と青

を詠み込んだ短歌

赤+青の歌はおもしろい

一部作成中


ここは準備中ですが、他のページを更新するといっしょに公開されてしまう仕様みたいで、見えてしまう場合があるようです。

■対極セットとしての赤と青

赤と青は反対の色のようですが、セット感もあります。たとえば血液には動脈の赤と静脈の青。

そういう感じに、赤と青という対極セットを押さえることで「すべて」を示す、というような表現が成立します。

豆殻をちろちろと焚くあな危ふ 青天使赤天使土より飛びて

葛原妙子『原牛』1959

競い合う朱色のドグマ青いドグマあざといほうが真実である

中沢直人『極圏の光』2009

朝顔の赤いラッパをふきならせ青いラッパをふきならせ、肺

東直子 「歌壇」2013・10

青地蔵は光を眺め赤地蔵は草を見つめる鞠の小窓に

東直子「現代短歌新聞」201207

赤信号・青信号の頭してやってくる/森は生まれる前に生まれる

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

わたくしは零時の鐘で赤式部・青式部に分かれてしまうの

木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』2016

だからってカスタネットの赤と青塗りわけたのは神様じゃない

村上きわみ(出典調査中)

ピアノとシューベルトの相性くらい赤ペンと青ペンを間違えたくらい

瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end,』2016

かけ離れ方の度合いの比喩、というのが面白い。

赤青の蛇口をまわし冬の夜の湯をつくりおり古きホテルに

吉川宏志『石蓮花』2019

この歌の鑑賞はこちら

女紅場の堤灯あかきかなしみか賀茂川の水あをき愁か

吉井勇

■青=自然/赤=人間 という対比も

作者が意識したかどうかわかりませんが、青は自然の植物で、そのなかにある赤いものは人間、あるいは人間の存在を暗示する、というふうに対比させる場合があります。

夷かに麦の青める
丘の根の
小径に赤き小櫛ひろへり

ルビ:なだら】 小径【こみち】 小櫛【をぐし】

石川啄木『一握の砂』

女の子の赤い蝙蝠傘が青くさの野をゆれゆれて行きつくしけり

木下利玄

青空に国境線が現れてぼくらのもとに届く赤紙

木下龍也『つむじ風、ここにあります』2013

(切れ目なき青空を人為が切り分け、戦争に招集されて若者の血が流れる。これも自然と人間、という対比関係の一種。)

あかがねの月のぼり来て千の家に千の赤子の青畳這ふ

小池光『廃駅』

(畳は「自然」ではないけれど、「青畳」には植物感があるので。)

赤とのいろんな関係

赤と青にはいろんな関係がありえますが、「赤と青」であることに言及したり強調したりすることで歌がすごく引き立ちます。

病める児は赤しいたましその母の寝足らぬ顔は青し醜し

与謝野鉄幹『檞の葉』1910

くちびるの紅く素顔のいと蒼き女手品師君去りにけり

ルビ:紅(あか)

北原白秋『桐の花』1913

青赤の南京玉を灯のもとにひとつひとつにつなぐ淋しさ

ルビ:灯(ひ)

小熊秀雄(青空文庫) 「新版・小熊秀雄全集第1巻」創樹社1990

赤き青き花のかたまり輪唱の輪に肖てけむる雨の花市

ルビ:肖(に)

