人工衛星から
宇宙ビジネスが始まっている。
2025年10月4日のオリエンテーリングの全日本大会で83歳の選手が行方不明と
なり18日後、競技地区から少し離れた崖下で遺体が発見されるという事故が起きた。
94歳の私は、行方不明の防止のために複数の人工衛星からの電波を受信できるGP
S付の腕時計を買った。普通のスマホの位置情報では、電波の届かない場所があるが、
最新のGPS付腕時計では、グローバルな衛星システムが付いていて、極端に深い
谷底では無理かもしれないが、大抵のところで受信ができる。私の買ったガーミン
(INSTINCT 2XDUAL POWER)は人工衛星、「グロナス」・「ガリ
レオ」・そして日本の人工衛星「みちびき」の信号を受信できることになっていた。
アマゾンの大売出し(ブラック フライデー)で、4万6千円で買ったガーミンが
送られてきたが、これのGPS機能を実際に、動かせるには老人にとって操作
するのは大変なことがすぐに分かった。ガーミンのサポートセンターに幾度も電
話で教えてもらって、GPSで現在地の緯度と経度を表すところまではできたが、
問題は私が山で迷った場合、その場所からの救援要請をどうしてするのか。来た
ルートを戻る指示が、時計の画面でどう表れるのか。地図を出せるのか。私はパソ
コンのチャットGPTにこれらのことを問い合わせるとガーミンの腕時計のこの
機種について、実に詳しく説明が出て来た。この時計は山で迷った時、色々な対
応が出来て、救援も要請出来る。そのほか、体調の管理やスポーツの記録の保存
など驚くほど色々なことが、出来るのである。しかし、老人にとって時計の周り
の5つのボタンを、短く、または長く推すなど自由自在に操作して、使いこなす
には、これからよほどの慣れと練習が必要なことも良く分かった。そこで急がず
毎日1回ガーミンのボタンを押して、操作に慣れることを続けることにした。
ガーミンの関係する人工衛星のことを調べているとき、ネットで人工衛星の実態
と、今後の姿を知って私は驚いてしまった。2025年5月の時点で、地球の軌
道上には約1万1700基の人工衛星が周回している。が、この人工衛星の数は
今猛烈に増えつつあるということである。アメリカの宇宙開発会社「スペースⅩ」
のイーロン・マスク氏はこれから小型衛星を4万基まで打ち上げるといっている。
また「アマゾン」の創業者ジェフ・ベゾス氏は、これから3000基打ち上げる
計画だそうである。そんなに打ち上げてどうするのか。マスク氏やベゾス氏は、
大量の衛星で地上のどこからでも高速でインターネットに接続できる通信事業を
目指している。全世界統一通信網である。言葉の壁などは今の技術では問題なく
解決できる。ガーミンの時計ですら、すでに多くの言語に対応している。また衛
星写真を使って、全世界的に災害対策、農作物の生育状況観察、漁業探索など、
さまざまな新ビジネスを実現しようとしている。勿論軍事上には各国で今でも
活用され続けられている。
衛星の打ち上げは、アメリカだけではない。2025年7月~9月期、中国はロ
ケット打ち上げ24回を実施。衛星114基を軌道に投入するなど、打ち上げ頻度
・衛星数で世界トップクラスの活動を継続している。欧州では2025年末には、
今後3年間の宇宙予算を約30%増やすという決定もあり、地球観測や打ち上げ
能力の強化を図っている。
そして日本ではこれまで国家主導でJAXAを中心に宇宙開発を進めてきたが、最近
では民間企業の参入が活発で、参入希望企業は100社を超えるとされている。宇宙
産業を成長産業として2030年代には市場規模を約8兆円にするという目標を立て
ている。日本の場合、衛星が大型で、価格も高く、作るのにも時間がかかっていた。
このため国や大企業しか衛星を作ったり、利用したりすることができず、新たな産業
や利用が生まれない状況であった。そこで「小型衛星コンステレーション」という
考え方が生まれた。多くの会社が小型衛星をたくさん作り、配備してそれを統合調整
して、安く早く、大型衛星に匹敵する能力を実現させるのがその目標であり今後が
期待されている。
小型衛星が配備されるのは、宇宙空間でも低い低軌道である。低軌道に膨大な数の衛星
