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自身が失った記憶について思い出そうとする探索者は、ひとまず自宅に何か手がかりがないか探すことになるだろう。
ここで探索者は<アイデア>-20%、<目星>、<精神分析>のそれぞれでロールを行う。いずれも出る情報が異なる。
<アイデア>-20%のロールに失敗した場合、探索者は自分が喪失した記憶について思い出そうとどれだけ試みても、自分のなかに記憶のぽっかりとした空白があることを殊更確かに実感するだけであり、一抹の不安に冷静さを奪われる。探索者は、確かに「大切な何か」を忘れている——それが自分にとって重要なことであると理解できるからこそ、その確実な不在は探索者を落ち着かなくさせる。探索者は<正気度>でロールし、成功で0、失敗で-1の正気度を喪失する。
<アイデア>-20%のロールに成功した場合、探索者は自分が喪失した記憶について思い出そうと試みたとき、ひとつだけ思い当たることがある。探索者が気絶する直前に見た光景についてである。朧げで断片的にしか思い出せないものの、探索者は気絶する直前、見覚えのある人影を目撃した……わずかに思い出せるのは、高そうな金ボタンで本切羽になったスーツの袖口のみである。そしてその人影は、探索者にとって親しい人物であったような気がする。
<目星>のロールに失敗した場合、しばらく自宅で手がかりを探してもそれらしいものは見当たらない。
<目星>のロールに成功した場合、探索者は "自身の喪失に関するもの" を発見する(発見するものは探索者の設定した "喪失" によって異なる)。それを発見した瞬間——探索者の背筋を一筋の冷たい何かが伝っていく。そして確信する、探索者がここ数日で失った記憶のひとつには、探索者の抱える "喪失" に関わるものが含まれていることを。
——何故、こんなに大切なことを忘れていたのだろう?そしてその確信を得たいまでも、何故、"喪失" の記憶を穴が空いたように失ったままでいるのだろう?……探索者は強く心臓を鷲掴みにされたように、呼吸が浅くなる。探索者はここで<正気度>ロールを行い、成功で0、失敗で1の正気度を喪失する。
補足すると、ここでの "喪失" に関わる記憶は、"喪失" 自体の記憶が自分にとって何より大切な記憶であったこと以外の全てを忘れているものとして扱われる。正確には自分がそれを喪失したという事実自体は覚えている(このロールに成功すれば思い出せる)のだが、それがどんな形姿をしていたとか、いつどこで失ったとか、そういった類の記憶が全て完全に消えているという状態である。
<精神分析>のロールは、失敗した場合でも発見するものがある。探索者の机上に置かれた、見覚えのない書類である。それを読んでみると、どうやら昨日気絶した際にかかった医療機関での領収書らしいということがわかる。
ロールに成功していた場合のみ、その領収書に書かれた自分のサインを見て、わずかながらに驚く——紛れもなく自分の文字ではあるのだが、まるでひどく動揺しているかのような、荒んだ筆跡で書かれているためである。何故そのような文字になったのかは思い出せないが、少なくとも気絶したあとに一度目覚めたときも、自分は強い困惑を覚えていたらしいことが読み取れる。
自宅から得られる情報は以上。
探索者から他に行動の要望がなければ、次のシーンはA-02に移行。