ホフディラン春のベースまつり2014

2人組バンドのホフディランに、様々なベーシストが入れ替わり立ち替わり加わり演奏するイベント、「ホフディラン春のベース」まつりが、新代田feverで、2014年4月14日19:30~開催された。今年で第三回になるらしい。

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ここでイベント当日の私の足跡を、ツイートを通じてたどってみよう。

まず……

1:16「ホフディランの小宮山が『2 PLATOONS』のときのインタビューで、「トラベリング・ウィルベリーズを研究した」と言っていて、(えっ、ウィルベリーズ!?)と思ったけれど、改めて聴いてみたら、なるほど、ウィルベリーズだ。」

夜中の1時にDTMマガジンを読み返していたら、ホフディランのインタビューが載っていた。あまり聴いたことはなかったが、ウィルベリーズは好きだったので気になった。

そして、

2:12「ホフディラン 春のベースまつり2014 なんだこれ!? ジョン・Bもウエノコウジも福岡晃子も出てるじゃないか! しかも今日じゃないか! 気になるぞ。当日券あるのかなあ。」

深夜2時。youtubeでホフディランの曲など聴きつつネットサーフィンしていたら、イベントの存在を知る。趣味でベースを弾いているものとしては、大変気になるイベントである。しかし、眠気が襲って来たので就寝。

一夜明けて、

15:00「ベースまつり、当日券あるってよ!」

ライブハウスに電話して当日券があることを確認。開演まで4時間半。

そして、

18:49「ホフディラン春のベースまつり、ついに会場に入った。」

会場入り。イベントの存在を知ってから、わずかに16時間後の出来事であった。

しかし、このライブ、実に素晴らしかった。駆け込みで行って本当によかった。

以下、記憶に頼ってライブのレポートをしたい。私は前述のとおり、ホフディランについてあまり知らないので、そちらの記述(セットリストなど)は手薄になるが、ご容赦願いたい。

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ライブハウスに入ってグッズを見ていると、横から聴いたことのあるような声がする。おもむろに横を見ると、数メートル先のカフェコーナーで、ホフディランのワタナベイビーがインタビューを撮影中である。初っ端から第一種接近遭遇である。お目当ての「ベーシストTシャツ」を購入。ビートルズのロゴをイメージしたデザインで、とてもかっこいい(と思う)。

開場までそのへんをうろうろし(新代田というのは何もない町である)、開場時間になってから会場入り。化粧室でベーシストTシャツに着替え、いよいよ会場に入る。早目に入れたので、まだ客入りは半分ほど。中規模のライブハウスでオールスタンディング。前から6列目の中央付近を確保できた。ステージまでは4メートルほどだろうか。やや肌寒く、上着をクロークに預けてきたことを後悔したが、始まれば暑くなるだろうと考え、そのままに。ベースまつりということもあってか、周囲を見渡すと、観客にも地味な人が多い。私はチェックシャツの男二人に挟まれてしまい、オセロの要領でベーシストTシャツがチェックシャツに変わってしまったら困るなあ、と思ったが杞憂であった。

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19:45頃、予定からは15分近く遅れての開演。ホフディランの二人とサポートメンバーたちが入ってくる。最初にベースを弾くのはホフディランのギター担当ワタナベイビー。バイオリンベースを抱えてのベースヴォーカルである。

左手の小指を使わない演奏が、ギタリストのベースだなあ、と思わせるものの実力は十分で、ハイポジションを使ったメロディアスなプレイが印象的だった。

また、開演してすぐ気づいたのは会場の音響の良さである。私の立ち位置が中央付近だったこともあるかもしれないが、楽器の分離と定位が実にすっきりと聴こえる。いいハコである。

2曲ほど演奏して、最初のゲストベーシストが入ってくる(このへんのテンポの良さも、高評価である)。花を片手に、ハンドマイクで「所在ない」を歌いながら登場したのは、ウルフルズのジョンB。いきなり大物である。

