第2回 草刈麻紀

萩 京子 VS 木々のさざめき(企画:草刈麻紀)

2010年6月18日(金) 19:00開演

プログラム

1. ミヨー作曲 「コレットによる組曲」より Ob, Cl, Fg

2. 萩 京子作曲 「ソング集」 Ob, Cl, Fgとふたりの歌い手による

3. バルトーク作曲(草刈麻紀編曲) 「こどものために」より Ob, Cl, Fg

・・・・・・休憩・・・・・・

4. メシアン作曲 「鳥たちの深淵」 Cl-solo

5. 萩 京子作曲/詩 宮澤賢治 「薤露青」(かいろせい) Ob, Cl, Fgとふたりの歌い手による

・「薤露青」(かいろせい)/萩 京子作曲・詩 宮澤賢治

今回、「ROGOBA」の会場を沢井一恵さん、笹久保伸さんと共に下見に行った折、ノリノリのお二人と違い、私は内心「しまったぁ!」と思いました。

その空間の醸し出す空気は独特で、北欧の椅子たちと、清涼感のある空気が私に語りかけてきたものは、慣れ親しんだ木管アンサンブルや手軽なデュエットではこたえきれない何かがある、と直感で感じてしまったからです。

会場が引立ち、作品が引立ち、相互が魅かれあうもの・・・色々な作品を候補に思い浮かべた末、ご縁に導かれて萩京子さんの「薤露青」(かいろせい)にたどり着きました。

宮澤賢治・詩/萩京子・作曲「薤露青」は、1996年にアンサンブル・コンソナンツ(Ob.小林裕、Cl.草刈麻紀、Fg.大澤昌生)と、ソプラノ・谷潤子、バリトン・谷篤により、緋国民楽派第6回作品演奏会で初演、さらにCD化もされました。

宮澤賢治の詩「薤露青」は、「春と修羅」(1924年)中の作で、この詩で初めて賢治は妹トシの死を乗り越え、トシとの共同作業が始まったのではないかと作曲者は見ています。ちなみに、「薤露」とはラッキョウの葉にたまった露と言う意味で、古来、命のはかなさのたとえとして用いられたということです。

緋国民楽派は、吉川和夫、萩京子、寺嶋陸也の3人の作曲家による個性的な集まりで、萩京子さんはその中の紅一点です。

萩さんは今やオペラシアター「こんにゃく座」の音楽監督として大忙しで、「こんにゃく座」のオペラを次々と精力的に書いておられる姿には目を見張るものがあります。

萩さんらしい、懐かしくどこか物悲しい美しい音楽、男と女の二人の歌い手(歌は非常に難しい)と木管三重奏という斬新な響き、自然科学の知見に深く根ざす賢治の澄みわたった詩、こういう特異な魅力に富んだ「薤露青」と、「ROGOBA」の空間は私の中でピッタリとマッチしました。

私はずっと再演を待ち望んでおりましたが、特殊な編成のため今までなかなか演奏会には掛けられなかったものですから、喜びもひとしおです。萩さんが手塩にかけたこんにゃく座の歌い手さんと、音楽ホールでは味わえない親密な雰囲気の中で、この曲を再演できることを楽しみにしています。

・「コレットによる組曲」Op.161b(1937)/ダリウス・ミヨー

フランスの「6人組」の一人として知られるミヨーはあらゆるジャンルに膨大な量の作品を残しています。

この曲はシェイクスピアの劇「ジュリアス・シーザー」の音楽を、オーボエ、クラリネット、ファゴットの木管三重奏に改編したものですが、今日のプログラムの中では唯一のオリジナル木管三重奏曲です。ロココ時代の作曲家、ミシェル・コレットの作品を真似て作曲されました。

・ 萩 京子/ソング集

こんにゃく座の歌い手さんにお願いすることにしたので、私の中でまたまたずうずうしくもアイデアが浮かび上がり、数ある萩さんの「ソング」を、木管の伴奏で歌ってもらえないだろうか、とお願いしたのでした。

どんな曲を萩さんが選んで下さるのか、まだわかっていません。おたのしみです。林光さんや萩さんの、いわゆる「ソング」と呼ばれる歌には、親しみやすく誰でも口ずさみたくなる「歌」としての本質的な性格がありながら、同時に高い芸術性も兼ね備えた「新しい歌」のイメージがあります。

・「こどものために」/バルトーク(草刈麻紀編曲)

作曲家でありピアニストでありピアノ教師でもあったバルトークが、音楽的価値のある、初心者(こども)の為の作品を書こうと思い立って書いたのがこの曲集です。農村や僻地に埋もれていた膨大な量のハンガリー民謡の蒐集はバルトークの作曲の軸をなすものですが、「こどものために」もまたハンガリー民謡をもとに作られています。

私は幼少の頃からすでにコツコツ練習することが嫌いで、ピアノの練習も怠けてばかりいたのですが、この「こどものために」だけは好きで、発表会ともなると曲集の中から自分の好きな曲を選んで弾かせてもらったり、習っていない曲まで弾いてみたり、私にとっては、大人になってからも特に親しい幼なじみといった作品です。

