女性セブンへの質問状

《海外では食べることが禁止されている「日本の食品」リスト公開》

2018年11月26日

女性セブン 編集人

川島 雅史 様

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

《海外では食べることが禁止されている「日本の食品」リスト公開》

と題した記事についての質問状

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なボランティア・ネットワーク組織です。

貴誌「女性セブン」(2018年12月6日号)に掲載された《海外では食べることが禁止されている「日本の食品」リスト公開》と題する記事につき、質問がございます。また、面談での意見交換を希望します。お忙しいところ恐縮ですが、12月10日までに質問へのご回答及び日程調整のためのご連絡をいただきたくお願い申し上げます。

今回の記事には多くの事実誤認があると考えていますが、特に一般の関心が高いと思われる「ホルモン剤とがんの部分」に限って、質問させていただきます。

質問1 「ホルモン剤の大量検出」について

記事では、藤田博正医師の話として、「米国では成長促進剤としてエストロゲンを投与します。・・日本では使用が認められませんが、輸入肉からは大量に検出されます」とあります。

しかし、厚生労働省の輸入牛肉の検査結果(2006年4月~2017年3 月)によると、ホルモン剤(ゼラノールや酢酸トレンボロンなど)の残留基準値は肉の部位で異なるものの、米国産、豪州産とも、どの部位でも基準値を超えて検出されたことは一度もありません。「大量に検出された」というコメントを記事にするからには、当然ながら、記事を書いた記者は元のデータを確認なさったうえで記事に載せたものと考えます。どのようなデータ、論文を根拠になさったかを教えていただけますか。

「大量に検出されます」という現在形の表現から、いまも大量に検出されていると読めますが、どれくらいの数値が検出されるのでしょうか。その数値を教えていただけますか。

また、記事では「アメリカ産牛肉は国産牛肉より赤身で600倍、脂肪で140倍もエストロゲン濃度が高かった。これは深刻な数字です」(藤田先生)とあります。

ひと口に牛といっても、雌牛か、去勢の雄牛か、また成長の時期によってエストロゲンの値は大きく変動します。そのあたりの条件も含めて、どういう国産牛の600倍、または140倍かに関して、相対比較の数字ではなく、それぞれの絶対値を教えていただけますでしょうか。対照となる国産牛の測定値が果たして科学的に信頼できる数値かが重要だと考えるからです。

質問2 「ホルモン剤使用と乳がん」について

記事では、藤田博正医師のコメントとして、「その後、日本人の牛肉の消費量が5倍に増加すると、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がんといったホルモン依存性のがんが、5倍に増えた。欧州と日本の状況から、ホルモン剤使用牛肉とがんの発生の関係が強く疑われます」とあります。

当然ながら、記者は、日本人の牛肉消費量増加とホルモン依存性のがん増加との因果関係を示す科学論文があることを確かめたうえで藤田氏のコメントを載せたのだと考えますので、その根拠となる科学論文を教えていただけないでしょうか。

参考までに、乳がんなどの死亡率は、牛に成長ホルモン剤を使っている米国や豪州でも減少傾向にあります。また、ホルモン剤とがんの関連については、以前に藤田博正氏と共同研究を行っていました半田康氏(北海道大学)らの国の科学研究費助成事業(2011~2012年研究)研究成果報告書では、「ホルモン剤使用食肉の摂取とホルモン依存性がんの発生率の関連については結論を出すことができなかった」との見解が出ています。

質問は以上の2点です。

牛肉はいまや日常的な食べ物です。それを食べて、ホルモン性のがんが増えるかどうかという言説は国民に大きな影響を与えます。もし記事に載ったような言説に科学的根拠がないとしたら、改めて科学的な情報を読者のみなさんに伝える使命があると考えます。報道機関として的確な情報を発信していただくためにも、ぜひ、私たちの疑問に誠実に回答してくださるようお願いします。

本レターは、FSINのホームページ等において公開するほか、主要新聞社や主要週刊誌、主要テレビ局など約20社にも送りますので予めご了承ください。また、メディア記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開させていただきます。