ジョンBといえばウルフルズのいじられキャラで、一時期引退していたこともある。そんなところから、ジョンBにはなんとなく冴えないイメージがあったのだが(ここで慌てて付言しておけば、私はウルフルズのコピバンをしていたこともあるウルフルズファンであり、ジョンBファンである。彼のソロ曲「スマイル」も大好きである)、生で至近距離で見ていると、スタイルもスラリとしていて、オーラもあり、とても46歳とは思えぬ若々しさ。さすがは業界人である。

続いて、やっとベース(白のプレべ!)を持ったジョンB。ベースソロ(!→註1)、そしてホフディランの曲を演奏した後、ウルフルズの大ヒットナンバー「ガッツだぜ!」を演奏。ボーカルはワタナベイビー。なんとも貴重なコラボに、会場は大盛り上がりである。

奏法はピック弾きと親指弾きを披露。「あれ、ピックどこだっけ?」と探すおちゃめな一面も。

終始テンションの低いMCも面白かった。

(註1:まさかのジャコパス風のベースソロだったが、数小節弾いてから突然尻切れトンボに終わるというオチがついていた)

ジョンBに続いて登場したのはチャットモンチーの福岡晃子。ビザールのkayベースを持っての登場。私は、「へっ、チャットモンチーなんて女子供の聴くもんだぜい! べらぼうめ!」程度に考えていたのだが(ここで再び慌てて付言しておけば、ラストラブレターのベースを熱心にコピーした経験のあるくらいには興味があった)、へにゃへにゃ笑いながら若干挙動不審気味に客席にピースサインをする福岡晃子のキラキラっぷりを見て、一瞬でファンになってしまった。音楽番組とかでの演奏などを見ていて、頭を振り乱してベースを弾いているトンガった姉ちゃんというイメージがあったのだが、そのイメージが一瞬で払拭されたのであった。ホフディランの曲を演奏した後(すまんホフディランファンの方)、チャットモンチーのシャングリラを演奏。

続いて登場したのは長身の革ジャン男ウエノコウジ(正直このへんの順番は記憶が曖昧である)。「あ、シールドって、自分で持ってこなきゃいけないの?」と、いきなりおちゃめであるが、シールドをアンプに挿した次の瞬間、ベースからあのウエノサウンドが出たときには驚いた。アン直で知られるウエノだが、あの音色は彼のベースとピックから生み出されているのだ。ちなみにベースはプレべ。激しいピッキングでボディがえぐれている、あの有名な個体である。

「なんで俺はオリジナル曲やらせてもらえないの」とすねるシーンもあったが、ホフディランのナンバーを演奏。ゴリゴリのピック弾きで、コミカルな「サッポロちゃん」を演奏するなど、選曲の妙が目立った。

ちなみにウエノはリハーサルの際、発泡酒が用意されていたにもかかわらず、わざわざコンビニに行きサッポロビールを買って来たのだという。「やっぱりロックの人だから、発泡酒だとあかんのかなー」と心配した、というホフディランのエピソードがおもしろい。

次に現れたのはノマアキコ。元GOGO7188のベーシストである。トレードマークの赤いサンダーバードノンリバースを持っての登場。このイベント、ベーシストたちが見れるばかりでなく、彼らも皆トレードマークのベースを惜しげもなく持ってきている、本当にベーシストには垂涎のイベントである。

ノマアキコを呼ぶことを提案したのは、ホフディランのバックバンドのドラマー田中元尚。ずっと彼女のベースのファンだったんだそうだ。

ここでもGOGOのナンバーの演奏はなかったが(ちなみに、解散したバンドの曲は演奏しない。活動中のバンドの曲は演奏する、という基準らしい。ただし来年からは変わる可能性あり)、バリバリとロックなベースにのせてホフディランの曲が演奏された。

6人目のベーシストはフラワーカンパニーズのグレートマエカワ。アノダイズドピックガード、サンバーストのプレべを持っての登場。私は正直、この日までグレートマエカワとうしろから前川の区別がついていなかったのだが、全然違う人であった。グレートマエカワは、格好は変態だが、ベースはオーソドックスであった。そして目茶目茶上手かった。とにかくリズムが正確で、気持ちがいいのである。

