こんな本と出合った(2021年)
読書は時空を越えることができます。
合ったことがない歴史上の人物と出合い,見たことがない未来や宇宙,深海を見ることができます。
また,体験したことがない冒険や恋愛も経験できるのです。
1冊の本との出合いが人生を変えることもあります。人生観を広げ,深めることができます。
そんな本との出合いのきっかけをつくるために,このページ「こんな本と出合ってきた」をつくりました。
この中の1冊が,あなたにとって素晴らしい出合いになることを願っています。
昨年の長い自宅待機の時に,よく見ていた動画がYOUTUBE「ヒロシちゃんねる」です。
芸人のヒロシさんが一人でキャンプをしている動画です。
自力で火を起こし,テントをはり,料理をつくり,寝るというだけの動画です。
いいところは,ナレーションがほとんどないところです。
余分な説明がないので,ただダラダラと見ることができます。
そんなヒロシさんの本「ひとりで生きていく」が図書室にあったので借りて読みました。
私も子供の頃から,ひとりでいる時間が好きでしたから,共感する部分も多かったです。
〇「強くつながった人間関係を信じることは危険」
〇「気が合うより共通の話題があることが大切」
〇「あなたを必要としている人は意外にたくさんいる」
〇「友達100人できるかな」という同調圧力
〇「何が向いているか何が上手くいくかはやってみなければわからない」
タイトルから寂しくなりますが,人間関係で悩んでいる人が読むと肩の力がふっと抜けると思います。そういえば,海援隊の歌「スタートライン」には,「ひとりぼっちになるためのスートライン」という歌詞がありましたね。
(2021年2月)
647「教師のチカラ 季刊45号」(日本標準)
今回の特集は「学級づくりの新提案」でした。
中でも,深澤久先生の「学級づくり」についての問題提起が刺激的でした。
「学級づくり」とは,何でしょうか。
この問いに,皆さんは何と答えますか?
例えば,
学級がスムーズに動くためのシステムづくり
みんな仲良く生活するための人間関係づくり
よりよい集団生活づくり
などと答える教師も多いでしょう。
しかし,即答できることは難しいことです。
これについて,深澤先生は,このように定義されています。
「学級をやる気があれば誰でも分け隔てなく・対等平等に,自身の力を発揮することができる場・空間にしていく営みである。」
また,このような厳しい指摘をされています。
「一人一人(個)が自身の考えを持つ(ことを確認する)前に,小集団に相談をさせる。なぜ?「一人で考えるのが困難な子がいる」「大勢の前では発言でいない子がいる」ので「助け合い」「学び合い」が必要,こうした理由である。一見,思いやりある優しさに見えるが・・・発言力のある子・お勉強のできる子が一方的に発言し,ほかの子は黙って聞くだけ・・これが「相談」の実態だ。毎日こんなことをしていたらどうなるか,「強者」はますます強くなり,「弱者」はますます弱くなっていく。
4月の学級びらきの前に,是非,読んでおくべき特集だと思います。
(2021年3月)
650「学級経営10の原理100の原則」(堀裕嗣 学事出版)
今日は,市中体の振休でした。久々にのんびりと過ごすことができました。
午前中は,父の日のプレゼントを買いにスポーツ店へ行き,昼食は回転寿司でした。
息子たちから好きなものを買っていいと言われていたので,少々高値のTシャツを買いました。(いつもはUQの黒いTシャツです)
午後は,ちょっと思うところがあり,堀裕嗣先生の「学級経営10の原理100の原則」を再読しました。
再読しても,学ぶことが多い1冊です。学級経営の細かい部分まで書かれているので,初任者や若手教師に読んで欲しい1冊です。
あとがきにも書かれていましたが,若手教師と共に3年間持ち上がった経験を元に書かれています。
3年間持ち上がり継続的な指導をすることで,見えてくるものがあると思います。3年間という長いスパンで生徒を育てるという視点を持ったことで,日々の細かい指導が見えてくるのです。
細かい部分をおろそかにしないことで,大きな荒れを防げるのだと思っています。
(2021年6月)
小学校と中学校では,状況が違う部分もありますが,学級崩壊で苦しむ教師を何とかして助けたいという熱い真っ直ぐな思いが伝わってきました。是非,校長研修会で読んで欲しい1冊です。ブラックではなく,エンジェルの内容です。
(2021年6月)
652「教師のチカラ46号」(日本標準)
