週刊朝日への質問状

「健康寿命を延ばす食品選び」

2018年2月26日

株式会社朝日出版 編集長

佐藤 修史 様

食品安全情報ネットワー ク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

週刊朝日2月16日号「 健康寿命を延ばす食品選び」と題した記事についての質問状

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴誌「週刊朝日」(2月16日号)に掲載されている「プロ4人が正しい買い物術と調理法を指南!健康寿命を延ばす食品選び」と題した記事につき、いくつか質問がございます。また、面談で意見交換を希望します。お忙しいところ恐縮でございますが、 3月12日までに質問へのご回答および日程調整のためのご連絡をいただきたくお願い申し上げます。

【質問1】

≪安部さんは、食品添加物の安全性試験は単品で行っているので、複数を摂取したときまではわからないと指摘。≫との記載があります。

本件については平成18年に内閣府食品安全委員会が「食品添加物の複合暴露による健康影響については、多数の添加物が使用されていても、実際に起こりうる可能性は極めて低く、現実的な問題ではなく、理論的な可能性の推定にとどまるものである。」等の見解を示しています(「食品添加物の複合影響に関する情報収集調査報告書」より)。

記事は、一方の見解のみで読者の不安をあおるものであり、本件については食品安全委員会の報告書内容も紹介すべきと考えますが、貴誌の見解をご回答ください。

【質問2】

≪安部さんは「世界的に発がん性物質として規制されている添加物のクロロプロパノール類が日本では規制がない」と、国内の添加物の認可基準にも疑問を持つ。≫との記載があります。

クロロプロパノールは食品に添加されるようなものではなく、日本および海外において食品添加物として認められていないことから、この記載には事実誤認があります 。

この記載では、海外で食品添加物として許可されていないクロロプロパノールを日本では許可しているとの読者の誤解を招き、根拠なく不安をあおるものと危惧します 。本件について、貴誌の見解をご回答ください。

【質問3】

≪かつて「体に良くないから」と母親から即席麺を没収された子どもが、耐え切れずに万引きに走ったケースがあったという。添加物の摂取だけでなく、添加物が招くこうした依存性の高さも問題になると、安部さんは指摘する。≫との記載があります 。

この万引きの事例が食品添加物の依存性によるものであると記載される科学的な根拠をご回答ください。

【質問4】

≪渡辺雄二さんは、危険な食品添加物の中でも着色料の「タール色素」、発色剤の「亜硝酸ナトリウム」、「イマザリル」や「TBZ」などの防カビ剤にとくに注意が必要だと話す。≫との記載があります。

食品添加物は、ヒトの健康に影響のない量が調べられ、それ以上を摂取することのないように管理されて使われています。これらについて危険というイメージを植え付けるような記載をするのであれば、その科学的根拠も同時に記載すべきと考えます。この点について、貴誌の見解をご回答ください。

【質問5】

≪「高齢者らが肥満や高血糖の予防として、良かれと思って飲んでいる合成甘味料入りのドリンクが、脳卒中や認知症をおこしやすくするという研究データがある」(渡辺さん)≫との記載があります。

「合成甘味料入りのドリンク」で起こるそのような研究データを具体的にお示しください。

【質問6】

渡辺氏のコメントとして≪プリン体が入っていないビールには添加物が入っていて、そちらの方が危険です≫との記載がありますが、そのような飲料は酒税法上、正確には「ビール」ではありません。

また、科学的根拠を示さず食品添加物を危険とみなす等、このような安易なコメント引用は風評の原因ともなり、読者の誤解を招くものと思われますが、この点について貴誌の見解をご回答ください。

【質問7】

渡辺氏のコメントとして≪現在国内では、12品目のタール色素が添加物として使用を認められているが、いずれも動物実験やその化学構造から発がん性の疑いがもたれている≫との記載がありますが、動物実験で発がん性が認められた場合、食品添加物は許可されません。「発がん性の疑い」の科学的根拠をお示しください。


食品添加物に限らずどのような物質でも、ヒトの健康への影響は「量」で決まります。食品添加物は、ヒトの健康に影響のない量で、食品において有用な効果を発揮するものだけが使用を許可されています。

具体的には、一日摂取許容量(ADI:ヒトが一生食べ続けても健康への悪影響がないと認められた一日あたりの摂取量)が求められ、使用できる食品や量(使用基準)が定められています。実際に摂取されている量も調査されており、通常の食生活で食品添加物がヒトの健康に悪影響を及ぼすとは考えられません。このようなリスク評価や管理は、内閣府食品安全委員会や厚生労働省などにより科学的根拠に基づいて進められています。

食品添加物については誤った風評が多く見受けられます。

本記事における、≪今や多くの人が認識する「加工肉と結腸・直腸がんのリスクとの関連性」≫について、発色剤の亜硝酸ナトリウムを原因とするのもその典型的なものです。

この関連性が広く認識されるようになったのは、2015年にIARC(国際がん研究機関 )が加工肉を「ヒトに発がん性あり」と発表したことによりますが、IARCは亜硝酸ナトリウムの影響には言及していません。

また、≪南さんは数年前から絶対に電子レンジを使わないようにしている。マイクロ波で食材を加熱すると、たんぱく質が凝固(変性)してしまうからだ。≫との記載がありますが、電子レンジでなく湯せんやフライパン加熱でも、たんぱく質は凝固(変性)するものであり、たんぱく質を加熱したときに起こる当たり前の現象です。これを良くないことであるかのように書くことは、根拠なく読者の不安をあおるものであり、ミスリードするものと危惧します。

貴誌のような広く読まれている媒体においては、正確な情報提供をしていただくこと、適切な情報源を伝えていただくことが消費者にとっての利益となります。

つきましては、意見交換の機会を設けていただき、今後FSINからご協力できることはないか相談申し上げたいと考えておりますので、よろしくご検討お願いします。

本レターは、FSINのホームページ等において公開しますので予めご了承ください。また、メディア記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開させていただきます。

以上