ホフディランの曲のほかに、フラワーカンパニーズの曲、「真冬の盆踊り」を演奏。マエカワ曰く、「ウルフルズとかチャットモンチーは全国で大ヒットだけど、これは下北沢で小ヒットしたくらいの曲だから」とのこと。しかし、曲の後半には全ベーシストがステージに登場し(ただしウエノは登場しなかった。まあ、イメージってもんがあるのだろう)、盆踊りを踊るという演出もあり、大変に盛り上がった。

最後を飾るベーシストはTHEピーズのベースヴォーカル、「はる」こと大木温之。THEピーズは、どちらかというとミュージシャンズミュージシャンという感じで、一般的な知名度は少ないが、今回登場したベーシストたちの中では最年長。先輩格らしい。楽屋ではるがジョンBに「ブラック田くん、元気そうじゃん。なあ、元気そうじゃん」と絡みつづけ、ジョンBが一貫して鬱陶しそうにしていたというエピソードが面白い。

「はる」は終始酔っぱらいのような感じで(素面だそうだが)、登場するやいなやベースを忘れて楽屋に戻り、再登場するやいなやカンペを忘れて楽屋に戻っていった。MCも酔っぱらいのような調子で不安だったのだが、演奏が始まったとたん、ジャズベのピック弾きで、実にベテランらしいプレイを聴かせてくれ、すっかり惚れてしまった。トータス松本が「俺は昔、はるになりたかった」と言っているのも納得である。

ピーズのオリジナル曲としては「バカになったのに」を披露。「中学まではまともだった まともだったのに」という歌詞には、聞き覚えのある方も多いのではないだろうか。

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ひとまずステージは終わり。しかしアンコールを求める拍手はなりやまない。

が、ここでトラブルが起きた。スタッフが機材点検、準備をはじめ、なかなかメンバーが再登場しないのである。

しかし、さすがはベースまつりに来ている観客である。すばらしいチームワークで拍手を持続させた。

説明しよう。

BPM=70くらいで拍手がスタートする。だんだん拍手のテンポは速くなっていく。BPM=140くらいになり、盛り上がりは最高潮に! しかしメンバーは来ない。そこで(ここが見事なのだが)、BPM=140の拍手をBPM=70の八分音符と見なし、四分音符に戻す感じでBPM=70へと移行するのである。この移行が、観客の息ピッタリな感じで、実にスムーズに行われるのである。さすがであった。

ふたたびホフディランのメンバーが再登場し、アンコール。まず、はるが再登場してベースを担当。そして最後はグレートマエカワとノマアキコのツインベース。マエカワが高音を、ノマが低音を担当する振り分けであった。

演奏がすべて終了し、ステージには全ゲストが登場。壮観であるが、その壮観さを感じさせないほどアットホームな雰囲気の中、イベントは終了したのであった。

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本当によいイベントであり、この日、私は久々に東京に住んでいることの良さを実感した。人ごみの喧騒に疲れはするが、当日気づいてこんな素晴らしいイベントにふらりと行くことができるのだ。さながら、ジャズ全盛期のNYである。

また、今回のイベントでは気づきもあった。登場するベーシストたちが皆、実に個性的な弾き方をしているにも関わらず、皆、実に正確にリズムを刻むということだ。

私のようなアマチュアは、往々にして、個性的に暴れようとすればリズムが走り、かといってリズムに正確であろうとすると、こじんまりとまとまった、つまらない演奏になってしまう。

暴れつつも正確に弾くことができる。ここが、プロとアマとのひとつの境界線なのかもしれない。

ホフディランの曲は(はじめて聴く曲が多かったが)、いい曲ばかりだったし、なによりステージまでの距離が近い。これほどの大物たちを、これだけの至近距離から見ることのできる機会はそうそうないだろう。日本のバンドシーンも、まだまだ捨てたもんではないのだ。私は夢から醒めやらぬ心地のまま、帰途についたのだった。

(2014/4/16)

[4/17 追記]ワタナベイビーのオフィシャルブログ「Net It Be」にアップされた記事を読んでいると、私に記憶違いがあったことがわかった。はるが「バカになったのに」を演奏したのは、アンコールでのことであった。詳しいセットリストなども、オフィシャルブログに掲載されている。ご興味のある方はご参照いただきたい。

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