信濃毎日新聞、静岡新聞への情報提供およびお願い

「遺伝子組み換え菜種の自生拡大」

2013年1月28日付の信濃毎日新聞「遺伝子組み換え菜種の自生拡大」という記事に関し、 同年2月4日付でFSINからレターを郵送しました。

翌2月5日に信濃毎日新聞編集応答室様よりご回答のメールをいただきました。

なお、1月21日付静岡新聞にも「組み換え菜種自生拡大、交雑も」という同様の記事が掲 載されていたため、2月4日付で同内容のレターを郵送しました。静岡新聞様からはまだご回答を いただいておりません(2013年2月16日現在)。

当該記事は共同通信様からの配信に基づくことが明らかとなりましたので、2月8日付で共同通信様にもレターを郵送しました。こちらは別ページに掲載しています。

<FSINからのレター>

2013年2月4日

信濃毎日新聞 編集局長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

貴紙1月28日付「遺伝子組み換え菜種の自生拡大」

記事に関する情報提供およびお願い


時下ますますご清祥のこととお慶 び申し上げます。貴紙が日々取り組まれるわかりやすい情報提供活動は読者にとって大変有益な ものと認識しております。

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立 場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者 、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴紙1月28日付「遺伝子組み換え菜種の自生拡大」記事に関して、以下の事実があることをお知 りおきください。もし可能であれば追加報道をお願いしたいと考えております。

【情報提供】

1.2010年に行われた同様の報道について

記事中の河田昌東氏は2010年にも遺伝子組換えナタネがアブラナ科のイヌガラシ(野生植物) と交雑した植物が発見されたと主張し、各紙で報道がなされました。河田氏らが分析を依頼した 国立環境研究所による分析の結果、当該植物がイヌガラシとの交雑個体であることは否定されま した。(添付資料)。しかし、この結果はほとんど報道されなかったため、遺伝子組換え作物と 野生植物が交雑した植物が発見されたと思っている読者がいます。

2.環境安全性評価について

輸入品を含めて日本の市場で流通する遺伝子組換え食品の安全性は、食品や飼料としての安全性 だけでなく、環境中の安全性についても評価が行われ、すべての評価をパスしたものだけが流通 できる仕組みが法律で定められています。環境評価(生物多様性への影響評価)では、「遺伝子 組換え植物が野生植物を駆逐しないか(競合における優位性)」、「野生の動植物や微生物など が減少しないか(有害物質産生性)」、「近縁種が交雑種に置き換わることがないか(交雑性) 」について評価が行われており、今回記事に出てくる遺伝子組換えナタネについても、これらす べての評価で問題がないことが確認されています。

3.環境省および農林水産省による調査について

環境影響に対する法規制が適正に行われているか確認するために、環境省は平成15年度より、農 林水産省は平成18年度より、国内での遺伝子組換えナタネの分布状況を調査しています。

環境省のサイト:http://www.bch.biodic.go.jp/natane_1.html

農林水産省のサイト:http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/120912.html

これらの調査では、遺伝子組換えナタネと在来ナタネとの交雑は確認されていますが、記事に ある「カラシナとの交雑」は確認されていません。数個体の遺伝子組換えナタネが自生している ような条件下ではカラシナとは交雑がたいという論文もあります(Tsuda et al. 2012)。また、 遺伝子組換えナタネの生育は確認されていますが、生育範囲の拡大は見られていません。

【お願い】

貴紙が報道された今回の調査結果を読者が適切に理解するためには、環境省や農林水産省など 国の機関による見解も情報として必要だと考えます。ぜひ環境省や農林水産省などの関係部署へ の取材を行なっていただき、当該市民団体の調査結果の妥当性をご確認ください。その上で本件 について追加報道をお願いいたしたく宜しくご検討の程お願い申し上げます。

環境省 問合せ先

自然環境局野生生物課外来生物対策室

電話番号:03-3581-3351

農林水産省 問合せ先:

消費・安全局農産安全管理課

担当者:組換え体管理指導班 吉尾、勝田

電話番号:03-6744-2102


なお、本質問状はFSINのホームページ等で公開いたします。また、情報の公開性を担保するた めに、貴紙のご対応についても公開したいと考えていることも予めお伝えいたします。

以上

<信濃毎日新聞編集応答室からの回答>

食品安全情報ネットワーク事務局

蒲生恵美様

本日、配達証明の郵便をいただき、拝読しました。趣旨は担当部署に伝え、今後の参考にさせ ていただきます。

なお、ご指摘の記事は、共同通信の配信を掲載したものです。弊紙に目を通していただき、あり がとうございます。

信濃毎日新聞編集応答室