共通T----------美学概論-課題1

やっとこさレポートを提出できました。

去年からすでに本は読んでいましたが、

ちょっとのんびりしていて、レポートを書き始めて

単位認定試験の準備も含めると4ヶ月ほどかかっています。

なにせ、美学という世界は初めてのことでテンヤワンヤで書いてみました。

2課題あるうちの第1課題は、テキストを読んでイメージとアートの関係について

3200文字で述べるレポートです。

内容はとても面白く、自分自身が「考えていること」「認識すること」について勉強にはなりますが、

本を読めば読むほど、自分のレポートの頼りなさに思いやられます。

厚さ3cmのテキストが届いたときは「えらいこっちゃ!」と思ってしまいました。

共通必須単位を取るのに他の課題も考えましたが、興味のあるものの方が頭に入りやすいし、

どのみち認定試験のあるレポートの課題は卒業するためには避けることもできないのでやってみました。

読んでいる時に、テキストに赤線で印をつけましたが、ほぼ全ページが真っ赤っかです。

とりあえず載せてみますが、あまり参考にしないでください。

レポート系の課題は初めてですし...。

ちなみに第2課題も同時に提出しました。

美学概論

第1課題 レポート

「イメージ」と「アート」の関係について

イメージ構想力と表現する技術————

人は、身体に備わった感覚器官から受けた刺激を元に、様々なことを思考し、他者へ伝えるための多くの表現方法をもっている。外界から受けた刺激はイメージとして記憶に残っており、記憶されたイメージや思考したことを正しく伝えるために、表現方法にも工夫を加え続けている。新たな言葉を作ることや、アートのカテゴリーを増やす挑戦、身振りで伝える方法や、映像として発信する方法もある。イメージを伝達する行為は、他者との差異を感じ、現実を生きているという実在感を感じることのできる行為でもあり、伝えたことも、イメージに変換されて人々に記憶される。記憶というものは、ノートに書かれた文字でもなく、色や形のあるものとして身体の内部に作られるわけでもない。受け止められたものは、形のないイメージとして記憶されるのである。

伝達する方法のなかで「アート」による表現行為は、言葉だけでは言い表すことのできない感情を表現する1つの方法であり、イメージされたものを的確に表現するための挑戦的な姿勢が伺える行為である。テキストの中から「アート」という概念を完結に述べられたところを挙げてみるとこの部分である。

「アート」とは、人々の、まだかたちにならないで蠢いている「意欲」、

「欲望」、「感情」に、かたちを与える営みなのだ。

(テキスト 254ページ)

テキストでは、日常に使われる「言語」は不明瞭で不安定な記号であることを指摘している。そして、言語とアートの営みを理性と感性の相互の関係として捉え、お互いのイメージ世界をダイナミックな関係として捉えなければいけないことも指摘されている。人間の表現は、理性がとらえた「言語システム」が捉えきれないイメージを、感性によって「アート」として表現されており、アートでは表現できない感覚を理性が言葉として補い、相互の作用によって他者への伝達を行なっているのである。例えば、「絵を描いてみたい」という意欲は、誰もが認める優れた絵を描き、言葉によって「描くのが好き」と補足的に表現することによって、意欲に真実味が増して伝えられる。

また、絵画を観賞し「言葉にならない感情が生まれる絵である」と言葉で表現されたとすれば、それは「言葉にならない」と言語で表現され、形にならない感情を言語で表しているのである。抽象的で不明瞭なアート作品も、アーティストは制作の意図を言語で補足し、評論家による言葉の解説によって芸術性が理解される。評価が様々な場合は、人間の言語・感情システムが蠢いている状態である。アートと言葉による表現の関係は、それぞれが独自に発展したものではなく、相互に関係しあい、新たな表現技術が確立されてきたのだ。またテキストではアートを次のように指摘している。

アートは何らかの「概念」をイメージの関係へと変換するものだからだ。

(テキスト 362ページ)

これは、言語活動にも当てはめることができることで、言語は何らかの感性的感覚を「言語概念」というイメージに変換することでもある。「イメージ」というものはアートの世界の特権ではなく、言語活動においても適応できるものといえる。理性として捉えられたものは感性にも変換され、理性的なアート表現がされる。また、感性でとらえたイメージを元に、感性的な修辞に凝った言葉が生まれる。人間の思考は、多種の表現システムを複雑に絡めながら、言語とアートのそれぞれのイメージ変換のやり取りをして、お互いの新たな表現方法をつくってきたのである。

