テレビ東京への要望書

「たけしのニッポンのミカタ!」

≪経緯≫

2013年7月12日

「たけしのニッポンのミカタ!」において、遺伝子組換えに関して国内外ですでに科学的に否定されている実験結果を紹介し、食の安全性について国民の不安をあおるような放映内容がありました。

同年8月6日

食品安全情報ネットワーク(FSIN)では、正しい情報提供等を求める要望書を番組プロデューサー宛に提出しました。

同年8月22日

番組プロデューサーからFSIN宛にレターがありました。

≪FSINからの要望書≫

2013年8月6日

テレビ東京

「たけしのニッポンのミカタ!」

プロデューサー 高砂佳典様

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

7月12日放映「たけしのニッポンのミカタ!」での報道に関する要望書

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

7月12日に放映された「たけしのニッポンのミカタ!」において、ナレーター及び出演者による次のような内容がありました。

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ナレーター:

それは、200匹のラットに2年間遺伝子組換えトウモロコシを与え続けるというもの。その結果、ラットに思わぬ異変が。普通のトウモロコシを食べたラットに比べ、オスに4倍もの腫瘍が。また、メスの80%に乳がんが発生した。

セラリーニ教授(フランス カーン大学):

世界中の政府が、長期の動物実験を義務付けないまま、遺伝子を操作した商品を子供たちに食べさせているのが現実だ。

ナレーター:

実験終了と同時に公開されたこの映画は世界中に大きな波紋を投げかけた。

垣田達哉氏(食品問題評論家):

物が安いということは、それだけチェックをしてないから、安いものが入ってくる訳で、そういうものとじゃあ今まで意外と安全面ていうのは、日本は守られているけども、そういったものが少しづつほころびが出てくると、まあそう言う可能性、どっちを選ぶかということになってくる。

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(FSINにて放映内容を聞き起こしました)

セラリーニ氏の実験は、日本やEU も含めた多くの公的な安全性審査機関、毒性学の専門家等によって、その方法と結論の科学的妥当性が否定されています。200匹のラットを使った実験であるとのナレーションを聞くと信頼性の高い大規模実験が行われたかのように思えるかもしれませんが、実は意味のない群設定があったり、1群当たりでみると雌雄各10匹のラットしか割り振られていなかったりと、科学的には極めて不十分な実験と専門家は述べています。これらの関連情報については別紙にとりまとめておりますのでご参照ください。

また、垣田氏の発言は、安全面でチェックが不十分な遺伝子組換え食品が今後日本に入ってくる可能性があるとの趣旨ですけれども、これも事実を十分に踏まえていないものです。

遺伝子組み換え作物は、国際基準に基づき、各国が科学的に安全性評価を行い、安全性が確認されたものだけが流通を認められています。米国でも安全性評価は行われており、日本では食品安全委員会が評価し、厚生労働省が認可しています。この安全性評価に基づき、日本は年間約1,600万トンの遺伝子組み換え作物を輸入していると推定され、米国産の遺伝子組み換えトウモロコシの輸入量は2012年で約980万トン※と世界一ですが、1996年から輸入が開始されて以来、健康被害などは報告されていません。

※農林水産省作物統計、財務省貿易統計、米農務省、国際アグリバイオ事業団のデータからの推計値。

こうした事実を伝えることなく、国内外ですでに科学的に否定されている実験結果を紹介し、食の安全性について国民の不安をあおることは問題だと考えます。FSINとして、次の2点について要望いたしますので、8月23日までにご回答をいただきたくよろしくお願いします。


  1. 番組でこの情報を取り上げた背景や目的を教えてください。
  2. 貴番組において正しい情報を提供されることを要望します。つきましては、その可否および可能な場合はその方法を教えてください。


なお本状は、FSINのホームページ等でも公開いたしますので予めご了承ください。また、情報の公開性を担保するために、貴社のご対応についても公開したいと考えていることも予めお伝えいたします。

以上

別紙:セラリーニ氏の実験についての情報提供

FSINでは、科学的実験が発表された直後から、国内外の研究者から疑問の声があがっている事実をサイエンス・メディア・センターhttp://smc-japan.sakura.ne.jp/と協力し報道関係者に情報提供しました。また、日本の毒性学の専門家である、青山博昭博士(一般財団法人残留農薬研究所毒性部長)による「動物試験の条件や設計に大きな不備があり、得られた結果を論理的に解釈することも、それらの結果に基づいて遺伝子組み換えトウモロコシの安全性を科学的に議論することもできない」とのコメントを公開しました。

以下のFSINのサイトで詳細をご確認いただけます。

https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/gm_maize

その後、日本の食品安全委員会、および欧州食品安全機関はこの実験について、それぞれ、以下のように結論付けています。

内閣府食品安全委員会 2012年11月12日

「基本的な試験デザインを欠いており、安全性を再評価する必要性を示唆する知見とはなり得ない。改めて食品安全委員会として食品健康影響評価を行う必要はない」。

http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20121112sfc&fileId=540

欧州食品安全機関(EFSA) 2012年10月4日

「研究の計画法、報告及び分析が不適切で、科学的に健全な結論とみなし得ず、EFSAがこれまで行ってきた遺伝子組み換えトウモロコシの安全性評価を見直す必要性はない」。

http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/121004.htm


なお、遺伝子組み換えの表示制度と安全性の基準とを混同した報道がときどき見られますが、遺伝子組み換え食品の表示制度は、安全性が確認された遺伝子組み換え作物について、流通する際に消費者の選択や情報提供のために設けられている制度で、安全性の基準とは異なります。

≪番組プロデューサーからのレター≫

2013年8月22日

食品安全情報ネットワーク(FSIN)事務局

代表 佐仲登様 蒲生恵美様

株式会社テレビ東京 制作局

「たけしのニッポンのミカタ!」

担当プロデューサー 高砂佳典

拝啓 時下益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。

この度は、弊社が7月12日に放送いたしました「たけしのニッポンのミカタ!」につきまして、貴重なご指摘およびご意見を賜り誠にありがとうございました。

今回の番組は、「知らないと怖い…TPP加盟は善か!?悪か!?」と題し、日本が「TPP」の協議に入る前の時点において、もし「TPP」に加盟した場合に我々の日常生活にどのような影響が生じるのかということを有識者の見解を元にシミュレートした企画内容でした。

番組放送の時点では「TPP」の協議には日本は参加しておらず、あくまでも識者の方々の予想されるテーマに沿って番組での紹介を行ったものです。

①遺伝子組み換え作物についてのコーナーはその中の一つの話題として取り上げたもので、遺伝子組み換え作物が世界的に広がりを見せる中、その安全性に疑問を投げかける映画「世界が食べられる日」があると知り、これを紹介したものです。

②今回の貴団体のご指摘、ご要望につきましては、これを真摯に受け止め、今後の番組作りに生かして参りますので、よろしくご了承ください。

以上、回答まで申し上げます。

以上