短歌鑑賞投げ込み箱
目次と掲載歌一覧
1 寄せ集め 短歌鑑賞 掲載歌一覧
歌人別鑑賞と一部重複します。
冬の駅ひとりになれば耳の奥に硝子の駒を置く場所がある 大森静佳
天井にたくさん穴のあいている体育館のとうめいもぐら 土井礼一郎
おすもうさん、トイおすもうさん、ティーカップおすもうさんで三連勝や 谷じゃこ
海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり 寺山修司
ランボーはむかしいもうとの妻であり青空を統べる骨ひとつあり 瀬戸夏子
通過するあの駅の名を覚えてる 部首から引いた漢字のように 吉田恭大
駅の名のひとつひとつにとらはれて(むかうの半月おきてがみめく) 木下こう
海だけが描かれた切手 僕たちが佇んでいた性善説 木下侑介
扉絵のなかでぴったり寄り添って二人は深い谷を見ている 木村友
蝸牛の角の秀さきの白玉は消なば消ぬべし振りのこまかさ 北原白秋
セックスレス夫婦にみんななればいい板塀裏にかたつむり冷ゆ 吉川宏志
もしも命がふきこまれなばためらはず海に入りゆく観音ならむ 吉岡生夫
入相の町のうしろを巨なる/銀のなめくぢ/過ぐることあり 宮沢賢治
ふまじめに通ってもなお母の払った月謝で弾けるソナチネがある 折田日々希
勝新太郎の手形に勝新太郎の小便溜まったまんま 鈴木有機
家庭内歌人とは何?バスタブのふちに玩具のアヒル並べて 藤原龍一郎
とおくの森から鳴くように山鳩の胸深いふくらみ 高橋みずほ
あやまりにゆくとき地図にある橋は鷗の声にまみれてゐたり 魚村晋太郎
ふさわしき喃語なきまま塔に立ち鴎のかざす小手に手を振る 依田仁美
朝露の消ぬ水無月のなかぞらに反るあをつばめ去年の夭者 須永朝彦
ビル背面をゆきてふたたび出て来ざるツェッペリン忌の飛行船かな 光森裕樹
屋根のうへに働く人が手にのせて瓦をたたくその音きこゆ 佐藤佐太郎
雪が降る 朱漆塗りの大椀のおかめうどんをとろとろすする 花鳥佰
ねえむうみんこつちむいてスコップのただしいつかひかたおしへます 平井弘
横へ横へ広がる枝をきりおとすように子どもは生まれてきたが 土井礼一郎
ふはふはと日々は過ぎゆくエアリアルあっ首都高にデコトラがいる 屋上エデン
アンパンをくちいっぱいにほおばったやせたかなしいやなせたかしい 本田葵
親指の指紋が溶けてスコールのキャップをちゃんと締められないの 江下夏海
天の川って義憤に似てるひかりの波しゅるるる消えるまで抱きしめる 杉山モナミ
たくさんの吸殻が眠っていると昔のドラマ見るたび思う 杉世和科
だんごむしをバケツいっぱい集めたら誰にあげよう爺もおらんし 東直子
考えてみますねのねでファスナーの音 そしてまたファスナーの音 伊舎堂仁
眼をとじて耳をふさいで金星がどれだかわかったら舌で指せ 穂村弘
赤青の蛇口をまわし冬の夜の湯をつくりおり古きホテルに 吉川宏志
まはだかの空間がひとつ右にありしずかに桜のおもいでを汲む 井辻朱美
今朝のわがしよぎやうむじやうは目薬に流れてしまひたりし赤富士 渡辺松男
自己愛が強すぎるため折り鶴を折らずにただの紙で終わらす 来栖啓斗
バッグから今日も四方にうっとりのレコンキスタがはみ出している 杉山モナミ
あなたがせかい、せかいって言う冬の端 二円切手の雪うさぎ貼る 笹川諒
住む人が亡くなっただけ狭くなる家の歴史に体積がある 白糸雅樹
満天の星空なれば鳥・けものかたち結ばず星座は消えぬ 嶋田恵一
水槽の中で卵をほぐしおりこの世に邦とゆめが足りない とうてつ
白と黒は混ざらずふたつであったりも混ざって無限になったりもする 石狩良平
作業するには低すぎる机たち見下ろしているたばこ片手に 木村友
角張ったものを何度か見かけた日おやつをこんな暗いところで 斎藤見咲子
何もいない水槽の中をのぞきこむ 幾何学模様の開襟シャツで 高橋彩
母さんがおなかを痛めて産んだ子はねんどでへびしか作りませんでした 伊舎堂仁
少しずつ眠れぬ夜は減ってゆき気づけば一人ぼっちの羊 中畑智江
木造のアパートから出てまた戻る異人たちの芝居のように ユノこず枝
うさぎ顔の女に逢いに木枯らしに向かって歩く小金井の午後 河野瑤
かきくもりあやめも知らぬ大空にありとほしをば思ふべしやは 紀貫之
投げ込み箱(5)あれごりさたいあ 準備中
含意のある風刺的な表現をとる歌(他の投げ込み箱や歌人別コーナーと一部重複します。)
投げ込み箱(6) 実用歌