産経新聞への質問と面談のお願い

「天然ジュースで食事のバランスを」

2013年8月6日付の産経新聞「【STOP!メタボリックシンドローム】天然ジュースで食事のバランスを」との記事について、9月24日付で質問と面談のお願いを提出しました。

9月26日に署名記者である大家俊夫氏より、是非面談して意見交換したい旨のメールを受け取りました。

その後、面談日程を調整してきましたが、多忙とのことでなかなか会えない状況が続いていました。

11月1日付で産経新聞社広報部より文書を受け取りました。当初は面談予定だったが、この文書を回答とするとのことでした。

≪FSINからのレター≫

2013年9月24日

産経新聞東京本社 編集局長

小林 毅 様

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

8月6日付け記事 「 【STOP!メタボリックシンドローム】

天然ジュースで食事のバランスを」 に関する質問と面談のお願い

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立 場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者 、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

8月6日付けの貴紙「【STOP!メタボリックシンドローム】 天然ジュースで食事のバランス を」と題した記事につき、いくつか質問がございます。また、面談での意見交換を希望します。 お忙しいところ恐縮ですけれども、10月8日までに質問へのご回答及び日程調整のためのご連絡を いただきたくお願い申し上げます。

本状は、FSINのホームページ等において公開しますので予めご了承ください。また、報道を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開した いと考えております。

また、記事中で紹介されている根来秀行氏にも本状を送付していることを申し添えておきます。

◆記事の概要

記事は、メタボリックシンドローム対策として野菜ジュースでも一定の効果が期待できること 、中でも添加物の入っていない天然ジュースは体への負担が少なく、メタボ予防のほかアンチエイジングにもよいと専門家が推奨していることを伝えるものです。大家俊夫氏の署名記事となっています。

専門家として、米ハーバード大医学部客員教授の根来秀行氏の解説を中心に構成されています 。また、ガッツの会及びベジポート有限責任事業組合による、添加物が含まれていない天然ジュースを紹介されています。

以下に、記事内容の一部を引用します。

(リード部分)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策には、野菜を中心にバランスの良い食事を心掛けることが大切だ。ただ、野菜が苦手の人などには次善の策として、野菜ジュースでも一定 の効果が期待できるという。中でも添加物の入っていない天然ジュースは体への負担が少なく、 メタボ予防のほか、アンチエイジング(抗加齢)にも良いと専門家は推奨している。


(根来氏による解説の一部)

米ハーバード大医学部客員教授の根来(ねごろ)秀行さんも「野菜や果物のジュースでも量は減るが栄養素や食物繊維を補給できる。保存料など添加物の入っていない野菜や果汁100%ジュー スなら体にとってさらに良い」と解説する。

それは、「保存料の性質は食物を人工的に腐らないようにする働きがあるが、摂取すると体内 で大量の活性酸素を生じさせる」からだ。新著『長生きの健康常識はウソばかり』(エクスナレ ッジ、1470円)で保存料に触れている根来さんは「代謝の妨げになったり老化の原因になったりする」とも指摘する。


(天然ジュース紹介の一部)

添加物が含まれていない天然ジュースは、子育て世代や健康を気にする中高年を中心に人気を 呼んでいる。秋田県横手市の「ガッツの会」は、無添加で100%ストレートのリンゴジュースを製 造・販売している。同会代表の籠谷(こもりや)満昌さんは「一部かすは除外しているが、リン ゴは丸ごと搾っている。パックのまま冷やすとシャーベットのようになる」と話す。

「ベジポート有限責任事業組合」(千葉県旭市)のニンジンとトマトジュースは、最後の工程 まで保存料や着色料などは一切加えず、瓶詰めした後に高温殺菌するのが特徴だ。同組合のジュ ースは産経健康倶楽部でも扱っている。