声部が少なくシンプルなので素人の私にも編曲できるかも、という安易な考えで、バルトークさんに頭を下げながら、1995年、アンサンブル・コンソナンツのために編曲しました。

・「鳥たちの深淵」/メシアン

あまりにも有名なオリヴィエ・メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」(1940)の第3楽章でクラリネット・ソロ。しばしば単独で演奏することもあります。悲しみと倦怠の「時」に対立する鳥たち。

メシアンがたくさんの鳥の声を採譜し、音楽的パッセージに移し替えたことはよく知られていますが、「鳥のように」と記された中間部では、深淵に相対するポジティヴな存在として存分にそれらのパッセージが歌われています。「木々のさざめき」には、これらの鳥たちの声がふさわしいと思い、選曲しました。

草刈麻紀

The 2nd Maki KUSAKARI

The works of Kyoko HAGI "Reverberation sounds of trees"Produced by Maki KUSAKARI

Friday, June 18, 2010 7:00pm-

Program

1. Suite d'apres Corrette, Op. 161 by Darius MILHAUD

2. Songs by Kyoko HAGI

3. For Children by BARTOK Bela

4. Quartet For The End Of Time: 3. Abime des oiseaux by Olivier MESSIAEN

5. Kairosei Composed by Kyoko HAGI,Text by Kenji MIYAZAWA

Solo Clarinet: Maki KUSAKARI

Guests: Mayuko MORIEDA (Oboe), Masao OHSAWA (Fagott)

Hitomi HIKOSAKA (Vocal), Hisashi SATO (Vocal)

草刈麻紀(クラリネット)

東京藝術大学卒業後、ウィーン国立音楽大学にて研鑽を積む。ジュネーヴ国際音楽コンクール・クラリネット部門セミファイナリスト。スイス、ルツェルン交響楽団の契約団員を経て帰国後は、室内楽奏者として自身のプロデュースによる室内楽シリーズを企画、好評を博している。

また、谷川俊太郎、賢作とのユニット"であるとあるで"を結成、各地で共演を重ねている。ラ・コレッガ・ディヴェルテンテ主宰。


Maki KUSAKARI (Clarinet)

After graduating from the Tokyo National University of Fine Arts and Music, Maki KUSAKARI went on to Vienna National University of Music to study under Prof. Holst Hayek the member of Vienna Philharmonic.She was the semi-finalist of Geneva International Music Competition and a contract player of Luzerner Sinfonieorchester in Switzerland.

After backing Japan she play as a chamber music player and produce sevelal unique concerts.

森枝繭子(オーボエ)

東京藝術大学卒業。在学中に安宅章を受賞。日本演奏家連盟新人オーディション合格。仙台フィルとコンチェルトを共演。東京文化会館新進演奏家オーディション合格。これまでに、宮崎、木曽、霧島、倉敷などの音楽祭や、サイトウキネンオーケストラに出演。紀尾井シンフォニエッタ東京メンバー。上野学園大学非常勤講師。

大澤昌生(ファゴット)

東京藝術大学卒業後、ウィーン国立音楽大学留学。82年日本音楽コンクール入選。スイス・ルツェルン交響楽団ファゴット奏者を経て帰国。新星日本交響楽団を 経て現在東京フィルハーモニー交響楽団首席ファゴット奏者。紀尾井シンフォニエッタ東京には創立時からのメンバーとして参加。"であるとあるで"メン バー。

彦坂仁美(歌役者)

東京音楽大学 音楽教育科卒業卒業後は、高校講師、ピアノ教師、伴奏ピアニスト等様々な音楽経験を経て、2001年オペラシアターこんにゃく座入座。

『あおくんときいろちゃん』、『どんぐりと山猫』(栗の木他)、『ロはロボットのロ』(ママ・モンロー、ジーン他)『まげもん』(船頭他)『夏の夜の夢~鳴呼、大正浪漫編~』(職人の州太郎他)などに出演。

佐藤久司(歌役者)

秋田県出身。東北大学工学部電子情報学科卒業。 大学時代に合唱団で活動したことがきっかけで歌うことにめざめ、黒テント俳優基礎学校を経て、2001年オペラシアターこんにゃく座に入座。

『ピノッキオ』のピノッキオ、『よだかの星』のよだか、『セロ弾きのゴーシュ』の三毛猫、『森は生きている』のカラス、四月の精の役等をつとめる。

萩 京子(はぎ きょうこ、作曲家)

東京出身。1978年、東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。1979年よりオペラシアターこんにゃく座の座付作曲家兼ピアニスト。1997年、音楽監督に就任。2004年、こんにゃく座代表に就任。作品としてオペラで『まげもん - MAGAIMON -』(2002)、『好色一代男』(2005)他。他ジャンルでも合唱曲『飛行機よ』(寺山修司・詩)、ピアノのための『12の前奏曲』、宮澤賢治の作品にもとづく作品群『よだかの星』など多数。