日本経済新聞への意見書

「TPPを知る⑤」

2011年12月5日

日本経済新聞 編集局長殿

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

11月9日付け『TPPを知る⑤』における

食品安全基準と表示制度の取り扱いに関する公開意見書

はじめてご連絡を差し上げます。

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なネットワーク組織です。

貴紙11月9日朝刊5面、「TPPを知る⑤」において、日本の主な食品安全基準の例として、遺伝子組み換え食品の表示、食品添加物の表示制度の内容が紹介されておりますが、一部、誤解を招く部分がありますので、以下にご連絡いたします。

各国政府が食の安全を確保するための権利は、WTO(世界貿易機関)でも認められており、TPP交渉へ参加することが、日本独自の食品安全性基準の緩和へ直接的に繋がるわけではありません。 貴紙は当該記事においてこの事実を正確に伝えており、読者に正確な情報を提供していると考えます。一方で、日本の主な食品安全基準という一覧表で表示についての記載があり、食品安全基準と表示制度を混同されているようですので、情報提供させていただきます。

遺伝子組み換え作物の食品安全性は国際的な安全性評価基準に基づき、各国の法律において安全性審査を経て、認可されたものが流通するという仕組みが整備されています。米国においても、同じく国際基準に基づく安全性評価が行われています。この国際的な安全基準のもとで、日本は1996年に輸入が認可されて以来、推定値で年間約1,600~1,700万トンの遺伝子組み換え作物が輸入され、食品原料や飼料として消費されていますが、健康被害などは一度も報告されておりません。

一方、日本の遺伝子組み換え食品表示制度は、安全性が確認された遺伝子組み換え食品について、食品の内容を消費者に明らかにし、消費者の選択に資する観点から導入されたもので、表示制度は安全基準とは別のものです。表示と食品の安全性は直接の関連はなく、また、表示が安全性を保障するものではありません。

食品添加物についても同様です。安全性は、内閣府食品安全委員会や厚生労働省などにより科学的根拠に基づいて評価され、管理されています。すでに安全性の確かなものだけが利用されているので、たとえ表示ルールに変更があったとしても安全性、安全基準には影響ありません。以上今後の報道において参考にしていただければと思います。なお、本状はFSINのホームページ等で公開いたしますことも、予めお伝えいたします。

以上