が配備されれば、衝突などのトラブルが起こりやすくなる。そこで、宇宙空間には国際
的な交通整理が必要となってくる。そして古くなった衛星の除去、宇宙のゴミ・デプリ
の除去、衛星修理などのビジネスが、絶対に必要なこととして生まれてくる。
宇宙のさらに上空には静止衛星が送りこまれている。静止衛星とは赤道上の高度36
000㌔の円軌道を周回する衛星で、地球を回る周期は、地球の自転周期と同じであり、
地上から見ると、常に静止しているように見えるので「静止衛星」と呼ばれて放送・通
信・気象観測などに用いられている。静止衛星が世界各国で打ち上げられ同じ軌道上に
並ぶため、この軌道もまた、過密地帯になろうとしている。静止衛星の軌道割り当てには、
国際電気通信連合無線通信部門が調整を行うことになっている。
このように人工衛星の宇宙空間での活用が進むと、約38万㌔の距離はあるが、人工
ではない自然の地球の衛星「月」の活用が当然考えられる。このことをチャットGP
Tに聞いてみると
「月は人類が初めて本格的に住み、使い、広がる宇宙の拠点です」という答えが返ってきた。
確かに、月での新しい産業が生まれようとしている。月を最大最高の宇宙基地として活用
しようとの動きだ。月面輸送・着陸サービス。月資源の採掘・販売。月面建設・通信事業。
観測・測量・探査ロボット産業。などである。そして、月は将来の火星への人類移住の足掛
かりとなる基地となる。すでに日本の民間企業、トヨタ、IHI、アイスペースなどでは、
参加に向けて動き始めている。
ガーミンの時計を買って、衛星電波をどう受けるか、から宇宙産業への思いまで話が
進んできた。が、私は今、94歳で先行きの命はそれほど長くない。いかに有望な産業
であっても、今からでは人工衛星の制作や打ち上げに関わることはできないだろう。
まして、私が月へ行くことなどは、もう絶対にありえ
ない。それでは、どうすればよいのか。
宇宙産業の今後は政府主導だけでなく、民間の会社も多く参入するので、有望な会社を
選んで株式を投資して、その行く先を見極めるというのはどうだろうか。アメリカのアマ
ゾン、スペースⅩや、日本のトヨタ、IHI(旧石川島播磨重工業)などの大企業はすでに
株価も高く投資するには、多額の資金が要りそうである。そこで、今のところそれほど資金
を出さなくても有望な日米の宇宙産業の会社はどこか、チャットGPTに聞いてみた。
すぐに返事が来た。とりあえずアメリカ3社、日本3社であった。アメリカの注目の宇宙
企業は、
⓵Rocket Lab(アメリカで2番目に多くの打ち上げ実績あり、政府契約も獲得して
おり、安定した収益基盤を持ち、今後の拡大余地が大きい)
②Planet labs(衛星データの商業利用、公共利用の提供をする。需要は今後も
世界的に増える見込みで、安定と成長の両面で有望)
③Axiom Space(宇宙旅行、宇宙ステーションを構築しようとする会社、中長期的
な成長ポテンシャルは高い)
日本の企業は
① Synspective(電波を地表に照射してその反射波を解析する合成開口レーダー
を搭載した小型衛星を開発運用している。気象災害が多い日本やアジア地域のニーズは高い)
②Astro Scale(軌道上の宇宙デブリや衛星やロケットの残骸を除去管理する技術を
持つ。長期的な成長が大いに期待される企業)。
③ Elevation Space(東北大学発の企業「衛星を軌道に送り且つ地上にカプセル
を回収する」仕組みを開発中。新しい市場を狙っている)
私は何はともあれ、12月11日に「ガーミン」(208・34$)をまず2株、ネット証券で
買った。続いて12日に「Rocket Lab」(61・47$)と、「Planet labs」
(18・23$)を10株ずつ買ってみた。$の数字は12月16日の1株当たりの単価である。
アメリカの宇宙産業の株式の価格がこれからどんな動きをしてゆくのか。少しではあるが試して
みたいと思ったからである。12月16日現在では3社の株価は共に買値より高騰してはいるが、
先行きどうなるかは、未だ分からない。しかし、私としては、ささやかながら、こんな形で宇宙
産業に少しでもかかわっていきたいと思っている。
(2025年12月16日)