環境ゲノム解析でひも解く湖の微生物の世界

―その面白さと可能性

12月5日(水) 16:00~18:00

岡﨑 友輔

日本学術振興会 特別研究員(PD)

(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物資源情報基盤研究グループ)

地球上には宇宙の星の数をはるかに上回る数の細菌、その10倍のウイルス粒子が存在すると見積もられ、細菌・真核微生物・ウイルス等をとりまく微生物食物網を経由する有機物量は生態系の一次生産の50%に及ぶとされる。近年のシーケンス技術の急速な発展によって、環境中の9割以上を占める未培養の細菌系統へのアプローチが容易になり、微生物生態系における食物網・物質循環プロセスの理解が急速に深まりつつある。また膨大な微生物ゲノム情報が簡単に得られるようになったことで、その多様性や進化的な背景に迫る成果も次々と報告されるようになった。

演者はこれらの環境ゲノム解析技術を用いて、琵琶湖をはじめとする国内外の大水深淡水湖をフィールドに微生物生態学をすすめてきた。本講演では、これまでの研究で注目してきた、大水深淡水湖の深水層で優占する細菌系統群の多様性と生態を中心に、現在進めている、琵琶湖の網羅的ウイルスメタゲノム解析や、ロングリードシーケンサーを活用した湖間の細菌の系統地理的な研究の成果についても紹介する。最後に「大水深淡水湖」という研究系ならではの利点やアプローチを整理し、本研究の長期的な方向性として、「湖の微生物生態学」という枠を超え、進化・生態学のより一般的な課題の解決に貢献できる可能性について論じたい。