午前中は,学年通信と定期テスト作成をしました。午後は,昨日届いた「教師のチカラ46号」を読み,心が動いた部分をノートに書きだす作業をしました。こうすることで,読みが深くなり,自分の考えと比較しやすくなります。今回もノート4ページをこえる学びがありました。特に土作彰先生の「学級づくりは人間関係づくりである」という言葉に大きく頷きました。毎回のことですが,この「教師のチカラ」を読むと,自分の考えが引き締まります。
(2021年6月)
この土日は,第1回テストの採点と成績処理,学年通信作成をしました。
加えて,家の仕事として台所の棚づくり,リーフラティスの取り付けなど忙しい休みでした。
野中先生の本も一気に読みましたが,野中先生の教育哲学と教育実践の集大成となる内容でした。また,具体的な実践も多くて,若手教師もすぐに実践できる内容となっています。
夏休みの学びの計画を立てています。公的な研修以外は,今までの学びをデータ化しようと目論んでいます。退職までにボチボチと進めておこうと考えました。
(2021年6月)
人間は極限状態に置かれた時に,どんなことを考え,どんな行動をとるのかについて,ずっと興味があります。ですから,それに関する本をずっと読んできました。例えば,遭難もの,漂流もの,山岳もの,海洋もの,宇宙もの,自然災害もの,探検もの,冒険ものなのどです。その流れで「漂流者は何を食べていたか」(椎名誠 新潮選書)を読みました。
いつ助かるかわからない極限状態で,人間は生きのびるために何をどうやって食べたのかについて,様々な本の中から紹介した本です。中でも強烈だったのは,ウミガメを解体して食する場面です。肉の部分は全体の20%から30%ぐらいしかなく,肝臓には毒が含まれているそうです。そのまま引用するとグロいので書きませんが,味は思ったよりやわらかいそうです。極地での遭難者はペンギンを捕獲し,心臓,目玉などをシチューにて食しています。まさに,食べることは生きることなのです。生徒がこの本を読むと,給食の残菜はきっと0になるはずです。
(2021年7月)
椎名誠さんの「続 家族のあしあと」(集英社)を読みました。シーナさんは76歳ですが,この本に描かれている家族,風景,空気,匂いなどは,私が育った40年代にもまだあちこちに残っていました。
ですから,読みながら何度も自分の子供の頃を思い出しました。
大人数での食事,野山での遊び,学校の様子,おせっかい焼の近所のおじさんやおばさんなどなど。
貧しかったけれど,楽しく輝いていた毎日がとても懐かしく思い出されました。
そして,最後は,切なく哀しくなるのです。
「昭和」という言葉でひとくくりにしてほしくない,宝箱のような日々がそこには,確かにあったのです。
もうすぐお盆ですが,親戚が集まり食べ,飲んで,笑い,語り,遊んでいた風景が思いだされます。
この本の最後の章の題名が「風景の色が踊っている」です。さすがシーナさんです。見事な題名だと思います。
(2021年7月)
学習指導要領には,
「生徒の自主的,自発的な参加によって行われる」と明記してあります。
また,文部科学省の「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革(令和2年9月)では,「部活動は必ずしも教師が担う必要がない業務」という前提も書かれています。しかし,現在でも,当然のように部活動は教員が顧問を担当し,休み返上で参加しています。しかも好きでもない種目や専門的でもない種目を担当している教員も多いはずです。こういった理由で,部活動について疑問や不満がある教師は少なくないはずです。採用試験の倍率が低迷している理由の一つに教員は休みがないというものがあります。
これからは,部活動について教師一人一人が声を上げていくべきです。この本は,内田先生が全国の教師に行った様々なアンケートを分析し,部活動がかかえる問題点や将来の方向性を示しています。部活動をなくせとは言いません,せめて教師も生徒も幸福になる,スポーツが好きになるような政策を早急に実施していく時期だと思うのです。
(2021年8月)
いわゆるシーナの私小説シリーズです。今まで書かれていなかった,中学生シーナが主人公です。自分の少年時代を重なる部分が多くて,懐かしさが込み上げてきました。駆けずり回って遊んだ山,神社で行われた映画上映,近所にいたちょっと変なおじさん,となりの家の玄関で見た白黒テレビ,紙芝居,煙突などなど。
シーナは,最後にこんなことを書いています。
