2020年2月4日に、日本でも有名な中国外交部発言人の华春莹さんが、TVインタビューに際して、日本から送られた武漢肺炎義捐物資の梱包上に書いてあった文章を絶賛した。このため、日本の対中国援助が、一躍脚光を浴びる事になった。华春莹さんは、「病毒无情人有情。疫情是一时的,友情是长久的。(ビールスは無情だが、人には情けがある。病気は一時的なものだが、友情は永遠だ。)」とコメントして、日本の援助に感謝した。
その後、中共宣伝部は、日本褒めあげキャンペーンを全面展開しており、この美談も繰り返し伝えている。それまで、毎日嫌と言うほど放送していた「抗日TV番組」も、突然姿を消した。
NHKの紹介でも既に超有名になったエピソードと文章だが、一応繰り返しておこう。2月12日付けの新浪网から引用した。和訳は,Webを見ればあちらこちらにあるので、省略した。又、引用元の原典全文を記載したが、義捐物資の梱包上では【】内の言葉は、省略されている。
日本汉语教学考试机构HSK事务局
山川异域,风月同天。【寄诸佛子,共结来缘】
出典:飛鳥時代 長屋王が鑑真和尚を日本に招請した際の手紙
NPO仁心会
【岂曰无衣,与子同袍。王于兴师,修我戈矛。与子同仇!】
【岂曰无衣,与子同泽。王于兴师,修我矛戟。与子偕作!】
岂曰无衣,与子同裳。【王于兴师,修我甲兵。与子偕行!】
出典:先秦《诗经⋅秦风⋅无衣》
舞鶴市
【沅水通波接武冈,送君不觉有离伤】
青山一道同云雨,明月何曾是两乡
出典:唐 王昌龄《送柴侍御》
富山市
辽河雪融,富山花开 同气连枝,共盼春来
出典:南朝梁 周兴嗣《千字文》から、一部分を変えている。
長崎県
崎岖路 长情在
訳) 路は厳しいが、長きに亘る友情がある。文中に、長崎が含まれて居る。
韓国のソウル市から送られた援助物資に書かれていた文章も、併せて紹介されていた。
兄弟同心,其力断金。守望相助,共克时艰 (兄弟が心を合わせれば、その力は金属をも断つ。助け合って、今の困難をともに勝ち抜こう。)韓国には、漢字を読める人が殆どいなくなっているし、新聞・放送などでの漢字使用も禁止されているから、文章的にはまあこんなものだろうか。残念ながら、こちらには、华春莹さんからの感激の言葉は無かった。
そして、最後に記者のコメントがついていた。「日本人が中国の古典を引用して、友情厚い文章を送ってくれるのに、何で中国人はこんな色気の無いスローガンしか作れないんだ。」「自分の生活は、まるで文化の砂漠の真ん中にいるように感じる。」そう、「母国語の教育を、もっとしっかりとやらなくちゃいけないんじゃないか。」
こんなコメントもあった。「日本人が引用したのは、もともとは中国人が作った詩だ。だけど、中国では今じゃ党公認の文章以外は使えない。引用したり、新しい文章をつくったりなんて、後が恐ろしくてとてもできやしない。武汉加油,中国加油しかないさ。」大胆な意見だ。いつまでWebに残っているやら。
中国の各地で掲げられたスローガンを、報道写真からピックアップしてみた。溢れかえる党のスローガンを見て、殺伐さのみを感じるのは、均茶庵の僻目だろうか。
所で、2月6日付けの新浪网には、陝西省の渭南地区の農村の話が紹介されていた。村の有線放送(大喇叭)が、秦腔(京劇のような陝西省の楽曲)で、武漢肺炎に対する注意事項を放送していた。「血泪仇」と言う地元ではポピュラーな曲調に合わせてあるそうだ。陝西省の方言はまるで分らないが、字幕が出ているので、書き写した。併せて、訳も付けてみた。決して上手い歌詞ではないが、なるほど中国の田舎には、まだ僅かに自由な、伝統的なそして純朴な発想が生き残っているようだ。少しほっとした。 (200218 均茶庵)
注)「血泪仇」1943年初演。马健翎作。抗日戦争中に、国民党から残虐な弾圧を受けた一家6人が、共産党支配下の陝甘寧地区(陝西省、甘粛省及び寧夏回族自治区の一部)で、幸福で素晴らしい生活を送る。英明な毛沢東主席と偉大な共産党を唱う。
2月5日の記事も見つけた。何と、江蘇省北部の訛りで、党委員会が村中を巡回して、ウイルス防護を訴えていた。硬さはあるが、思わず笑ってしまう。
追記) 230316 均茶庵
こういう絵も、Webに載るようになりました。