須摩初恵

真紅の段帳、オーロラ!

あれはもしかして夢だったのだろうか?そんな不確かな記憶の中でイトムカを思う時、いつまで経っても消えることのない映像がたびたび浮かんできます。

それは凍てつく冬の夜空の出来事。北東の空の広い範囲に幻想的に降りている真紅の段帳の帯でした。私の他にも何人か見た人がおられたのでは?と思います。後日「オーロラがでた!」という声を何度か聞き、「あれがオーロラだったんだ!」と感慨一入(ひとしお)だったものです。(オーロラが真紅に輝いて広がることがあるのか、今もってわかりませんが……)

昭和20年代のイトムカでは真冬になると零下25,26度というのは珍しいことではなく、祖母、母、妹たちとお風呂の帰りによく星空を仰ぎ、背伸びすれば手が届きそうな星を眺めて楽しんだものでした。ピーンと張りつめた冷気の彼方に北斗七星、白鳥座、オリオン座等々、そして何より帯のようにくねって横たわる「天の川」が何か夢を膨らませてくれる空の主人公達でした。あんなに美しい星空を見せてくれる場所が、今の日本にどのくらいあるのかああ?と汚れてしまった地球に思いを馳せ、寂しいと同時にいろいろ考えさせられてしまいます。人間のエゴ、人間社会の利を追い求めるあまり、自然がどんどん壊され、地球温暖化に拍車が」懸かっている昨今、イトムカのあの美しい冬の寒さが大切な宝物のように思い出されます。

北東の山々の真上に広範囲にくり広げられていた真っ赤な(ビロードのような)空と山のパノラマを「やっぱりオーロラだったんだ」と信じて、かけがえのない地球が元の美しさを取り戻すために我々ひとりひとりに何ができるのか?世界中の人びとが本腰を入れて考え、一歩を踏み出さなければならない時(遅すぎるかもしれないが……)だと考えてしまう毎日です。