HEALTH PRESSへの要望書

「目に見えない食品添加物のすべて」

HEALTH PRESSの連載「目に見えない食品添加物のすべて」について、5月13日にウェブサイト責任者との意見交換をお願いする要望書を提出しました。

食品安全情報ネットワーク(FSIN)では、通常は電話で宛先を確認するなどした上で、郵送(配達証明)にてレターを送っています。今回のHEALTH PRESSの場合は、記事に関する問い合わせは必ずウェブ上の問合せフォームから送るべきこと、電話での口頭質問には一切回答できないことが明記されていたことから、ウェブ上の問合せフォームから要望書を提出しました。

6月2日にHEALTH PRESS編集長よりご回答をいただきました。この内容に関する意見を、6月6日にFSINより送信しています。

参考URL:

≪FSINからのレター≫

食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し 、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々 活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による 横断的なネットワーク組織です。

貴サイトは、「マスメディアやネットに氾濫する多様な情報を選別して、わかりやすく解説」されることを掲げておられ、その趣旨には大いに賛同するものです。

しかしながら、連載「目に見えない食品添加物のすべて」(安部司氏)について科学的な立場から拝読しますと、適切に選別されていると考えられない情報が散見されます。

取り急ぎそのうちいくつかについて情報提供申し上げますが、貴サイトの責任者と面談での意見交換を希望します。

お忙しいところ恐縮ですが、ご返信は5月27日までに頂戴したくよろしくお願いします。

以下において≪≫内は記事からの引用部分を指します。

●第6回「規格基準が定められているから安心なのか?限りなくブラックに近い添加物」について

http://healthpress.jp/2015/02/post-1571.html

本記事では、≪添加物は基本的に「安全性試験」に合格したものだけが認可される。しかし、合格したものの中にも明らかに人体に悪影響を及ぼすものがあり、その数は決して少なくない。≫として、いくつかの事例が挙げられています。

例えば、英サウサンプトン大学の「いくつかの合成着色料を摂取した子どもに多動性行動が見られた」という報告が紹介されています。

しかし、欧州食品安全機関(EFSA)がこの研究を評価して、着色料の一日許容摂取量を変更する理由にならないとしたこと、つまり「明らかに人体に悪影響を及ぼすもの」と言えないことには、本記事では触れられていません。

●第9回「安全性が疑われる添加物の大量使用。うまく付き合うための3原則とは?」より

http://healthpress.jp/2015/04/3-3.html

本記事は、≪なぜ安全性が疑問視される添加物が使い続けられているのだろうか――。≫との書き出しで始まっています。

これは、以下のような添加物のリスク評価・リスク管理を十分踏まえていないものではないでしょうか。

  • 添加物は、ヒトの健康に影響のない量で、食品において有用な効果を発揮するものだけが使用を許可されている。
  • ADI(一日摂取許容量:ヒトが一生食べ続けても健康への悪影響がないと認められた一日あたりの摂取量)に基づいて使用できる食品や量(使用基準)が定められており、実際に摂取されている量も調査されている。
  • このようなリスク評価や管理は、内閣府食品安全委員会や厚生労働省などにより科学的根拠に基づいて進められている。

本記事で紹介されている3原則については、過去にホームページにて問題点を指摘しておりますので、そちらもご参照ください。

https://sites.google.com/site/fsinetwork/katudou/shokuiku#TOC-1

本問い合わせは、FSINのホームページ等において公開しますので予めご了承ください。また、ネット記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、貴社のご対応についても公開したいと考えております。

≪HEALTH PRESS編集長からの回答≫

2015/06/02

拝啓 時下益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。

この度は、健康・医療情報でQOLを高める~「HEALTH PRESS」の掲載記事に貴重なご意見を賜り誠にありがとうございました。

ご指摘のあった安部司氏の連載記事「目に見えない食品添加物のすべて」に関しまして以下のとおり回答いたします。

①人工着色料につきまして

欧州の人工着色料についての対応は、「疑わしきは規制する」という立場。記事はこのことを述べています。つまり「危害が出ないことは安全」という姿勢は疑問だと述べているにすぎません。この欧州との考え方の違いを閲覧者にわかってもらいたいと思います。

