過去から未来へ

「過去から未来へ」


 「将来、自分はどうなっているのだろう。」

 皆さんは、こんなふうに思ったことはありますか。

 自分の将来を想像すると、「あの仕事をしていたい。」「あの人と仲良しのままでいたい。」など、色々なことが想像できると思います。将来の夢がある人も、考え中の人もいると思います。

 私は今、まさに考えている真っ最中です。自分の将来を想像したとき、「歌が好きだから、それに関わる仕事がしたい。でも、あん摩もやりたいし、事務の仕事にも興味があるし。」と色々考えてしまい、なかなか決めることができずにいます。

 しかし、一つだけこうなっていたいと思うことがあります。それは、人を大切にできる自分でありたいということです。

 私は、先天性の病で、片目にしか視力がなく、その視力も良いとは言えません。黒板や教科書は補助具を使わないと見えません。

 その事が原因で、保育園から小学校まで一部の同級生にいじめられていました。私物を隠されたり、暴言を言われたりしていました。だから、保育園も小学校も正直、行きたくありませんでした。でも、ほぼ毎日行きました。私には仲良くしてくれる友達がいてくれたからです。

 その友達の中に、保育園の頃に一緒にいてくれた男の子がいました。彼は、いつも明るくて、みんなにやさしい人でした。毎日私に、

「美緒、おはよう。」

とか、

「また、明日。」

と声をかけてくれました。唯一話せる男の子でした。

 しかし、小学一年生の夏休み、彼が事故で亡くなったという連絡がありました。当時の私は、その時の状況が理解できませんでした。話を聞いてもしっくりきませんでした。

 状況がしっかりと分かったのは、彼の家に行ったときでした。名前を呼んでも返事がありませんでした。いつもの元気な声が聞こえなかったのです。そこで、ようやく実感しました。もう二度と彼と話せないこと、会えなくなったことを理解しました。それと共に、涙が止まらなくなりました。悲しくて、寂しくて、怖くて、悔しくてたくさん泣きました。

 当時は、彼の事を優しい人だと思っていました。しかし、今は人を大切にする人に変わりました。

 誰にでも同じように接して、友達とけんかになっても相手を傷つけたり、乱暴にしたりすることはありませんでした。そんな彼の周りは、いつも笑顔が沢山ありました。

 自分も相手も笑顔でいられること、時にはけんかもするけど、また笑顔に戻ることができるのはいいなと、今は思うようになりました。

 今でも、あの時のことを思い出すと、涙が出ることがあります。しかし、当時の涙とは違います。辛いだけの涙や思いではなく、「彼が私に接してくれたように、私も人に接するようにしよう。」そう思います。

 彼は、私が人を大切にしたいと思える理由の一つになってくれたのです。

 本音を言えば、まだまだ苦手です。でも、決してあきらめたくはありません。これからもっと話せるようになって、いろんな人と関われるようになりたいです。

ご静聴ありがとうございました。