現代では、人間の活動や自然現象を解析するために試みられていることは、現象を細密に分離していき、「言語システム」である科学的な数式や根拠のある理屈よって把握することが「現象を理解できた」と考えられている。言葉によって、因果関係が把握され、人々と共有した情報を作ることで安心感を感じるのである。アーティストによるアート表現も、感覚器官から受け取った情報を元にして作品が作り出されている。その作品を把握するには、アーティストが受け入れた現象をリストに書き出すことや、制作プロセスを追うことで、作品の制作手順を知ることができる。しかし、アートの表現は他者が同じ体験をしても、同じ作品が制作できる保証はない。アートの表現活動は「構想」する行為がおこなわれ、記憶されたイメージを元に、他者が予測

することができないイメージ造りが行なわれているのである。過去の現象を分析し、新たに起こる現象を「予想」することはできても、結果を的中することはできない。そのようなことから、アート表現は理性によって明快に解析できない不可解な行為であると考えられ、感性が表現した主観的な表現は、理性によって錯覚や遊戯的な欺きとして低級的にとらえる傾向がある。しかし、人間の思考能力は理性と感性が相互に作用して現象を把握しており、理性にとっても、感性の直感的作用は新たな答えを発見するために必要な能力である。感性をテキストは次のように述べている。

長い間「欺き」とみなされて軽蔑され続けてきた人間の能力、これが

「感性」である。 (テキスト 225ページ)

感性による感覚は、不安定で錯覚的な思考とみなされ、理性が高級的な能力として考えられてきたが、理性も感性のイメージ構想力と直感的作用を利用している。また、アートの表現能力を感性独自の特殊な営みと考えるのでなく、理性による「言葉」もアートとして捉えることもできる。現象を的確に把握して伝達するには、人間の思考能力である理性と感性をフルに発揮しなければ新たな発想はうまれない。「冷静な感性」や「情熱的な理性」を利用して鮮明な表現理論が仕上げられていくのである。人間には現象をイメージ化する能力と表現能力があるが、未だ、それぞれの人が現象をイメージ化したものを外部に対して表現できていないことや、共通化されていない感覚があると考えられる。現象のイメージ化は経験以上のことは蓄積できなが、蓄積から発想されるイメージは、理性と感性と悟性によって認識され、構想力によって新たな理論やイメージが発想されている。

心理的に形成されるイメージの中で、もっとも恐れなければいけないことは、片寄った思想や固定されてしまうイメージである。極度化したイメージによって考えられた制度や道徳は、思想や人種の摩擦の元となり、紛争の原因にまで発展することがある。人間の表現能力に喜怒哀楽がある以上、悲劇的な争いが避けられないのも事実である。しかし、その争い方にも最善の方法はあるはずだ。蠢いてかたちにならない感情を、感性による構想イメージ

力と、理性の知的イメージ力によって、最善の結果を生み出ことができるはずである。理性によって作られた優れた道徳イメージと、アートによる「美」を意識した創作活動によって創られたイメージを、あらゆるイメージ創出活動にフィードバックし、人間の感情表現技術の最も美しい形態を提案するのもアートの役割といえる。

一般的に、アートは芸術家が行なう創作活動で、表現する媒体を介してアーティストの感じていることを伝え、「美しさ」を求めた創作活動であると思われている。過去のアートの役割は、崇高を知覚できる形態にすることや、普遍的な理想美を探求されていた。現代では、発表する場とカテゴリーの枠を広げて、人々を楽しませるエンターテーメント的役割をもつようになってきている。それは美の枠組みを広げ、新たな美的感覚の創出行為と受け止めることもできる。「美」という概念も固定されたものではなく、流動的なものである。悲劇的な美、喜劇的な美、苦しみの中にも美があり、滑稽にも美的概念が働いている。美のカテゴリーはどこまで広げることができるのか。理性が「感性」を人間にとって重要な能力の一つであると意識されはじめたのなら、今まで意識されなかった現象をイメージ化し、新たな表現技術が発見されるであろう。

人間は、これまで「絶対的」であると思っていたイメージに反省を加え、流動する普遍的な概念を創り続けてきた。理性は感性を意識し、悟性によって新たなイメージ構想力が働く。「アート」が特別な営みではなく、存在するすべての人々が真の表現者であるのならば、現在もたゆまなく思考され続けている理想の美的社会へと向かっている。

(総文字数 3370文字)

参考文献——————————————————————————————

・佐々木健一著『美学への招待』中央公論新社 2009年5月15日

・酒井紀幸・山本恵子編著者『新版 美/学』大学教育出版、2009年7月10日