大腸菌のタンパク質合成系と由来の異なる関連因子とを組み合わせてみる

(150814更新未完成;160822修正)

一般に,大腸菌のタンパク質合成系を使って真核細胞のタンパク質を合成しようとしても,あんまりうまくできません.

そして,できないのにも,いろいろあります.

まず,よく知られているのは,とにかくポリペプチドとしてほとんど合成されない現象です.大腸菌に対して毒性のあるタンパク質を発現させようとする場合には当然ながら合成できない場合もありますが,これは真核細胞由来のタンパク質の場合に特によく遭遇する問題ではありませんので,ここではとりあえず考えないことにします.

合成しようとするものに毒性が無い場合でも,真核細胞由来のcDNAをそのまま使うと,ほとんど全くできないことがあります.そういう時は,大腸菌ではあまり使われないコドンがたくさんある,とか,本来開始位置でないところから翻訳反応が開始してしまっている,ということかもしれません.こういう問題は,遺伝子を全合成してそういう問題が起こらないようにするのが合理的です.ここ数年で遺伝子合成の値段が安くなったので,500アミノ酸程度のものであれば,全部合成するのが合理的かもしれません.

ポリペプチドとしては合成されているのに,沈殿物としてしか回収できない場合や,可溶性なのに活性がない場合もあります.これらの場合は,正しくフォールディングしていないことになります.正しくフォールディングしないのにもいろいろあります.まず,短い時間に大量合成しようとするためにフォールディングが追いつかない,というケースが考えられます.似たケースと思われるかもしれませんし,実際少しは重複するのですが,ポリペプチド鎖の伸長速度が大きすぎるために正しくフォールディングしないケースもあるものと思われています.

実は,大腸菌と真核細胞との間では,ポリペプチド鎖が正しくフォールディングするための仕組みがかなり違います.そうです.すべてのタンパク質が自発的にフォールディングするわけではなく,多くのタンパク質は,他のタンパク質の補助によって正しくフォールディングしています.その,補助の仕組みが真正細菌と真核細胞とではかなり違うようなのです.そういう,フォールディングの補助をするタンパク質をまとめてシャペロンと呼びます.

それなので,まず,大腸菌に,真核細胞由来のシャペロンを加えてみよう,というのが,我々がまずやってみていることです.

それで,とりあえず,シャペロニンと呼ばれるタンパク質を大腸菌に作らせようとしてみています.ですが,もっと他のものも作らせてみてもいいのではないかと思っています.

以下,とても長くなってしまいますので,一気に書くことができませんし,読むのも大変なので,ページを分けます.Google sitesの仕様上,古いのが下になってしまいますので,無理やり順序をさかさまにしています.逆順にするために,まず目次を決めて,枠を作ってから書こうと思います.

1. シャペロニンには2種類ある

2. 組換えタンパク質調製法

3. 無細胞タンパク質合成法

4. タンパク質合成法の比較

5. 大腸菌に真核型シャペロンを加えてみよう

6. シャペロンでなくてもいいよね...

7. 真核型でなくてもいいよね...