「大切な出会い」

「大切な出会い」 

 僕は、初対面の人と話すのが苦手だ。僕は小学校の頃から友達を作るのが苦手だった。人見知りで、見えにくさから人のことを覚えることが難しかった。相手の顔が見えにくいため、似ている声の人に話しかけてしまい、よく勘違いをしていた。人に話しかけるのがますます嫌になっていた。

「別に話さなくてもいい。話す必要なんかない。」

そんな気持ちだった。

 中学から盲学校に来た。先生や仲間の顔と名前を覚えられないんじゃないか。覚えたとしてもちゃんと話せないんじゃないか。不安だった。予想は的中した。僕は初めて会った先生や仲間とうまく話すことができなかった。

 そんな状態が一年以上続き、中学二年生になった。入学当初よりは人と話せるようになった。寄宿舎の先生とも明るく接することができるようになった。ただ、恥ずかしさからか、まだうまく話せなかった。うまく話せない自分が嫌だった。

 しかし、二年生になって、僕自身が大きく成長したと思う出来事があった。それは、ある理療科の先生との授業だった。その先生は僕と同じ弱視で、自立活動の勉強を一緒にした。iPhoneやiPadならではの便利なアプリや機能を紹介してもらったり、弱視ならではの体験談を話してもらったりした。その先生と僕はよく似た経験をしていた。僕と同じ気持ちになってくれた。僕の悩みを聞いてくれて、一緒になって打開策を考えてくれた。

その先生に言われたことがある。

「僕達は見えにくいからこそ、言葉が大事なんだ。うまく言えなくていい。自分の言葉で話して伝えるんだ。」

 僕はその先生との出会いをきっかけに大きく変わっていった。人と話すのが苦から楽に変わった。初めて会う仲間や学校、寄宿舎の先生、ブラインドサッカーのチームメイト、地域の人とも楽しく話すことができるようになった。

 その先生は、おととしの年度末に遠い地元へ帰ってしまった。寂しさもあるが、僕が人と話すきっかけを作ってくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだ。その先生のおかげで、人との出会いが自分を大きく変えることを実感できた。僕は、その先生から学んだことを生かして日常を楽しく過ごしたい。これからもたくさんの人と出会い、さらに成長していきたい。