春日井建『未青年』1960

会議室の窓から見える信号機また青になるまた赤になる

俵万智『かぜのてのひら』1991

赤色の肺室をもつわたしたち、あを、おもひきり青にあくがれ

笹原玉子『南風紀行』1991

その川の赤や青その川の既視感そのことを考えていて死にそこなった

早坂類『風の吹く日にベランダにいる』1993

近づいてくるのがわかる目つむれば赤は残酷、青は冷酷

阪森郁代『パピルス』2006

呼び交す空の青・赤すみわたり肉体の壁「せーの」で飛んだ

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』2012

幾万の交差点みな赤と青間違うことなく交互に光る

あまねそう『2月31日の空』2013

思えば、あれが時雨か 手をかざす青い炎に赤の交ざって

千種創一『砂丘律』2015

かざす手の甲のまるみよ青い線赤い線交差する夏祭り

杉山モナミ「かばん」2015・7

作曲をせし青年は死にたれば海こえてかへる真紅の楽器

岡井隆

眠ってる赤子に青のミニカーを握らせ思い直して奪う

工藤吉生 作者ブログ「存在しない何かへの憧れ」(角川短歌「公募短歌館」採用作品)より

足の爪赤く塗りたる姉むすめ青く塗りたる妹むすめああ

小池光『梨の花』2019

家々を追はれ抱きあふ赤鬼と青鬼だつたわれらふたりは

小佐野彈『メタリック』2018

信号が赤から青に変わるときわずかに跳ねるわたしの踵

大森千里『光るグリッド』2020

赤青の水の出づるにあらざれど蛇口の上の温冷マーク

香川ヒサ(出典調査中)

青きボート赤きボートの寄り添ひて夜の川面にちぐはぐに揺る

安田純生(出典調査中)

赤と青どっちが神かな透けブラとはみブラどっちが情けないかな

柴田瞳(出典調査中)

強靭なブルーに赤い心臓をしずめて染めたような夏でしたっけ

早坂類(出典調査中)

信号は赤になるより青になるのが寂しいね おやすみなさい

植松大雄『鳥のない鳥籠』2000

青によし赤と通行人によし 指さし確認する奈良タクシー

平川哲生

書見台に紅絹の袱紗をかぶせたる江戸青楼図風に高く飛ぶ

岡部桂一郎『戸塚閑吟集』1988

※「江戸青楼図」というものをネットで画像検索してみると、青くないんです。
 紅絹は赤いんだろうけど、青楼図の青は言葉のイメージみたいですね。

赤んぼの頃から俺のおしっこはおむつを宣伝するために青い

嵯峨直樹『神の翼』2008

わが青葉なりしひとつもまぎらせて世界をふかくおほへ紅葉

荻原裕幸『デジタル・ビスケット』

色があざやかで美しく目立つ組み合わせ

「いろんな関係」のひとつですが、もっともベーシックな、効果的配色。

緑に赤といえば、自然界でよく目にする緑の葉と赤い花。あるいはお菓子などの目立つ配色。
深い意味なく、目に入ってきれいだと思ったから詠む、というケースも当然あるでしょう。
もっとも、取り立てて赤と青を強調することで、なんとなく意味が感じ取れるようにもなります。なんとなく。

どこまでもあざやかな染み スーパーマンの青と真紅の捺されたる空

井辻朱美『クラウド』2014

うつくしや美瑛の菓子屋の店先のコンペートの赤青の色

小熊秀雄

あをぞらの崖【き】りたつところ火の香してかぎりなく山の紅葉は散りぬ

小島ゆかり『憂春』

思えば、あれが時雨か 手をかざす青い炎に赤の交ざって

千種創一『砂丘律』2015

くちびるの紅【あか】く素顔のいと蒼き女手品師君去りにけり

北原白秋『桐の花』1913

■俳句と川柳
とりあえず目についたらピックアップしている、という段階です

俳句

手持ちのデータから少し紹介


黴赤く青く不滅や本の裏

西村麒麟『鴨』


白い風聞野に出て青し燃えて赤し

山川蝉夫『山川蝉夫句集』


ダリの青キリコの赤と咳けり

四ッ谷龍


大空の羽子赤く又青くまた

阿波野青畝


桃青し赤きところの少しあり

高野素十


赤く見え青くも見ゆる枯木かな

松本たかし

川柳

手持ちのデータから少し紹介。

赤と青混ぜるきれいな嘘になる

樋口由紀子『容顔』1999


赤に青を重ねて二人静かです

ひとり静『句集 海の鳥・空の魚』2015


このほか、川柳のデータベースとしては、おかじょうき川柳データバンク転載には許可が必要と書いてある)があります。


都々逸

赤い顔してお酒を飲んで 今朝の勘定で青くなる

作者不詳

以下準備中 材料置き場です。

他のページを更新公開すると、未完成のページも公開されてしまうみたいです。

紅い日に煤煙を吐かせ
青い月に血をしたゝらせて
画家が笑った

夢野久作『猟奇歌』(「夢野久作全集3」ちくま文庫1992)

白衣着た少女の指に生まれでる赤いスライム青いスライム

入谷いずみ『海の人形』