この別荘では、常に「記憶の再現」が行われ続けている。そのため、探索者がその現象と遭遇するイベントも発生する。
再現される対象はゲームマスターが決めても、ダイスロールで決めても構わない。ダイスで決めるなら、ゲームマスターがプレイヤーには非公開の状態で1D20をロールし、以下の表F-02の数字に対応する処理を行うと良いだろう。なお、表の正気度喪失値は初遭遇時の数値とする。経由したシーンによっては、喪失する値を軽減、正気度ロール自体を省略しても構わない。
各イベントの簡単な説明も用意してあるので、表F-02をもとにダイスロールで決める場合は、それも参考にしてほしい。より詳細な描写などは、ゲームマスターが各自で用意してほしい。
No.1
人の足音が聞こえる
正気度喪失 なし
探索者のいない階から、何人かのまばらな足音が聞こえるが、どこにも人の姿を見ることはできない。その足音は探索者が別の階に移動すると聞こえなくなる。より詳細にどこから聞こえていたとか、そういった具体的な内容は技能等でロールを行っても聞くことはできない。
No.2
人の影が見える
正気度喪失 なし
探索者が廊下を歩いているとき、先の曲がり角(もしくは反対の建物の窓際)に何かが横切ったのが見える。それは一瞬で死角に消えてしまい、姿を確かめることはできない。後を追おうにも、足跡などは一切残っておらず、またそれが見間違いであったのかどうかも確かめる術がない。
No.3
オルゴールが鳴る
正気度喪失 なし
探索中にふと、別荘館内のどこかから不鮮明な旋律が聞こえてくることに気がつく。<聞き耳>でロールを行って成功すれば、それはオルゴールの音色であり、演奏されている曲はバッハのメヌエットだとわかる。また、<追跡>などのロールに成功すれば、あるいはその音がどこからだとよりはっきりと聞こえるのかを確かめられるかもしれないが、そうしてしばらく発信源を探ろうと歩き回っている間に前触れもなくその音は聞こえなくなっていることだろう。
No.4
懐中時計が足元に落ちている
正気度喪失 なし
探索者の足元に、大きな緑色の宝石があしらわれ、繊細な金細工によって仕上げられている、高級そうな懐中時計が落ちている。これをどうするかは探索者次第だが、どのようにしたとしても、一定の時間が経過した後にはそれが消失していると気づくことになる。
No.5
子供の話し声が聞こえる
正気度喪失 なし
探索者が個室内にいる状況で発生する。
個室で探索者が静かに過ごしていると、廊下のほうから小さな音が聞こえることに気づく。ほんのわずかな物音だが、複数人の足音と話し声——そこに時折混じる無邪気な笑い声——それはいずれも、子供のものであるように思える。しかしその音の正体を調べようと廊下に出てみても、姿を確認することはできないだろう。
No.6
花束が落ちている
正気度喪失 なし
探索者が廊下に出たときに発見する。
その花束はよく気をつけて観察してみても、造花などではなく本物の花束である。<生物学>などを持っている探索者であれば、それがおそらく1,2日以内に用意された紛うことなき生花であることを確信できる。または、<アイデア>などに成功すれば、この花が祝い事によく使われる白薔薇であることに気づくだろう。これをどうするかは探索者次第だが、どのようにしたとしても、一定の時間が経過した後にはそれが消失していると気づくことになる。
No.7
電話の音が聞こえる
正気度喪失 なし
探索者の背後から突如として電話の音が鳴り響く。その音の発信源を辿っていくことはロールなしでも可能であり、辿っていった先は玄関のカウンターである。カウンターの近くには確かに1つ電話が設置されているため、受話器を取れば出ることもできる。しかし、出てみたところで受話器から何かの音が聞こえてくることはなく、一切の沈黙を受け取るだけで終わるだろう。
No.8
タオルが用意されている
正気度喪失 なし
探索者が自分の寝泊りしている部屋に戻ってきたとき、<アイデア>などに成功すれば、違和感を覚えることがある。それは、初めに部屋に入ってきたときにはそこになかったはずの、タオルなどの宿泊客向け用品が全て揃えてあることについてである。
