた時は,体育大会の集団演技だ。最初の頃は正直ダンスなんてしたくないと思っていた。練習でも動きが小さくまわりから見ても真剣にしているようには見えなかったと思う。でも,先生方から注意を受け,お話を聞くと,ダンスをしたくないという気持ちから頑張ろうという気持ちに変った。本番に近づくにつれ,頑張っていると言われることも多くなり,全員で1つにまとまった感じがして,私はそこで仲間ぢからを感じた。」