近年、急速な進化を遂げている生成AIをはじめとする先端技術は、教育現場においても大きな可能性を秘めています。文部科学省も、情報活用能力育成の観点から、生成AIの教育利用について一定の方向性を示しており 1、本校においても、その適切な活用方法と探究学習への展開について、令和7年度に重点的に研究を進めてまいります。
生成AIの導入にあたっては、生徒の情報活用能力、特に情報を批判的に吟味する力(クリティカルシンキング)や倫理観を育成することを大前提とします。AIが生成する情報の特性(メリット・デメリット、得意なこと・苦手なこと、潜在的なバイアスなど)を生徒自身が深く理解し、それを踏まえて責任ある活用ができるよう指導します。この点において、AIリテラシー教育は情報モラル教育の重要な一部となります。
具体的な活用場面としては、探究学習における情報収集の補助、多様な視点からのアイデア生成の壁打ち相手、レポートや論文などの文章校正支援、プログラミング学習におけるコード生成やデバッグ支援などが考えられます。他校の事例では、3Dデザイン講座や、生成AIと3Dプリンタを活用したモノづくり体験 13、探究活動におけるデータ収集やプログラム作成への活用 14 など、多岐にわたる試みが見られます。本校においても、これらの事例を参考にしつつ、生徒の主体的な学びを深めるためのAI活用を探究します。
特に探究学習においては、テーマ設定の段階でのブレインストーミング支援、関連情報の効率的な収集・整理、多様な分析視点の提供、そして成果物の表現方法の提案など、AIが各プロセスで生徒の思考を刺激し、探究の質を高める「思考のパートナー」としての役割を果たすことが期待されます 9。
これらの取り組みを円滑に進めるためには、教員自身が生成AIの特性を理解し、教育活動に効果的に取り入れるためのスキルを習得することが不可欠です。そのため、教員向けのAIリテラシー研修を計画的に実施し、校内で活用事例や指導上の留意点を共有する体制を構築します。
生成AIの教育利用は、生徒の批判的思考力と倫理観の育成と表裏一体で進められるべきです。AIは強力なツールである一方、その出力には誤りや偏りが含まれる可能性があり、また、安易な利用は盗用や思考力の低下を招く危険性も指摘されています。生徒がAIの生成物を鵜呑みにせず、自ら情報の真偽を確かめ、多角的な視点から検討し、倫理的な配慮をもって活用する能力(情報活用能力 1 の一部としてのAIリテラシー)を養うことが、AI時代における教育の重要な責務です。「リテラシーや理解の違いによる学校間格差」28 が生じないよう、本校では生徒に「AIを使う方法」だけでなく、「AIと共に考える方法」を指導することを重視します。
また、生成AIは、生徒の探究学習を個別最適化し、その可能性を大きく広げることができますが、そのためには教員による適切な指導と足場かけ(スキャフォールディング)が不可欠です。AIを「思考のパートナー」27 として活用することで、生徒は多様なアイデアに触れ、複雑な課題にも主体的に取り組むことが期待できます 9。しかし、教員の適切なガイドがなければ、生徒はAIを表面的な情報検索ツールとしてしか利用できなかったり、AIの提案に過度に依存してしまったりする可能性があります。教員には、AIツールの操作方法だけでなく、AIを効果的に組み込んだ探究プロセスのデザイン能力や、AIの利用に関する生徒の批判的思考を促す指導力が求められます。本校では、AIが人間の知性や創造性を代替するのではなく、それらを拡張・補強するツールとして機能するよう、探究学習におけるAI活用のあり方を研究してまいります。