②添加物の安全性について

これまでも添加物の評価の変動が過去に60品目以上ありました。

例えば、コウジ酸、アカネ色素は2003年まで発ガン性はないと専門書には明記されていましたが、翌年再テストの結果、二者とも発ガン性で削除されました。記事はこうした側面を閲覧者に伝えようとしたものです。

今回の貴団体のご指摘につきましては、これを真摯に受け止め、サイト作りの参考としながら、今後もこうしたテーマに取り組んでいきたいと思います。

≪FSINからのレター(2通目)≫

2015年6月6日

HEALTH PRESS 編集長

佐々木 芳之 様

食品安全情報ネットワーク(FSIN)

http://sites.google.com/site/fsinetwork/

6月2日付のご回答について

このたびはご回答ありがとうございました。

いくつかFSINの意見をお伝えしますので、今後のご参考にしていただけますと幸いです。

まず、欧州における合成着色料への対応につき、次のようなご回答をいただきました。

≪ 欧州の人工着色料についての対応は、「疑わしきは規制する」という立場。記事はこのことを述べています。つまり「危害が出ないことは安全」という姿勢は疑問だと述べているにすぎません。この欧州との考え方の違いを閲覧者にわかってもらいたいと思います。≫

(佐々木様のご回答からの引用部分は≪≫で示します。以下同様です。)

先のFSINからの問合せでは、欧州食品安全機関(EFSA)が規制を変更しなかったことをお伝えしました。

欧州は「疑わしきは規制する」という立場をとることが多いですが、このケースでは「疑わしい」とされず、規制を変更する必要はないという判断をされています。表示で消費者に情報伝達するというのは、安全面から規制をするということとは違います。安全面で疑いがあれば、佐々木様がおっしゃる通り規制が変更されるはずです。

このあたりに、佐々木様ご自身にも誤解があり、読者をミスリードする記事になっているのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

次に、添加物の安全性につき、次のようなご回答をいただきました。

≪これまでも添加物の評価の変動が過去に60品目以上ありました。

例えば、コウジ酸、アカネ色素は2003年まで発ガン性はないと専門書には明記されていましたが、翌年再テストの結果、二者とも発ガン性で削除されました。記事はこうした側面を閲覧者に伝えようとしたものです。≫

添加物の安全性評価に変動があり、使用禁止になった添加物が多くあるのはご指摘の通りです。これは、添加物が科学や規制が発達する以前から(古いものは千年以上も前から)使われてきたことと関連しています。科学の発達や規制の整備によって適切に安全性が見直されてきたからこそ、使用禁止になった添加物があるのです。

先のFSINからの問合せでは、記事の書き出し部分「なぜ安全性が疑問視される添加物が使い続けられているのだろうか――。」について、添加物のリスク評価・リスク管理を踏まえていないのではないかと指摘させていただきました。

安全性が疑問視される添加物は使い続けられていません。

佐々木様もお書きになっているように、速やかに使用禁止となっていますので、やはり記事中の表現は適切でないのではないでしょうか。

FSINでは、貴サイトの掲げられている「マスメディアやネットに氾濫する多様な情報を選別して、わかりやすく解説」との趣旨は素晴らしく、より良い記事づくりにご協力したいと考えております。添加物をはじめ食の安全についての専門知識が必要な場合には、ぜひご相談ください。

先のFSINからの問合せでもお伝えしましたように、ネット記事を読み解き、判断する上で有用な情報として広く共有を図りたく、佐々木様のご回答を含めて公開させていただきます。

なにとぞFSINの活動趣旨にご理解を賜りたくよろしくお願いします。

以上