西田 薫

永遠のふる郷

あれは幾年前であったか、イトムカが閉山し十七,八年も過ぎたころ、沸き上がる思いを抑えられず、イトムカを訪れました。思いがけず」迎えてくれたのは、青紫や赤紫の昇り藤の群生でした。

このあたりはどこだっただろうか、旧社宅かな、ここは配給所の辺りかな、小学校、中学校、新社宅の辺りか、明確でないが、どの跡地もおびただしい昇り藤の群生が一面を覆い、私は驚きと戸惑いで茫然としました。

少年の頃のイトムカが一瞬にして頭に甦り、当時のざわめきが胸の奥底から津々と波打つように沸き上がり、頭の中は幾重もの映像が烈しく交錯しています。この溢れんばかりの思い出が一気に襲ってきて、あたしの体は整理がつかず、ただひたすらに、香り高いふる郷の空気を胸いっぱい吸い込みました。あぁーふる郷なんだなあ!心の奥深く染みました。

後年、クラス会が開催されるたび、級友とともにイトムカを何度か訪れましたが、その度に友とふる郷に感銘しました。

今は野村興産の建物が幾つか増え続けている様子です。まだまだ発展し、賑やかなイトムカが少しでも戻ってほしいと思っています。今私は、北見に住んでいますが、事あるたびにイトムカを思い、懐かしんでいます。

イトムカは心の郷、永遠のふる郷です。 (北見市在住)