食品添加物と腸内細菌との関連についての意見

当FSINでは、「食品添加物と腸内細菌との関連についての意見」をとりまとめましたので公開します。

なお、本意見は佐賀新聞 編集局報道部長宛てに送付いたしました。

2012年4月12日

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

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食品添加物と腸内細菌との関連についての意見

2012年3月13日の佐賀新聞朝刊にて「免疫力高める生活は 藤田教授(東京医科歯科大学)が講演」と題した記事が掲載されました。佐賀新聞社主催の鳥栖政経セミナーにおける藤田紘一郎氏(東京医科歯科大学 名誉教授)の講演内容が要約されたものです。

その中で下記のような記載がありました。

藤田氏は「細胞を老化させる活性酸素を消して免疫を高めることが、がんやアレルギー、うつをなくす」と説明。免疫力を作るのは「70%が腸、30%が心」とし、腸内細菌の餌である穀類、野菜類などで食品添加物が入っていない物や発酵食品を取ること、笑ってストレスを抱えないことなどを挙げた。

FSINでは、以前にも藤田紘一郎氏の関与する記事「「きれい好き」の落とし穴」(2011年1月29日、日本経済新聞夕刊)に意見を述べたことがあります。

この記事では下記のような記載がありました。

腸内細菌は免疫を作り、自然治癒力の源泉にもなっている大事なものです。それなのに、日本人の体内では減っています。それは大地で育つ野菜や果実の摂取量が減る一方で、防腐剤や添加物入りの食べ物などをたくさん食べていることとも関係があると思います。

いずれの記事も、食品添加物、特に保存料(現在、食品添加物に防腐剤という分類はありません)の摂取が腸内細菌に悪影響を及ぼしているとして、免疫力の低下にもつながっていることを示唆するものです。同趣旨の記事が繰り返し掲載されていることから、食品添加物と腸内細菌との関連についてFSINの意見を改めて示します。

F S I N の 意 見

食品添加物の保存料が腸内細菌に悪影響を及ぼすとは極めて考えにくいことです。それは次のような理由によります。

  • 保存料は食品中の有害微生物の増殖を抑えるために使われるものです。保存料の種類により効果のある微生物は異なり、すべての微生物に効果があるわけではありません。また、ある量の微生物を抑えるにはそれに対応する量の保存料が必要です。微生物の量があまりに多い場合には、保存料は効果を発揮することができません。
  • 保存料は食品中で有害微生物の増殖を抑えるのに必要な最低限の量で使われます。これは、味やコスト面も考慮する必要があるからです。また、合成系の保存料の場合には使用できる上限量が定められています。
  • 食品中の保存料は、ヒトに摂取された時点で他の飲食物や体内の水分により希釈されます。また、多くの保存料は小腸までに消化、吸収を受けるので、大腸まで到達する場合でも摂取量の一部のみと考えられています。
  • 最低限の量しか使われていないものが、このように希釈されたり吸収されたりしますので大腸に到達するのは非常に少ない量です。そのように少ない量で、大腸内に大量に存在する腸内細菌に対して悪影響を与えることは極めて考えにくいことです。

なお、保存料は食の安全を守るために使われるものであり、昨今の保存料を避ける風潮は、食品の腐敗や食中毒といったリスクを高めかねないものと懸念しております。保存料を含む食品添加物が腸内細菌を減らし健康を損ねる原因になるとの誤解を読者に与える恐れがある記事が繰り返し掲載されることを、大変残念に感じています。

FSINにご連絡いただければ上記の件につき、より詳細な情報を提供させていただきます。

以上