無論普通に使うことも可能で、気づかなかった場合は使用することもあるだろう。とはいえそれも一定の時間が経過した後には消失していることになる。
No.9
酒の匂いが漂っている
正気度喪失 なし
探索者が現在の地点からどこか別の空間に移動した際に気づくのだが、その移動先ではかすかに酒のにおいが漂っている。探索者のなかで酒を飲んでいる者がいたとしても、それは種類が違いそうだということはわかる。においの元を辿ろうとしても、それを感じるのはこの空間だけであり、どこから漂ってきているとか察することは技能を使用しても難しいだろう。
No.10
誰のものかわからない鞄が置いてある
正気度喪失 なし
探索者が自分の寝泊りしている部屋に戻ってきたとき、足元に誰のものともわからない鞄が置いてあることに気づく。高級そうな本革のボストンバッグで、かなり使い込まれたものであることがわかる。
探索者がこれの中身を確かめるのであれば、中身はいくらかの書類と本、何枚かのシャツの着替えなど、至って普通の宿泊用の荷物であることがわかる。これをどうするかは探索者次第だが、どのようにしたとしても、一定の時間が経過した後にはそれが消失していると気づくことになる。
No.11
強烈な死臭・悪臭が漂っている
正気度喪失 0 / 1
探索者が西館にいる状況で発生する。
探索者が現在の地点からどこか別の空間(西館のどこか)に移動した際、その空間と元いた場所を仕切っている扉などを開けた瞬間、強烈なにおいに襲われる。それは鼻が曲がるほどの悪臭——血生臭く、あるいは腐った果実のように甘ったるく空気をよどませる、吐き気をもよおす死臭である。
この強烈なにおいに囲まれた探索者は、<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1の正気度を喪失する。
なお、ここから離れればその死臭から逃れることは可能である。また、一定の時間が経過してから同じ場所に戻った場合には、そのにおいは消え去っていることだろう。
No.12
電撃銃が落ちている
正気度喪失 なし
探索者の足元に、見たことのない機械が落ちている。先端が尖ったレンズのないカメラのような形状で、その下に手でちょうど握ることができる取っ手のような部品がついている——全体として拳銃のような形に見えるそれは、しかし拳銃としてはあまりにも異質である。<拳銃>の技能が高い探索者であれば、当然ながらある程度拳銃の種類にも精通していることだろうが、この奇妙な形状にはどのように努力したところで思い当たらないことがわかる。これをどうするかは探索者次第だが、どのようにしたとしても、一定の時間が経過した後にはそれが消失していると気づくことになる。
No.13
負傷兵のうめき声が聞こえる
正気度喪失 0 / 1
探索中、西館の個室の前を通りがかったときに、いずれかの室内から奇妙な声が聞こえる。それは低くくぐもっており、鮮明ではないものの、大抵の場合探索者の経験上一度は聞いたことがある——傷病者が苦痛にうめく声である。それも、1人だけのものではなく、明確に複数の人間が発していることがわかる。
この不快な声に気づいた探索者は、<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1の正気度を喪失する。
探索者が個室内を確認しようと扉を開けるなら、その先には人一人おらず、うめき声も聞こえなくなっていることだけがわかる。
No.14
聞いたことのない言語の会話が聞こえる
正気度喪失 0 / 1
探索中、どこかの個室の前を通りがかったときに、いずれかの室内から奇妙な声が聞こえる。それは一瞬、探索者には会話のような波長として認識されるが、しかしそう認めると同時にその波長が持つ異常性にも気づかざるを得ない。明らかに異質な言語——<言語>系の技能が秀でている探索者であれば余計にはっきりと確信できる——、およそこの地球上に存在するとは思えない謎の音波によって、それは交わされている。探索者は嫌でもそこに思考が巡ってしまう——扉を1枚隔てた向こうに、何がいるのか?
