アエラへの訂正要望

「真実に目をふさぐ『政治的安心』機関」

アエラ2010.3.1号に『日本の聖域 第6回 食品安全委員会 真実に目をふさぐ「政治的安心」機関』と題する記事が掲載されました。

題名からもわかるように、この記事は食品安全委員会に対するいわれのない批判であり、アエラに求められる品性を欠いた大変に残念な内容です。これを読んだ読者が日本の食の安全に対して大きな誤解をする可能性もあることから、FSINとして何らかの行動を取るべきであろうとの結論になりました。そこで記事の中に登場し、批判されている食品安全委員会専門委員会座長である鈴木勝士氏の話を聞いたところ、以下の問題を指摘されました。

1.担当課長の発言に含まれる事実誤認

食品安全委員会農薬専門調査会の担当課長に対する取材の内容は事実とは異なるものであり、鈴木氏に対するいわれのない非難になっています。

2.「バランス発言」問題

記事の中で引用している「農薬を使うメリットは大きい。ある程度、毒性とのバランスをとらせてもらっている。」という鈴木氏の発言は、農薬を使用するときの常識的な考え方を述べたものです。しかし記事ではこれを事実と異なる解釈をして、『業界との「バランス」を念頭において審議している・・』と記述しています。これは鈴木氏の名誉を毀損するものです。

3.原稿確認を巡る約束違反

鈴木氏は2009年1月に長谷川記者の取材を受け、原稿確認を条件に取材に応じました。それから1年以上が経過した2010年2月に記事が掲載されましたが、原稿確認の約束が最後まできちんと履行されませんでした。

この件はFSINの活動目的である「不適切な記事に対する対応」に当たるとともに、鈴木氏の名誉毀損問題も含むものです。そこで、この件の対応は鈴木氏が弁護士と相談しつつ編集部と話し合いを重ね、FSINはこれを支援するという形で進めることにしました。

その結果、8月に編集長から以下の回答がありました。

  1. 原稿確認を巡って、担当記者が鈴木氏との間で交わした約束を最後まできちんと履行しなかった点は大変遺憾であり、率直にお詫びする。
  2. 鈴木氏の「バランス発言」の部分については、指摘されたように誤解を招きかねない表現・記述であり、直近のアエラに以下のような訂正記事を出す。

おことわり

本誌2010年3月1日号「連載日本の聖域⑥ 食品安全委員会」の記事で紹介した農薬専門調査会座長・鈴木勝士氏の「農薬を使うメリットは大きい。ある程度毒性とのバランスを取らせてもらっている」(37ページ4段目)の発言は、農薬を使うことによって害虫を駆除できる利点と、その副作用としての毒性のバランスを考慮するという一般論を述べたものであり、この発言の後に記述した「業界との『バランス』」を示す発言ではありません。誤解を招く記述であり、鈴木氏はじめ関係者にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

担当課長の発言も含めて、記者が事前の約束をきちんと履行していれば記事は事前に是正できたと思いますが、この点も含めて鈴木氏は名誉回復が行われるものと判断して、編集長の提案を受け入れました。

アエラ9月6日号に、上記の訂正記事が掲載され、問題解決の援助を行ったFSINに対して鈴木氏から感謝の意が表されました。