C-06前に発動するイベント(入れるかどうかはゲームマスターに任せる)。
この部屋の扉を開いた瞬間——探索者は息を呑んだ。……当然のことではあるが、扉を開いた先にある空間には、そのほかの部屋と同じ様式の華やかな内装と、それに不釣り合いな無人の静謐さが存在するものだと、探索者の無意識のうちに想像させていた。しかし、そこにあった光景は——床の範囲の中に一切の無駄なく窮屈に配置された寝台と、そこに力なく横たわる人間たちの姿であった。
横たわった者のうち誰かひとりでも注視すれば、呼吸や寝返りをうっている様子で、死んでいるわけではないことがわかる。しかし、それを確かめられたところで、この光景が眼前にあるべきでないものだという事実は変わりようがない。
「光景」の記憶の再現に初遭遇した探索者のみ、<正気度>でロールを行う。成功で1、失敗で1D4の正気度を喪失する。
探索者が【B-02 エルムス・ホテルの歴史】の情報を入手している場合、ここが改装前の旧エルムス・ホテルにおける西館にあたる建物だということに気づく。つまり、ここがかつて南北戦争における傷病兵たちの臨時療養施設として利用されていた場所だったのだろう。
探索者が突然目の前に現れた状況に対して困惑していると、入口のそばにある寝台から鐘の音が鳴った。そちらに視線を向けると、探索者のほうを睨みつけた人物が寝台に腰かけている。その人物の身体は至るところに包帯が巻かれているが、なかでも視線を奪うのは、目から下の全てを覆った包帯である。一瞬では認識できないが、その包帯が巻かれた頭部の輪郭を辿れば、遅れて理解する——そこにあるべき形がない、その頭部にあるべき顎らしい膨らみが存在していない、ということに。
その人物は探索者と目を合わせたまま、手振りで自分のほうに呼び寄せようとしている。探索者を呼んでいるらしい、ということは伝わってくる。
探索者がどう行動するかは自由である。その顎のない人物に近づいていくこともできるし、その場を離れることも可能だろう。
探索者を呼んだ人物に近寄る場合、どうやら彼は肩を貸してほしいようだということが身振りでわかる。肩を貸すと、ゆっくりと身体に力を入れて立ち上がり、ぎこちない動きで歩きはじめる。
探索者が手助けをして、そのまま廊下まで出た——というところで、ふっと彼を支えていた重さが消える。肩を貸していたはずの顎のない人物は、もう姿も影もなく、出てきたばかりの部屋を振り返っても、寝台や横になった者たちの姿もなくなっていた。あるのはただ、他の部屋と同じ様式でまとめられた華やかな内装と、それに不釣り合いな無人の静謐さのみである。
探索者がその場を離れた場合でも、同じタイミングで全ての光景が元の状態に戻っている。後々訪れた場合には、もう同じ光景を見ることはないだろう。
ここからW203号室を調査する場合、C-06に移行。