総合S-----民俗学a-Sレポート

8月末に大阪で受けたスクーリングです。

スクーリングレポートが、やっとこさ合格ときまったので掲載してみます。

今回のスクーリングで興味をもった人は渋沢敬三という方。

ちょっと値段は高かったのですがスクーリング中に本を買いました。

この方のを紹介したDVDもあるみたいなんですが、

レアなのモノみたいで未だ発見できていません。

どっか売ってないかな。

(1)民俗学の人物1名「渋沢敬三」について ——————————————————

民具の渋沢敬三、民話の柳田國男、これまで学問として注目されなかった一般庶民に焦点をあわせた人物である。渋沢は民俗学を柳田に直接教わることはなかったが、日本の国情が急激に変ってゆく時代に、民俗学を通して共に日本の復興を志していたのではないだろうか。

青年期の渋沢は動物学者を目指していた。しかし、祖父の栄一の願いにより渋沢財閥の総師として事業家の人生を進むことになる。民具研究は大学の経済学科に入学後に仲間と始めた大正10年(1921)の第1回アチック会合が本格的な研究の始まりとなる。アチックミューゼアムという屋根裏部屋を利用した場所に郷土玩具の収集をしていく中、財界のリーダーとして日本銀行総裁・大蔵大臣へと就任し、民具研究のために私財を投じ、研究者のパトロンとして貢献していく。

アチックミューゼアムを通じて、人々のコミュニケーションと調和を重視にした渋沢である。日本国内のみならず世界各地の旅をした渋沢は、庶民たちの生活を観察し、一国の統率者たちが軍事的イデオロギーによる支配を目指していたこととは対照的に、庶民との交流の中で、温和な生活の営みにこそ人間の本当の幸福があると見いだしたのではないだろうか。

戦後、GHQのパージ命令よる政界追放と渋沢財閥解体後でも、日本の復興と日本独自の学問の基礎を築いていくために、財界•学術研究者と庶民との橋渡しをおこなった。社会は支配者となる政財界や学会の権力がこの国の基礎を作ったのではなく、根底となる一般常民の英知によって立たされていることをアチックに集う有志たちに意識させた。

渋沢は、民俗学を通して日本の社会を構成する様々な立場の人と協力関係を結び、誠実な国造りを目指した。本当の日本の復興は、政治•経済の数値的なものではなく、国民一人一人の活力なのである。また、敗戦という負荷的要素で満たされた国情に、学術調査を通して日本の新たなコンダクターとなりうる者を探し求めた。そこには、戦中の政治思想的統一を求める指導者ではなく、日本各地に、至誠ある祖国愛を育むことのできる地域の指導者の育成を目指したのではないだろうか。

現状の日本は経済競争という戦争に憂い、低迷した経済の復興を目指している状況である。今の日本にとって、渋沢の哲学に現状の日本を打破するヒントがあるのかもしれない。民俗学を受講し、すばらしい人物を知ることができました。ありががとうございました。

(998文字)

(2)民俗学の事項2つ —————————————————————————————

1.「民具」について —————————

渋沢敬三が発案した造語である。庶民が日常生活の中で作り出した道具を収集•研究するにあたり、当初は未開社会の手作り品を範囲として収集し「土俗品」と呼んでいたが、収集が進むにつれて概念が修正され、日常の生活用品にまで広げられ、のちに「民具」と言い変えられた。

伝統的な手法によって制作された手作り品を示す場合が多いが、制作年代が古いものや、消滅の危機にさらされているからといって研究対象になるということではない。また、近代工業化によって庶民の生活用品も機械で生産された量産品が多くなり、今後も概念を変えていく必要がある。

民具研究について、物の価値を再考する契機となり、近年の消費社会に対して問題を定義するための有用な学問ではないだろうか。現代社会で利用される生活用品は、生産と供給が過剰におこなわれ、破棄されることがあたり前となっている。また、資源のない日本は、原料を輸入し、付加価値の高い製品を輸出することによって経済が成り立っている。近年の迷走する現状に対して、民具研究は洗練された物作りをするためにも公益性の高い研究である。

2.「京都民俗学会」について —————

京都を活動の足場とし、昭和57年(1982)に発足した学会である。関西の民俗学の拠点であった京都大学の西田直二郎の国史学教室で研究をした柴田實を中心に、若手研究者たちの要請によって始まった「京都民族学談話会」が前進となる。

伝統を重視する地域性と合致した研究テーマでもある。関西での民俗学研究は、狭義で限定されたものではなく、歴史・人類・地理・社会学など、幅広い領域をカバーする学問として研究されている。専門の研究者以外にも様々な立場の研究者が会員として登録しており、学校の教員や一般市民も参加することができる。研究対象は京都を限定したものではなく、世界中を対象に調査し、魅力的な学会活動がおこなわれている。

民俗学にとって、地方の研究団体や民間の在野グループによる個々の情報発信が、重出立証法による比較研究や個別分析法などの研究にも大きな研究成果へとつながる。地方の活性化は民俗学研究にとって広義な資料の充実をはかることができ、また、地域ごとの視点と分析方法の違いからも新しいテーマが発見できるのではないだろうか。

(918文字)

(総数1916文字)

参考文献 ———————————————————————————————————

(1)民俗学の人物1名

•宮本常一『渋沢敬三』2008年12月1日 未夾社

•特定非営利活動法人 国際留学生協会『現代日本の源流』

<http://www .ifsa.jp/index.php?shibusawakeizo>2012年9月9日アクセス

(2)民俗学の事項2つ

•八木透•正岡伸洋編『こんなに面白い民俗学』2011年5月10日 ナツメ社

•京都民俗学学会<http://kyoto-minzoku.jp/>2012年9月8日アクセス