BITTER & SWEET 雑感
2014年8月27日、都内のハロプロショップで行われたBITTER & SWEET(以下、ビタスイ)のインストアライブを観に行き、彼女たちの新シングル、「誰にもナイショ / 月蝕」を手に入れてきた。
ここでは、その感想を書きたい。
1. インストアライブ
17:50分ごろ、入場時間に少し遅れてショップに入ると、すでに入場は終わり、観客たちは着席した後だった。
さほど広いとはいえないショップに40席ほど用意された席。客は25名ほどと見積もった。平日の早い時間ということもあって、客入りはやや寂しい。
埋まっている席の後ろに腰を下ろす。
観客はほぼ男性。大学生くらいの若者から、40代と思われる成年まで、年齢層は幅広い。
18:00きっかりに、演者が登場した。まず登場したのはピアノ&ボーカルの田崎あさひ。
「あっ」と思った。
なぜ、あっと思ったのか。
事前に抱いていた印象と、近くで見た彼女の印象が全然違ったのだ。
動画や、広めのライブ会場(ビタスイはゲストアクトやオープニングアクトとして、大き目のイベントにも参加している)で見た彼女の印象は、内気で物静かな少女というものだった。黒髪ロングという容姿が、そう見せたのかもしれない。
しかし、ステージに上がり、少し顔を上げて客席を見まわした彼女からは、かなり勝ち気な印象を受けた。
気が強い事で知られる、長崎の女性である。柔らかい笑顔の奥に、強さが見えた。
続いて、ボーカルの長谷川萌美が登場。服装、容姿ともに田崎と対照的で、マニッシュな印象を受ける。
しかし、その後のMCでもわかったように、見た目に反してわりと天然なところがある。
この二人の対称性はおもしろい。最初見たときは、誰もが田崎が「スイート」で、長谷川が「ビター」だと思うだろう。
ところが、実際に彼女たちのことをよりよく知っていくにつれて、実は田崎が「ビター」で、長谷川が「スイート」なのだとわかるのだ。
見た目と内面が裏腹の、二人のヒロイン。ファイナルファンタジー7のエアリスとティファを思わせる。
演奏された曲は4曲。最初に旧曲を2曲。ロックナンバー。続いて新曲2曲を披露した。田崎のピアノは生演奏、両名のヴォーカルも生である。
ライブでは、まず、長谷川のパフォーマンスが印象的だった。自らのキャラクターをよく理解した上で、ときにクールに振る舞い、ときに熱く観客を煽る。
二人組ユニット、特に片方が楽器を担当しているユニットでは、立ちボーカルの立ち居振る舞いというのは、かなり難しい。楽器を持っていないため、手持ち無沙汰になってしまうのである。
手持ち無沙汰になると、慣れていない人ははなんとなくステージ上で苦笑したりしてしまうが、プロは自らが求められているキャラクターに入り込んで、演じきるのである。長谷川はかなり入り込んで、キャラクターを演じられているように思えた。
一方の田崎も、腰の位置に設置されたキーボードを荒々しく演奏する。腰の位置、というのは、キーボーディストとしてはかなり低い。彼女は、低く構えたキーボードのコードを、荒々しく叩くのである。彼女は、決して流麗なピアニストではない。まだ、「上手い」ピアニストともいえないだろう。
今のところ、タイプとしてはロックピアニスト、たとえばブルーハーツのサポートだった白井幹夫に近い。
そう、実はこの二人、両者ともにかなりロックであり、正統派のピアノロックユニットなのだ。
歌にもまだまだ上達の余地はあるが、ハモリなどもするようになってきていて、いいコンビだなぁ、という印象を受けた。
終了後の握手会。
私は握手会というものが初めてなのだが、皆思っていたよりかなり長い時間、話している。
人数が少ないので、余裕があるのかもしれない。
話した内容は秘密である。というか、たいしたことを話せなかった。
応援している旨や、それぞれについてすごいと思ったところを話したりした。
なぜ皆、あんなに長い間会話を続けられるのだ。ひょっとして私が、コミュ障というやつなのか。
ううむ。
2. ニュー・シングルについて
ビタスイは、MANISHに似ていると思う。
MANISHをご存知だろうか。
90年代前半に活躍した、ビーイング系の女性二人組ユニットである。
ピアノとボーカルというメンバー構成が似ているだけではない。
今回の曲の曲調は、二曲ともわりとビーイング的だと思う。
では、一曲ずつ見て行こう。
1曲目の「誰にもナイショ」。
キャッチ―でちょっと懐かしいサビが印象的。
大きな特徴は、生ピアノがフィーチャーされていないことだ。
今までのビタスイの曲は、ギターなどがリズムを刻まずに、生ピアノのコード弾きが楽曲の主体となっている曲が多かった。田崎の演奏による制約もあるのか、逆にそういった曲だから田崎がコード弾きを多用しているのかは、卵とひよこのようなもので、私にはわからない。
しかしこの曲は、打ち込み主体のサウンドであり、田崎のピアノは間奏の、ピッチベンドを駆使したキーボードソロという形でのみ披露される。
一方、詞に目を転じると、赤裸々な恋愛系の歌詞だ。ビタスイはアイドル売りしないのだという制作サイドの表明だろうか。
しかし、どんなに「アーティスト」とされてきた女性であっても、多かれ少なかれ、スキャンダルが出れば人気は落ちるものだ。その意味で、女性アーティストを「アイドル売りしない」ということは、難しい、というか、不可能に近い、と私は思う。このアーティスト路線をどこまで推すのか、気になるところだ。
2曲目の「月蝕」。
すごいタイトルを持ってきたものだ、と思った。ピンクフロイドの"Eclipse"、あるいは武満徹の「エクリプス」を例にとるまでもなく、「月蝕」というタイトルがきたら相当プログレッシブな曲と、相場は決まっている。
しかし、実際の曲はそこまでプログレッシブではなかった。逆再生めいたサウンドが最初に多少入るものの、正統派のバラードといった趣の曲である。
私はこの曲に、かなりビーイング色を感じる。懐かしい、90年代チックな曲調だ。
歌詞としては失恋ソング。歌詞には特に見るべきところがない。「動画」などの新しめの単語が登場するものの、基本的にはよく耳にするようなフレーズの連続である。
総評としては、どこか懐かしい曲調のポップチューンといった印象のシングルであった。
そつなくまとまった曲ではある反面、正直、キラーチューンにはいま一歩届かないような印象も受ける。
彼女たちはこのシングルをひっさげ、全国を回っている。
この地道な努力がいつか報われることを願う。
(2014/8/27)
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