「少年たちはずんずん成長していく。海風がそんな背中を押していく。潮風少年たちは知らないうち大きくなっていった。」
まさにそんな感じの少年時代だったなあと昔を思い出す本でした。続編があるそうなので楽しみです。それが,名作「哀愁の町に霧が降るのだ」に続くのでしょう。きっと。
(2021年8月)
じっくり読書の日でした。椎名誠さんの「旅の窓からでっかい空をながめる」(新日本出版社)を読み終わりました。
内容は,今はまっている写真エッセイです。ゆったりほんわりする写真に心が温まる文が添えられています。中には,はっとさせられる文もあります。例えば,こんな文です。
「(ラオス)このあたりでは男女問わず小さい子供の家事手伝いがあたりまえで。女の子が水くみをしているあいだ男の子はいまにも沈みそうなカヌーに乗ってメコン川のトロ場(流れのゆるい深場)にいって5~6メートルもぐり,いろんな種類の川魚を銛でついている。(中略)可哀相なのは,そういうことを体験できない過保護の日本の子供たちだろう。」
そういえば,私が子供の頃(昭和40年代)は,家事を子供たちが分担していました。働かなければ,家族が困るのでやらざるを得ませんでした。近所の友達は,牛の餌やりや農作業,畑の水まき,妹の世話など当たり前のように毎日やっていました。手伝いではなく,立派な労働でした。そんなことをやりながら,家族の一体感を強めていたのでしょう。
シーナの本を読むと幸福について,ちょっと立ち止まって考えたくなります。シーナの写真エッセイの読書は,まだまだ続きます。
(2021年8月)
授業がちょっとだけ早く終わり,隙間の時間ができるとやることは以下の5つです。
①おもしろい話
②クイズ
③怖い話
④ゲーム
⑤体験談
時間にして5分程度ですが,やり方次第では大いに盛り上がり,教室中が笑いが起こります。
そのためには,ネタを多く仕込んでおく必要があります。①と③については,落語や漫才,「人志松本のすべらない話」などでネタを増やしています。
④は,本から学んだゲームをいくつか持っていますので,それをやっていました。今回は,弟子のKくんからもらった「クラスをつなげるネタ73」(黎明書房)を読んで,新しいネタを得ました。こういったゲームネタを1つでも多くもっておくことで,生徒たちの関係づくりができます。みなさんは,いくつぐらいのゲームネタを持っていますか?
この本の初めに中村健一先生が,こんなことを書いていました。
「最後になりますが,私も50歳になってしまいました。いつ死んでもおかしくありません。そこで,編者のノウハウを中村の遺産として,若手に伝えたくなりました。」
私も同じ考えです。今まで学んだことを若手に教え,伝えてくことがベテランの使命だと思います。私も教師生活の時間が少なくなってきましたが,残された時間を使って,1つでも多くのことを若手に伝えていきたいと思います。
(2021年8月)
今まで読んだ本を記録していませんでした。それにしても,読破数が伸びませんね。
12月まで無理せず読みたい本を読みたい時に読みます。
50分の道徳授業をつくるための最初の一歩は,ネタ探しです。
毎日,いろいろなネタに出会っているのですが,そのネタに響く心を育てておくことが重要なのです。
この本を読むと,ネタ探しの新たな視点がもらえます。先ほど第2集も注文しました。
(2021年8月)
昨日の2回目ワクチンの副反応でしょうか。
熱はありませんでしたが,全体的にだるい感じでしたから休みをとりました。
ベッドやソファでゴロゴロしながら「教育現場は困っている」(榎本博明 平凡社新書)を読破しました。
現在の教育に対する問題点を指摘した内容となっています。
ページをめくるたびに,「そうそう」と言いたくなりました。
目次の中から,いくつか紹介します。
〇アクティブラーニングの勘違い
〇「英語の時間が楽しい」という調査結果についての誤解
〇まずは知識の吸収が大切
〇「教えない授業」が能動的・主体的な学びなのか
〇知識は思考を妨げない
〇「主体的に学習に取り組む態度」の評価に意味などない
〇知識を軽視する教育の危うさ
〇実用文中心の国語教育の先には…
〇読書に没頭する孤独な時間が読解力を養う
〇キャリアデザイン教育への疑問
〇学力をつけるにも非認知能力が大切
〇教養を深めるような授業こそ大事
榎本先生は,最後にこう書いています。
「国語や英語ばかりでなく,あらゆる学習において実用性を重視する実学志向が強まっている。プレゼンテーションや討論のスキルばかりを身につけても,知識や教養,ものごとを深く考える習慣を身につけさせることがでいないのであれば,薄っぺらいのに自信満々な人間を生み出すだけになってしまうだろう。」
