読売新聞への意見書

「「遺伝子食品」表示基準緩和 TPPの対象外」

2012年4月3日

読売新聞 編集局長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

3月22日夕刊2面、「遺伝子食品」表示基準緩和 TPPの対象外

と題する記事について公開意見書

はじめてご連絡を差し上げます。

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴紙3月22日夕刊2面、「遺伝子食品」表示基準緩和 TPPの対象外、と題する記事において、遺伝子組み換え食品の安全性と表示制度との関係について、誤認を与える表現がありますので、ご連絡します。

記事では、TPP(環太平洋経済連携協定)締結に向けた交渉で、遺伝子組み換え食品の表示基準緩和が交渉の対象外となっていることがわかった、と伝える中で、表示基準の緩和で食の安全が脅かされる懸念は遠のきそうだと説明しています。これは、遺伝子組み換え食品の安全性が表示制度によって担保されている、と誤った理解を読者に与えます。

遺伝子組み換え作物の食品安全性は国際的な安全性評価基準に基づき、各国の法律において行われており、安全性審査を経て、認可されたものが流通するという仕組みが整備されています。日本と同様に、米国でも、この国際基準に基づいて、安全性評価を行っています。一方、日本の遺伝子組み換え食品表示制度は、安全性が確認された遺伝子組み換え食品が流通する際に、食品の内容を消費者に明らかにし、消費者の選択に資する観点から導入されたもので、表示制度と安全基準は異なります。表示が安全性を保障するものではありません。

この国際的な安全基準のもとで、日本は1996年に輸入が初めて認可されて以来、16年にわたり、推定値で年間約1,600~1,700万トンの遺伝子組み換え作物(これは日本国内のコメ生産量の約2倍に相当します)が輸入され、食品原料や飼料として消費されています。そのほとんどが米国からの輸入で、健康被害などは一度も報告されておりません。

以上今後の報道において参考にしていただければと思います。なお、本状はFSINのホームページ等で公開いたしますことも、予めお伝えいたします。

以上