ここで探索者は<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1の正気度を喪失する。
探索者がその個室のなかを確認しようと扉を開けるなら、その先には何も、異質な存在はいないということだけが確かめられる。
No.15
廊下の壁やカーペットが血塗れになっている
正気度喪失 0 / 1D3
探索中、廊下に出たときに発見する。
探索者の進もうとした先の廊下が、壁から床まで赤々とした血液に塗れている。それは、よく観察せずとも明らかに、今しがた撒き散らされたように壁を伝って床へと滴っている。廊下に敷かれた赤いカーペットが一部どす黒く変色し、飛沫の模様を作り上げている。
ここで探索者は<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1D3の正気度を喪失する。
一定の時間が経過してから同じ場所に戻った場合には、この血液は跡形もなく消えてなくなっていることが確認できる。
No.16
化け物の鳴き声が聞こえる
正気度喪失 0 / 1D4
探索者がいる場所の窓のほうから、探索者の耳にはおよそ馴染みのないおぞましい音が聞こえてくる。明確に何らかの意思を持つ生物の声——それも、おそらく友好的とは判じ難く、また人間のものとも考え難い、低くうなる醜悪な声である。
ここで探索者は<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1D4の正気度を喪失する。
それは紛れもなく窓の外、つまり別荘の外から聞こえているため、正体を確認しようと思うのなら別荘の外へと出る必要がある。基本的には、どのような努力も虚しく、正体を確かめるには至らないだろう。
No.17
イス人の姿を目撃する
正気度喪失 0 / 1D6
探索者が東館にいる状況で発生する。
探索者が現在の地点からどこか別の空間(東館のどこか)に移動した際、その移動した先の空間の端——廊下なら廊下の最奥、個室なら出入口の対角にある部屋の隅など——に、異様な物体の影を認める。天井に届くほどの高さがあり、その全長のうち半分ほどの高さまでは円錐形で——その円錐の頂点にあたる部分から、4本の細長い何か、触肢のようなものが伸びて緩慢にゆらめいている。薄暗い空間の隅にいるせいか、それを構成する物体の質感まで明瞭に確かめられるわけではないが、しかし簡単にその輪郭を追っただけでも、その影が何らかの——地球上におよそ存在しようのない、異形の生物であることについては、もはや疑う余地もなく確信するだろう。
ここで探索者は<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1D6の正気度を喪失する。
探索者がどうするかにもよるが、当然ながらこの偉大なる種族のメンバーには敵対する意思はなく、探索者に危害を加えようとはしてこない。また、一定の時間が経過すると、その姿を再び認めることはなくなるだろう。
No.18
戦場の光景が再現されている
正気度喪失 1 / 1D10
探索者が西館のいずれかの個室に入った際に発生する。扉を開いた先が泥まみれの塹壕になっており、頭上で大砲の弾が飛ぶ音、足元が揺れるほど大きな爆発音、足元には無残に転がる泥と血に塗れた死体——といった惨状が広がっている。
この信じがたい光景を目の当たりにした探索者は<正気度>でロールを行う。成功で1、失敗で1D10の正気度を喪失する。
ひとまず、この状況で室内を探索することはできないため、探索者が進むことを望んだ場合でも一度退避を勧告した方がよいだろう。一定の時間が経過してから再度訪れれば、その頃には既に他の部屋とさして変わらない、別荘の室内になっている。
No.19
タウィル=アト・ウルムの姿を目撃する
正気度喪失 0 / 1D4 *本来喪失はないが、目の前で消失するため
探索者が東館のいずれかの室内から、廊下へ出た際に発生する。
探索者が次の場所に移ろうと廊下へ出たとき、その先に先ほどはなかったはずの台座らしきものが置かれている。そしてその上に、人間の半分ほどの大きさで、明瞭な輪郭を持たないながらも、おぼろげに人のような影に見える何かが鎮座している。突如として現れているそれに、探索者が困惑して進む足を止めていると、その台座に腰かけた「何か」はゆっくりと、そのシルエットを変化させていく——それが探索者に向けて何らかの干渉を行うように見えた、その次の瞬間、見えていたはずの台座やその上の何者かの姿は影もなく消えていた。
ここで探索者は<正気度>でロールを行う。成功で0、失敗で1D4の正気度を喪失する。
No.20
アザトースの姿を目撃する
正気度喪失 1D10 / 1D100
このイベントは、唐突に意図しないロストが発生する可能性があるため、そうした展開が苦手なプレイヤーがいる場合は別のイベントに書き換える必要がある。また、シナリオ上の背景はあるにせよ理不尽なイベントではあるため、探索者に<幸運>をロールさせ、全員が失敗したら発生させる……など、ある程度発生条件をゲームマスター側で制限することを推奨する。
探索中、ふと別荘館内が全体的に暗くなっていることに気づく。本来であればまだ陽光の眩しい時間、突如として数段暗くなった理由を探ろうと窓の外を見れば、遥か上空——そこに、一瞬雨雲かと見紛うほどの、しかしそれよりも明らかに暗く質量のある……空を覆いつくす影……それが浮かんでいるのを確かめることができる。
世界の終末とも思しきその光景を目撃した探索者は、<正気度>でロールを行う。成功で1D10、失敗で1D100の正気度を喪失する。
当然のことながら、この飛来した大いなる存在も、一定の時間が経過した後にはどこかへと消え去る。