投稿日: Dec 10, 2016 11:23:39 PM
<開催報告(案)>
午前中のワークショップ、昼休みのカフェ、午後の講演やパネル討論、さらには個別の対話の懇親会と盛りだくさんの異なる場のデザインされた本年のフォーラム。教育改革の理念の柱となる「主体的・対話的で深い学び」を体験、理念を理解、次のステップについて対話を通してイメージを抱いていただくことが狙いであった。
本フォーラムの基本は、現場からの報告と文科省の教育改革の理念の理解から次のステップを一緒に考えることにあった。静岡県立浜松北高等学校で数学の学力増強に取り組む大村勝久先生、東京都目黒学院中学・高等学校で10種の教員免許を操る藤牧朗先生、東京都聖学院中学・高等学校に民間企業のマインド注入を図る児浦良裕先生、福岡県明光学園中学・高等学校で人の営みの学びを支援の九州全体に拡大を図る前川修一先生の4名により『アクティブラーニングの実践:現場力』に関連して多様な授業改善が紹介された。演題には教育課程改定審議に登場する主体的・対話的で深い学び」からのキーワードを散らして講演をお願いしていた。
大村先生
私立中心の今回の講師の中で、公立進学名門校での数学授業に取り組む静かなアクティブラーナーの大村先生、「みんな」「考える」「話し合う」を基本とした「考える授業」は生徒に好評。3年生には入試問題への試行錯誤を語り合うゼミ、1年生には順列組合せを身近な運動会で活用などの工夫。受験対策の正解到達より思考力につながる目標創出で思考力育成を目指し、問いの立て方、ファシリテーションの技を磨いている。
藤牧先生
「教えて考えさせる」を基本に、手書きの「授業の流れ」に従い、KPで知識確認、討議・質問発表、まとめと展開。未知の答えのない問題を中心に、目的と内容に応じて変幻自在に授業をデザインする藤巻先生。演劇手法も含むことも。相手の意見も聞いて自分の考えを精査する過程を生徒は「自分が発言できる」と楽しむ。困難度査定、ルーブリック、すべて記述式のテスト、振り返りシートは大切なツール。
児浦先生
企業文化を学校に、課題解決の深い学びは現実の社会での実践からと都内北区で生徒参加プロジェクト。地域に入って質問することの体験重視、学年と期間軸上で多様な開発。企業時代を振り返る児浦先生は「教師はたたかれる職業、されど期待される職業」「教師はベンチャー企業の社員」と語り、研究開発~オペレーション~マーケティングのすべてを行う。生徒にとって 優しくも秀でている存在となることがゴール。
前川先生
前日福岡から上京、体調不良を乗り越えて、前川節。写真を見せて20秒ディスカッション、グー/チョキ/パーで理解把握の話しぶりは「看図アプローチ」の授業そのもの。生徒の言葉から「学校は、生徒の気持ちを引き出しているのだろうか?」と気づき、対話を促す仕組みめざす。キャリア教育公開授業を契機に、熊本と福岡の教員が「強制性がない」チーム九州設立に。校内でも意見を尊重、対話も可能に。草の根の教育改革が進む!
熊本で地震直後の倫理の授業で、対話によって生徒の気持ちがほぐれていくことに気づき。教員は、仏教の「行基」のように「橋をかける役割」になるべきとも。
無藤先生 基調講演
これに続く基調講演では、中央教育審議会委員・教育課程部会主査・白梅学園大学教授の無藤先生が「学習指導要領改訂~何を目指すか~」のタイトルで本質的なことを次のような趣旨でわかりやすく解説下さった。
70歳までの50年前後を働く時代、「知識爆発」の問題であらゆる分野から「これも学ばせるべき」という大量のコンテンツが提示される中で重点化(メリハリ化)が必要。「学び続ける教員」と学校の教育力を高めるための「カリキュラム・マネジメント」が「教育課程の改革」の両輪。PISAを目標とするのではなく、そもそも学校教育は何を目指すのか? 「学び続ける人」を育てるとの認識が必要。
学校教育で育む 資質・能力の3要素の1つである1)知識・技能は個別の事実的な知識のみを指すものではなく、それらを「相互に関連付け」られ、さらに「社会の中で生きて働く知識」とすることが大切。2)思考力・判断力・表現力に加えて3)学びに向かう力、人間性等とは非認知的スキルであり、アクティブである学びの状態において①主体的(自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる)、②対話的(自分の考えを伝え、他者と共有・やりとりし、様々な考えを統合)で、③深い学びで「より深めていく」「深まっていく」ことが大事。
