PISA(Programme for International Student Assessment)
目的
義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る。
内容
読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野(実施年によって、中心分野を設定して重点的に調査)
あわせて、生徒質問紙、学校質問紙による調査を実施。
対象
調査段階で15歳3か月以上16歳2か月以下の学校に通う生徒(日本では高等学校1年生が対象)
調査実施年
2000年から3年ごとに実施。
結果の推移
日本のPISAの結果は、2000年の初回調査で読解力が8位(28か国中)と比較的低くく、その後は順位をさらに下げ、2003年と2006年は12位(30か国中)でした。しかし、2009年以降は順位が徐々に上昇し、2009年5位(34か国中)、2018年には読解力で1位(34か国中)を獲得しました。その後、2015年6位(35か国中)、2018年11位(37か国中)と下降しました。
数学的リテラシーは、初回2003年で4位(30か国中)、2006年は6位(30カ国中)、2009年4位(34カ国中)、2012年2位(34カ国中)、2015・2018年には1位(35カ国中)を獲得しました。
科学的リテラシーは初回2006年3位(30カ国中)という結果でした。2009年は2位、2012・2015年は1位、2018年は2位を獲得しました。
これらの結果を踏まえ、特に読解力については、読解の楽しさや読解への関心の低さが課題として指摘されており、PISAの結果を受けて、学校教育における読解力向上への取り組みが強化されていました。
2022年のPISA調査(PISA2022には、OECD加盟国37か国と、OECD非加盟国44か国の計81か国・地域が参加。PISA2022には、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)、約6,000人が参加。)で、日本は読解力で2位(全81カ国・地域中3位)に躍進しました。これは、2018年の11位から大幅な改善です。数学的リテラシーでは1位(全81カ国・地域中5位)。科学的リテラシーでも、1位(全81カ国・地域中2位)と高水準を維持しました。
今回の結果を受け、文部科学省は、読解力向上に向けたこれまでの取り組みを評価しつつ、更なる改善を目指し、学校教育現場への支援を継続する方針です。
考察
PISA2022で日本が好結果を出した要因は複数考えられます。
読解力向上への継続的な取り組み: 学校教育現場における読解力の重要性の認識が高まり、読解スキル向上のための指導法の改善や教材の充実が進みました。
ICT環境の整備と活用: コロナ禍でのオンライン学習経験を活かし、デジタル教材やオンライン学習プラットフォームを活用した学習が効果を発揮しました。
学習指導要領の改訂: 新学習指導要領で重視された「主体的・対話的で深い学び」が、生徒の読解力や思考力を育む上で効果があったと考えられます。
これらの要因が複合的に作用し、PISA2022での日本の好結果につながったと考えられます。
論考
PISAが見据えている未来の社会は、複雑化し、グローバル化が進み、絶えず変化する社会です。その中で、個人は以下のような資質・能力が求められると考えられています。
複雑な問題解決能力:
単純な知識や技能だけでなく、情報を統合・分析し、多角的な視点から問題を解決する能力。
さまざまな情報源から情報を収集し、その信頼性や妥当性を評価する能力。
異なる意見や文化を持つ人々と協力し、合意形成を図る能力。
批判的思考と創造性:
情報を鵜呑みにせず、根拠に基づいて情報を評価し、自分の考えを形成する能力。
既存の知識や情報を組み合わせ、新しいアイデアを生み出す能力。
変化に対応し、柔軟に思考し、行動する能力。
デジタルリテラシー:
デジタル技術を効果的に活用し、情報収集、コミュニケーション、問題解決などに役立てる能力。
デジタル情報の信頼性やセキュリティを評価し、適切に情報を管理する能力。
デジタル技術の進化に対応し、新しいツールやサービスを使いこなす能力。
グローバルな視野:
異なる文化や価値観を理解し、尊重する能力。
国際的な課題に関心を持ち、地球規模で解決策を考える能力。
多様な人々と協力し、国際社会で活躍する能力。
PISAは、これらの資質・能力を育成することが、未来の社会で個人や社会が成功するために不可欠であると考えています。そのため、PISAの調査内容は、これらの資質・能力を評価し、教育政策の改善に役立てることを目指しています。