星まみれの空があなたを奪っても私はきっと骨のない傘

笹井宏之 『てんとろり』

たたずみて人骨をみしやすらぎのいはむかたなし天の星流る

葛原妙子 『朱霊』

憂鬱な空と思って見てたのは、いいえ私の頭蓋骨です

松村正直 『駅へ』

ランボーはむかしいもうとの妻であり青空を統べる骨ひとつあり

瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』

秋空は骨の触れあう音ひびき長く日本の国に棲みおり

佐伯裕子『ノスタルジア』

姥捨山へ骨をひろひにゆかむかななべてひろはむ吾は蒼穹となり

渡辺松男 『雨（ふ）る』

空はいつわたしへ降りてくるのだろう言葉の骨に眩みゆく夏

大森静佳『てのひらを燃やす』

ヒトラーの頭骨の穴想うとき十勝の空ののっぺらぼうめ

松木秀『５メートルほどの果てしなさ』

はゞたける空あるやうにひらきをる貝殻骨の　ゆふかたまけて

川崎あんな 『あんなろいど』

青空の発掘現場　翼竜のかぼそい骨を接ぐ飛行機雲

井辻朱美 『クラウド』

巻雲の鰈の骨の透きとおり天とはつくづく遠いところ

杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』

骨壺の空間埋めてみつるものあらば光りあふことばなるべし

尾崎左永子 『星座空間』

2020年7月17日