<無藤先生とチーム高校先生との対談>
これに続いて、無藤先生とチーム高校の先生、更には会場参加者との対談では、次のような議論が。
・大学生で「中学高校で一度も手を挙げたことがない」「学びのマインドがないまま入学している」学生もいる。知識を構造化して定着化させるためのリフレクションが重要、社会に出ると大半の仕事はオペレーティブな仕事なのでやめてしまう。生徒自身が学びの地図を作る支援が必要と。
・教員が中心の学習会は、若い人が入らなくなり同窓会状態になること多い。インフォーマルな集団の中で教員が育っていくことは大事だが、強制できない。教員研修の「ミドルリーダー養成」、職業人に学ぶ場確保はこれからの大きいテーマ
・教育における評価の仕組みに課題あり。優秀教員表彰は部活動などが中心、表彰のポイントは難しい。上からには限界があり、「お気に入り」になりがち。研修のポイント制を数年後に導入?。大学教員のような研究実績などの調書、発表の機会があるといい。旅館の「適」マーク的な民間団体の評価制度の活用も。
・今回の改定内容は量的にも質的にも多く、学校現場の裁量は大きくなる。(最低ラインの縛り明確化必要、その際の評価?) カリキュラム・マネジメント推進のため管理職研修を義務化(現状は各県でばらばら)、校長職を定年前のあがりポストにしない。研修には企業や別組織の人が境界を超えて入る必要あり。異質なおでんのように。
・動画を活用、「解法を3つ以上出しなさい」といった思考を促す授業をしていると、生徒が予想外のものが出てくることもある。教員が正しく答えるには、教員自身が教科観を持ち、一緒に学んでいくスタンスが必要。
・構造化、概念化のときに中核となる深い学びというのは、教員が教科としての方向性・ベクトルを持つことが必要
・社会をとらえるときにひとつひとつの事実を挙げだすときりがない。たとえば明治維新の背景を述べよというときに、もっとも本質的なところを捉えるのが「見方・考え方」
・社会に出ると思考を行き来することが必要、すぐ図にするのは結構難しい。「それ、言葉にするとどうなるの?」「それ、図にするとどうなるの?」など水平思考を学べる数学が必要。
・再教育や学び直しが必要。大学院修士や博士は定員割れでの状況で、成人教育、現職のまま学べる大学院教育(来年3月には全県に教職大学院がそろう)、放送大学やインターネット講座、夜間大学などの充実で対応。
・白梅大学の大学院では修士8名、最高年齢70代の人が入った専門学校の先生も含まれる
・12月6日、教育課程企画特別部会に答申案が提示される。
<下町先生によるワークショップ>
午前中のワークショップは2週間前に急遽開催決定。カリキュラムマネージメントを先取りされている岩手県立花巻北高校の下町 壽男校長先生に斎藤さんの力もお借りして無理にお願い、授業改善の戦略会議~未来を切り拓く力を生み出し育てるための次の一手~をテーマに対話型WS開催にこぎつけた。40名を超える参加で定員30名の講義室は立ち見まで。①新しいマインドセット〜カッコイイ大人(教員)に求められる見識〜、②学力の三要素を踏まえたときのQ1.教師・授業のミッションとは何か(何であるべきか)、Q2.子ども(生徒)はどのように学びに向かうのか(教師はどのように生徒と学びに導くのか) 等についてのグループワークはかなり盛り上がり、対話する豊かな時間になりました。「スチューデントファースト」で生徒の力を引き出し疑問を抱かせ、課題を発見させる「批判的思考」の育成に大きな気づきがあったようです。また『破壊力』を尊重、従来の教師としての「『A.旧型マインドセット』→『B.新型マインドセット』への転換」が、今後の変動の激しい社会に対応していくために必要不可欠とも。
<名越先生によるランチカフェ>
ランチタイムは弁当を食べながらファシリテータと指定討論者の周りに集まるフィッシュカフェ。東ロボくんの東大合格断念をスタート点に「人工知能と教育」を確定したのは1週間前。下町先生に続いて東北の力頼み、名越幸生先生の2つ返事での快諾なかったら? すばらしい場のリードで、和やかな雰囲気の中で、指定討論者の大村先生、石川さん、寺西さんから期待と不安を引き出してくれました。人工知能の基本理解の上で教育への活用、意図は伝わったようで勉強会をやろうとの声も。次に何が生まれるだろうか?