日本の教育は,どこへ向かおうとしているのでしょうか。
若い先生たちには,トップダウンの施策や指導法や授業形態などどを鵜呑みにしないで,本当は何が大切なのかと自分の頭で考えて欲しいとも思います。
野口先生も言われています。迷った時は,原典にあたれです。教育基本法の第1条「教育の目的」と第2条の「教育の目標」を噛みしめて読んで欲しいと思います。
(2021年9月)
今日は,朝から連続3時間の授業がありました。夏休み明けの3連続はさすがに疲れました。4時間目と5時間目は,通知表の評価のためのノートチェック,6時間目は授業でした。
そして,放課後は生徒指導というなかなか忙しい日でした。
さて,「5分でできる小さな道徳授業2」(鈴木健二編著 日本標準)を読破しました。この本を読む時に,注意しているところは次の2つです。
①ねらいの文章
②発問づくり
①は,その教材で達成できる(できそうな)具体的なねらいをどのように書くかが学べます。
②は,生徒が考えたくなる発問をどのようにつくるかが学べます。
道徳指導案を書く際は,是非この本を読んでほしいと思います。参観者が授業を参観したくなる指導案が書けるようになるはずです。
また,この本を読むと見えるものすべてが道徳の教材になるかもしれないという意識が高まります。
(2021年9月)
663「日本衆愚社会」(呉智英 小学館新書)
久しぶりに呉智英さんの本を読みました。
大学時代から「大衆食堂の人々」「現代マンガの全体像」(情報センター出版局)「バカにつける薬」「言葉の常備薬」双葉文庫)などを読んできました。今回読んだ本は,「日本衆愚社会」(小学館新書)です。この中で呉さんが,体罰について書かれていたので,少しだけ紹介します。
「体罰論議は,一見,教育の方法論を巡るもののように見えながら,本質的にはそうではない。(中略)体罰の本質論は,教育の方法に関わるものではなく,教育という制度に関わるものである。(中略)義務教育とは,政治と同じように,普段は見えにくいが統治の上に成り立っている。まず,否も応もない強制がある。義務として学校へ出てこなければならない。教室を教室として成り立たせなければならない。授業妨害だの,学級崩壊だの,教育統治の不成立に対して体罰はありうる。」
呉さんの言うように,教育は統治の上に成り立っているのだから,体罰がなくならない理由もわかります。
「教育は統治」という新たな視点をもらうことができた超刺激的で挑発的な本です。また,呉さんの知識の豊富さにも驚かされます。フランス革命のきっかけとなった,バスチーユ監獄襲撃の真実を知らなかったことを西洋史を専攻していた自分を恥じました。猛省です。
朝から部活指導。昨晩のクリスマスイブの影響でしょうか。4人が欠席でした。寒さが厳しく,体育館の中も相当冷え込んでいました。帰りに妻から買い物を頼まれ,大型スーパーに寄ると駐車場も大渋滞でした。いよいよ年末を感じました。
家の大掃除もしなくてはいけまんせんが,午後からは読書をしました。読破した本は「立花隆の最終講義」(文藝春秋)です。なかなか難しい内容でしたが,新しい知識を得ることができました。医学,哲学,数学,歴史学,地政学など,さすが知の巨人と言われる立花氏らしい講義でした。特に興味をもったのは,この本を編集したのは立花氏の講義を受けた東京大学の学生だったという点です。難解な内容も分かりやすい注釈が多く挿入されており,私の理解の手伝いをしてくれました。
最後に立花氏の言葉を紹介します。
「パンタ・レイ(万物は流転する)こそ,永遠の真理なのです。」
(2021年12月)
中村健一先生の新刊「策略 ブラック新卒1年目 サバイバル術」(明治図書)を読みました。私の教職35年間で学んだことや実践していることの共通点が数多くありました。例えば,中村先生は「厳しいけど,楽しい。楽しいけど,厳しい。そんな教師を子どもたちは信頼する。」と書いています。私も「きびたの=きびしけど,たのしい」「こわやさ=こわいけど,やさしい」教師を続けてきました。新卒1年目教師だけでなく,ベテラン教師にも是非読んで欲しい1冊です。
私も中村先生と同じように「口先1つで勝負したい。チョーク1本で勝負したい。そんな職人でありたい」と思う一教師です。
明日の校内研修は,「生徒,保護者との信頼関係づくり」がテーマですから,この本を全職員に紹介します。
(2021年12月)