東洋経済オンラインへの訂正要望

《「リスクのある小麦」の輸入を続ける日本の末路》

東洋経済オンライン 2021年8月27日付、《『リスクのある小麦』の輸入を続ける日本の末路》と題した記事について、9月15日付で東洋経済オンライン編集長宛の訂正要望レターを郵送しました。

9月30日付で東洋経済オンライン編集部より回答をいただきましたので公開しています。

《FSINからのレター》

2021年9月15日

株式会社東洋経済新報社

東洋経済オンライン編集長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

《『リスクのある小麦』の輸入を続ける日本の末路》と題した記事に関する訂正要望

メディアチェック集団「食品安全情報ネットワーク(FSIN)」は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なボランティア・ネットワーク組織です。

【訂正要望の要約】

8月27日付けの東洋経済ONLINEに掲載されました「『リスクのある小麦』の輸入を続ける日本の末路~発がん性指摘される農薬を効率重視で直接散布」と題する記事のタイトル、見出し及び本文の一部が修正されていますが、その理由が明確ではありません。なぜ、見出しを変更されたのでしょうか。その理由を示したうえで、改めて正しい内容を読者に提供するよう訂正を求めます。

【要望の理由と根拠】

今回の記事の変更は3カ所あったと思われます。下表の3カ所です。

これらの修正があったためか、修正後の記事の本文中に、

【2021年9月2日21時30分追記】初出時、小麦の輸出状況について不正確な部分がありましたので修正しました。

との内容が掲載されました。


この修正に関する説明は、記事タイトルと見出しに関する変更も含むのでしょうか。「不正確な部分がありました」という理由だけでは、記事中のどの内容が不正確だったかが分かりません。不正確な部分とはいったいどのような内容だったでしょうか。


なぜ、「『自国民は食べない』小麦を輸入する日本の末路」が、「『リスクのある小麦』の輸入を続ける日本の末路」に修正されたのでしょうか。読者に正しい情報を提供する使命をもつ報道機関として、どの記述が間違っていたのか、そして、正しい内容がどういうものかを読者に知らせるべきだと考えます。


【訂正要望事項】

報道機関の使命は、間違いがあれば、すみやかに訂正を出し、読者に正しい情報を提供することにあると考えます。上記の点について、貴誌のサイトで①記事タイトル及び見出しを変更した詳しい理由、②日本向けの小麦の輸出に関する正しい内容、を改めて掲載していただけますようお願い致します。


《訂正を求める背景の解説》

参考までにこの記事の背景に関する情報を解説します。


そもそも、この記事は、鈴木宣弘氏の著書「農業消滅」(平凡社)を紹介した記事だと思われますが、鈴木氏の著書を読むと、102ページに「なぜ、自国民が食べないものを日本に送るのか」との見出しで、「アメリカの穀物農家は、日本に送る小麦には、発がん性に加え、腸内細菌を殺してしまうことで、さまざまな疾患を誘発する懸念が指摘されているグリホサートを、雑草ではなく麦に直接散布している。・・・」との記述が見られます。


つまり、鈴木氏は自身の著書では「米国民が食べないものを日本に輸出している」との間違った内容を書いています。それにもかかわらず、この東洋経済オンライン記事に対して、読者から誤報との指摘があったため、鈴木氏はTwitterで「この記事はタイトルを含め東洋経済の編集部さんによるもので鈴木が書いたものではありません。日本向け小麦だけに散布しているわけではないので、拙著本文の「日本に送る小麦には」という表現は完全にミスリーディングですね。削除します」と書いています。


今回の修正は、これを受けての修正だろうとFSINは推測しています。しかしながら、こういう事情を一般の読者は知らないはずだと思われます。間違った内容を書いたのはそもそも鈴木氏自身であることを一般の読者に知らせることが必要だと考えます。


いうまでもなく、米国の農業生産者が日本向けの小麦だけに除草剤を散布しているという事実はありません。そもそも除草剤のグリホサートは小麦ではなく、雑草を枯らす目的で散布します。このことは米国、日本とも同じです。記事では「先に除草剤で小麦を枯らせて収穫する」とあります。確かに小麦が十分に枯れなかった場合には、枯らすために散布することもあります。しかし、収穫7日前までという厳しい条件が定められ、あらかじめ決められた残留基準値を超えないよう散布量もラベルに明記されています。しかもこの種の使用法はどうしても必要な場合のみであり、全体の3%にも満たない割合です(全米小麦生産者協会の資料参照)。


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このような経過から、見出しを変更した理由と訂正を加えた新たな説明(記事解説)が必要だと考えます。

御忙しいとは存じますが、9月28日までにご回答をいただきたく思います。回答は電子メールで事務局へお願いいたします。なお電話での問い合わせにも小島が応じます。

※本レターは、FSINのホームページ等において公開するほか、主要新聞社や主要週刊誌、主要テレビ局など約20社にも送りますので予めご了承ください。また、メディア記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開させていただきます。

《東洋経済オンライン編集部 9月30日付回答》

食品安全情報ネットワーク
小島正美様

平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。
9月15日付で東洋経済オンライン編集長宛てにいただきました
ご要望につきまして、以下ご回答差し上げます。

・ご指摘の記事についてですが
 当社の編集方針に基づいて修正いたしております。
 現在掲載の内容に事実関係の誤りはなく
 これ以上追記する必要を感じておりません。

以上となります。

何卒宜しくお願い致します。

株式会社東洋経済新報社
東洋経済オンライン編集部