日本人間ドック健診協会への質問状

「健康読本『もっと』」

<概要>

NPO法人 日本人間ドック健診協会が編集 発行している「健康読本『もっと』」について、2010年8月19日付で公開質問状を提出し、同年9月15日付で「改定時に正すべきところは正す」とのご回答をいただきました。

同年10月8日付で重ねて要望書を提出し、「改定までは訂正の紙をはさむこと」、「改定版をFSINにも送付すること」を求めました。

これに対する文書での回答は得られませんでしたが、同年11月16日に電話にて、「都合により紙をはさむことはできないが改定版の送付は約束する」との方針を確認しました。

<FSINからの質問状>

2010年8月19日

NPO法人 日本人間ドック健診協会

理事長 笹森 典雄殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

健康読本「もっと」への公開質問状

はじめてご連絡を差し上げます。

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴協会が編集発行されている冊子「健康読本『もっと』」における、「食品添加物を控えましょう」(118-119ページ)について質問いたします。

【質問】

  1. 現在流通している食品添加物について、「人体に健康を及ぼす危険も!」をはじめ、人体において毒性を発現する疑いがあるとの記載が見られます。その科学的根拠をお示しください。
  2. 「一つの加工食品を長期的に継続して食べると問題を生じる恐れがあります」と記載されています。食事はいろいろな種類をバランスよく摂るのが基本であり、一つの加工食品を食べすぎると問題を生じるのは食品添加物とは関連がないと考えられます。このことについて貴協会の考え方を教えてください。
  3. 「添加物の基礎知識」(119ページ)の資料として「食品添加物辞典」が挙げられています。この資料の、出版社、出版年、著者等を教えてください。あわせて、「食品添加物辞典」において「添加物の基礎知識」にあるような危険性が、人体に対して指摘されているのか、なぜこの本を資料に選んだのか教えてください。
  4. 「無添加食品を紹介した本やホームページなどで知識を深める」ことをアドバイスされていますが、いわゆる「無添加食品」が他の食品よりも健康によいとのアドバイスでしょうか。厚生労働省や内閣府食品安全委員会のホームページを推薦しないのはなぜでしょうか。
  5. 食品添加物は、食品安全基本法および食品衛生法に基づいて、内閣府食品安全委員会および厚生労働省によって、ヒトの健康に影響のない量で、食品において有用な効果を発揮するものだけが使用を許可されています。貴協会はこのような政府の食品安全管理体制を否定される立場であるのか教えてください。

【意見】

どのような化学物質の作用も、その量で決まります。食品添加物は、ヒトの健康に影響のない量で、食品において有用な効果を発揮するものだけが使用を許可されています。ADI(一日摂取許容量:ヒトが一生食べ続けても健康への悪影響がないと認められた一日あたりの摂取量)に基づき、必要に応じて使用できる食品や量(使用基準)が定められており、実際に摂取されている量も調査されています。このようなリスク評価や管理は、内閣府食品安全委員会や厚生労働省などにより科学的根拠に基づいて進められています。

ADIを設定する際には、動物実験におけるNOAEL(最大無毒性量)が根拠に用いられます。NOAELを求めるために、実験動物に高濃度の化学物質を投与し、毒性を発現させます。多くの本はこの毒性を記載していますが、実際に食品添加物として使用する量はADI以下であり、一生食べ続けても健康への悪影響がないことを記載した本は多くありません。そしてこのような状況が誤解を広げています。食品安全委員会や厚生労働省のホームページから正しい情報を入手して頂きたいと思います。

国民の健康を増進しようとする貴協会の活動を私たちは高く評価しています。しかし、そのような有益な活動を続ける貴協会の情報に誤りがあればその影響は大きく、貴協会の信頼性にもかかわる問題と考えて質問させていただきました。ここに指摘させていただいた記載に間違いがあることを確認された場合は、冊子の改訂を要望します。

ご多忙のこととは存じますが、事の重要性に鑑みて折り返しのご回答をお待ちします。

なお、本質問状はFSINのホームページ等で公開いたします。また、貴協会のご対応についても公開したいと考えていることも予めお伝えいたします。

以上

<日本人間ドック健診協会のご回答>

2010年9月15日付で、特定非営利活動法人 日本人間ドック健診協会 理事長 笹森 典雄 様より書面でご回答いただきました。

回答部分の全文を以下に記載します。

本協会は人間ドック健診により国民の健康増進に向けた啓発普及を理念として活動しており、さらに社会に貢献することを目的とした団体でございます。

本協会の健康読本「もっと」は会員施設の医師、看護師、保健師、管理栄養士、企画事務局の共同作業により人間ドック健診を普及させるために受診者に分かりやすく解説しようと作成したものでございます。

この度、唐木英明様よりご指摘いただいた箇所については真摯に受け止め、正すべきところは正し、次回改定(約1年以内)までに結論を出す所存でございます。

以上

<FSINからの要望書>

2010年10月8日

NPO法人 日本人間ドック健診協会

理事長 笹森 典雄殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

健康読本『もっと』についての要望書


このたびは8月19日付の当会からの公開質問状に、9月15日付でご回答いただきありがとうございます。

「約1年以内に正すべきところは正す」とのご主旨でしたが、これに関連して、下記のように要望させていただきますのでよろしくご検討ください。

なお、本要望書はFSINのホームページ等で公開いたします。また、貴協会のご対応についても公開したいと考えていることも予めお伝えいたします。

不適切な記載を含む健康読本『もっと』が今後1年近く配布されることは、多くの人に誤解を広げることになります。従って、健康読本『もっと』の回収が望ましいと考えますが、そこまで要望するものではありません。代案として、改定版に切り替えるまでの間、次のような事項を記載した紙を同時に配布すること、この措置は可及的速やかに実施することをお願いします。

    1. 「食品添加物を控えましょう」(118-119ページ)の記載には誤りがあり、次回改定において修正を予定していること。
    2. 通常の食生活では、食品添加物によって健康に危険を及ぼす可能性は極めて低く、食品添加物を控えるように意識する必要性はないこと。
    3. 「無添加食品」が健康に良いという科学的な根拠はないこと。
    4. 食事はいろいろな種類をバランスよく食べることが大切であること。

なお、上記の配布用の紙と健康読本『もっと』の改定版を当会にも1部ご送付くださいますようお願いします。

以上