◆食品添加物について

どのような化学物質の作用も、その量で決まります。食品添加物は、ヒトの健康に影響のない量で、食品において有用な効果を発揮するものだけが使用を許可されているものです。具体的には、ADI(一日摂取許容量:ヒトが一生食べ続けても健康への悪影響がないと認められた一日あたりの摂取量)に基づいて使用できる食品や量(使用基準)が定められています。実際に摂取されている量も調査されており、通常の食生活で食品添加物がヒトの健康に悪影響を及ぼすとは考えられません。このようなリスク評価や管理は、内閣府食品安全委員会や厚生労働省などにより科学的根拠に基づいて進められています。

記事中では「添加物」「保存料」といった呼称で言及されていますが、これらは全く異なる複数の物質の総称です。一方、健康に影響する量は物質ごとに異なります。従って、健康影響に言及される場合には、これらの呼称で一括りにするのではなく、該当する物質の名称と健康影響について具体的に言及されるべきです。科学的根拠による裏づけも必須です。

食品添加物として使用されている物質は、天然の食品に成分として含まれているものが多いことが知られています。野菜や果汁100%ジュースにも、食品添加物として使われている物質がもともと含まれています。

記事中では保存料にも触れられています。保存料は食品の腐敗や食中毒といったリスクを低減させるために使われるものであり、食品添加物として前述のように安全性も担保されています。保存料を忌避する風潮は、食の安全を損ないかねないものです。

◆食品安全情報ネットワーク(FSIN)の意見と質問

記事は、食品添加物である保存料について、代謝の妨げであり、老化の原因にもなると述べています。これは食品添加物のリスク評価・管理の実際と異なるものです。

また、添加物の入っていない天然ジュースが体への負担が少ないとも述べていますが、これは 食品添加物のリスク評価・管理の実際と異なるだけでなく、天然ジュースにも食品添加物と同じ 化学物質がもともと含まれていることを考慮すると矛盾があり不適切な内容です。

記事ではこれらは専門家の解説として紹介されていますが、専門家として登場するのは根来氏のみです。根来氏はアンチエイジングの専門家であろうと思いますが、食品添加物の専門家ではありません。

記事において食品添加物に言及される場合には、食品添加物の専門家に取材をされるべきと考えます。そして、他分野(今回はアンチエイジング)の専門家の言葉に矛盾や誤りがあれば、記事への掲載は控えるべきと考えます。


以上より、今回の記事は読者に食品添加物のリスクについて誤った情報を提供するものであり 、根拠なく不安をあおる点で問題だと考えます。食品安全情報ネットワーク(FSIN)として次の5 点を要望しますので、10月8日までにご回答をいただきたくよろしくお願いします。


  1. この記事は野菜ジュースのベネフィットについて伝えることが主旨であり、食品添加物についての情報がなくても成立したものと思います。記事において食品添加物に言及された意図を教えてください。
  2. 記事の作成過程において食品添加物の専門家に取材されたか教えてください。もし取材されていない場合はなぜ取材することなく食品添加物に言及する記事を掲載されたかも教えてください 。
  3. 記事において添加物が含まれていない天然ジュースをアピールされた意図を教えてください。
  4. MSN産経ニュースのサイト上にこの記事が掲載されています (http://sankei.jp.msn.com/life/news/130806/bdy13080608210003-n1.htm)。これの削除あるいは食品添加物について正確な情報の追記を要望します。
  5. 貴紙において今後、食品添加物について正確な情報を提供していただくためのお役に立ちたいと考えております。食品安全情報ネットワーク(FSIN)に参加している食品添加物の専門家をまじえて意見交換の場を設けていただくことを要望します。

以上

≪産経新聞社広報部からの文書≫

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

事務局 佐仲 登 様

産経新聞8月6日付「【STOP!メタボリックシンドローム】天然ジュースで食事のバランスを」の記事について、貴重なご指摘やご意見をいただき、誠にありがとうございます。

上記の記事はメタボリックシンドロームの対策について読者に紹介しようと書かれたものです。それ以外の意図をもって取材、掲載はしておりませんので、ご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

当初は貴事務局の方と面談の予定でしたが、この文書を回答とさせていただきます。今回のご指摘、ご意見を真摯に受け止め、今後の取材活動の参考にさせていただきます。

平成25年11月1日

産経新聞社広報部