2021年12月21日
「飛行船」はけっこう好んで詠まれる題材です。
いつのまにか上空に現れ、
静かに、すごくゆっくりと移動して、
しだいに遠ざかり、いなくなる。
この浮世離れしたさまは、人それぞれに何か詠みたくなるのではないでしょうか。
人気のある題材ですが、井辻さんと杉崎さんは特にたくさん詠んでいて、まるで競作しているかのよう。
こだわるだけあって、他の人より踏み込んで詠んでいるとも感じます。いかがでしょう?
このごろ現実には飛行船を見かけなくなりました。だんだん実際に目撃した印象を離れ、飛行船は言葉の世界で出会うものになってきているのかもしれません。
「来る」「現れる」など、飛行船が視界にはいいてくるところを詠む歌
飛行船がそこにいる。その雰囲気、存在感など。
※このように飛行船の具体的形状をなにかに例える歌もときどきあり、それを見比べるのもおもしろい。
★静かに浮かんで何もしない存在なのだが……何か目に見えない影響を及ぼしていないか?
※日本の空を飛行船がはじめて飛んだのは、1910年の秋であるらしい。そのとき山田猪三郎が開発した山田式1号飛行船の初飛行に成功。翌年1911年9月20日には、山田式飛行船が東京上空一周飛行に成功したそうだ。その目撃談だろうか?
※中国の故事「雨過天青雲破処」。雨過天青は「雨過ぎて天晴る」と訓読。雨がやみ、空が晴れ渡り明るくなる意から悪かった状況や状態がよいほうに向かうたとえ。(「晴」は「青」とも書く。)そういう次元を超越した高みをゆく、という意味だろうか。
飛行船じゃないけれど、雰囲気の似た歌をみつけた。
※「燃える」は「飛行船」の歌として珍しい情景
これはと思う飛行船の歌を見つけたら随時追加します。